Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
この楽園で生きていく…それが私たちの約束だった。
この物語の原作は未読です。
この作品の作画…淡い色合いと優しい作画のタッチが個人的に好きだったので放送前から期待していた作品です。
そして序盤の放送を視聴し、今期のトップクラスに推せることを期待しながら視聴する作品となりました。
この物語の舞台はホントに独特…
この世界の海には水がありません。
水の変わりに砂が海を覆い尽くしているんです。
その砂の海を漂流する「泥クジラ」という船が物語の舞台になっています。
泥クジラには、一つの民族がスッポリ入って自給自足をしながら食べ物に飢えることなく生きていけるのだから、きっと相当の大きさがあるのだと思います。
そして泥クジラに住まう住人には大きく二つのタイプが存在していました。
「サイミア」と呼ばれる念動力を使える「印」と、特殊能力の使えない「無印」
そのタイプの違いは寿命に直結していて、サイミアを使える印は30歳前後までしか生きられません。
しかし、これまで泥クジラは舵が無く漂流していたので、外界と接触する事はありませんでした。
ですがある日、突然現れた砂の海に漂着した廃墟船…思えばその出会いが全ての始まりでした。
その廃墟船での生存者はただ一人…リコスを泥クジラに迎い入れて物語が動いていきます。
この物語の主人公は印を持つ14歳のチャクロ…この船で起きた出来事を綴る心優しい記録係です。
チャクロには同じ印を持つ幼馴染のサミがいました。
サミは明るく天使級の笑顔を持った可愛い女の子です。
天真爛漫という言葉が似合う可愛らしいサミに命を吹き込んでいるのが金元さん…
この鉄板の組み合わせ…正直序盤からノックアウトでしたよ。
そしてサミの居場所はいつもチャクロの隣でそこが指定席…
確かに、1話目から色々と見せつけられた感はあるので、チャクロに羨ましさを感じなかった訳ではありません。
でも微笑ましいほどの仲睦まじさを感じる組み合わせってありますよね。
同じ空気を吸って生きてきた時間が二人の仲の良さに比例している感じ…
チャクロとサミがちょうどそんな感じなんです。
サミのことがこんなにスラスラと…
自分でも驚いています。
でも、何となく分かります…私はきっとサミの事が大好きだったんです。
だからただ漂流する事しかできない泥クジラは運命に抗う事を知らず、出来るのは目の前で起こる出来事にただ耐えるだけ…
泥クジラがそんなんだから、序盤から涙で前が見えなくなるんです。
状況を頭で理解した訳じゃ無かった…
ただ咄嗟だっただけ…
勇気を振り絞るとか…思い切って行動するとか、そんな意志や決断する欠片の時間すら無かった…
だってあっという間だったから…
だから本当に凄いと思う…
自分にとって何が一番大切なのか…頭だけじゃなく、身体がしっかり覚えていなけりゃ到底できることではありません。
躊躇も怯みすら微塵も感じられないって、私なら絶対できないことだと思う…
仲睦まじさに隠されていた彼女の本気がこれ…
ここから先の流れは怒涛の勢いです。
次々と衝撃の事実が明るみになっていきます。
印とは…
泥クジラ以外の世の中がどうなっているのか…
自分たちは一体何者なのか…
「知る」ことの代償は法外なまでの血と痛み…
でもどんなに傷付いても泥クジラが歩みを止めることは決してありません。
どれだけ胸の上で手を組んだ人を見送っただろう…
涙をこらえるためにどれだけ手を合わせた指の間から血を流しただろう…
そして、どれだけのこらえきれない涙を見ただろう…
泥クジラの道程…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
オープニングテーマは、RIRIKOさんの「その未来へ」
エンディングテーマは、rionosさんの「ハシタイロ」
この作品が大好きだったもう一つの理由…それは主題歌が抜群に私好みだったことです。
特にオープニング…曲のテンポが自分の体内リズムと合っていてとにかく聞いてて心地よいんです。
今期トップクラスの楽曲だったと思います。
1クール12話の物語でした。
物語の終わり方としては若干中途半端だったと思います。
全ては「これから」なんでけれどね…
原作のストックが無くなったから…?
大人の事情が複雑に交錯しているから…?
真相は闇の中ですが、壮大な物語に進化する可能性の高い作品だと思います。
この物語の続きがアニメ化される事を願っています。
最後に…
この作品を見た時に「日本人で本当に良かった」と思いました。
英語に訳すと「Children of the Whales」
確かにその通りですが、残念ながらひねりや情緒は何も感じられません…
「クジラの子らは砂上に歌う」
完走すればこのタイトルの一端を知る事ができます。
なんて情緒のあるタイトルなんだろう、と日本語の素晴らしさを感じた気がします。