fuushin さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
暴力と欲の世界にレヴィとロックの綾が見える。P.S、君の名は。
1~3クールまで視聴しました。
いささか影響を受けてしまいました。口が悪くなってしまうのですが、この作品、てっぺんからケツまで日本のアニメ界においては異色中の異色。
有無を言わせぬパワフルなガンアクション。冷徹なまでのリアリズム。超弩級のバイオレンス。
人間の価値は徹底的に削ぎ落とされ、死の国へ堕とし込められる。理想だの愛だの夢など、そんな世界はへったくれだと息巻く連中の街。
さて、と、レヴィさんのどんな話が聞けるかな?
{netabare}
なんだよ、急に。アタシに何を話せっていうんだよ、このタコ。まぁいいや、知ってるか?この街はガッチガチの実存主義者の集まるところだぜ。目に見えないものは何もいらないし信じない。たらればってのはないんだぜ。おっと、もしもってのもなしだ。そんなのはなんの意味もねえ。ロアナプラで生きるってのは紙より軽いタマの殺り取りが流儀だぜ。まぁ死人何ぞにタマなぞ元々ないし看板だと思えばいいしよ。単なる的当てゲームだ。お祭でやってるだろ?カタをつけるのは金と銃さえあれば事足りる。日本なら500円か?さぁ鬼さんにブチ込もうぜ!
{/netabare}
ん〜、レヴィさん〜怖いわぁ。
貴女の活躍をじっくり観ればみるほど・・・キイハンター(TVドラマ)やワイルドセブン(漫画)、ルパン三世(アニメ)に共通している世界観みたいなものがどこか遠くに、小さく感じられるような、そんなものが有るような気もするのだけれど・・。
{netabare}
あ?何だてめえ。日本のテレビの話してんのか?ミネコ・フジもヨウコ・ノギワも知るわけないだろ。それって面白いのかよ。お前、ヒマ持て余してねぇか。こっちはカトラス磨いて忙しいんだよ。邪魔すんなよ。え、なんでかって?手ぇ抜いてたらよ、あっという間に泥の棺桶に入っちまうだろ?!これで案外人生は短いんだぜ。お前、ロックみたいなこと言ってんな。やっぱり日本人ってのはおめでたいな。ところでロックはフジコ・ミネとか知ってるのか?あ、言っとくぜ、詮索屋は長生きしないぜ。
こんな機会だからロックのことを少し話そうか。
アイツは何考えているんだかさっぱり理解できないよ。アタシには到底無理ってもんだ。
肝っ玉小せえくせに、器以上の賭けをやろうとしやがる。タマの取りあい・・あぁ、アイツのは人助けだったな。そいつを趣味ってぬかしやがっただろ。アッタマに来ちまうんだよ。そのくせアタシに平気で正常位の話をこきやがるしよ。1発だってカトラスの弾はロハじゃねぇんだ。水夫の口に乗ってきたのはあいつじゃないか。アタシが呼んでくれたとか何か人生変わったみたいなことぬかしやがって、訳わかんねぇよ。ロックがヨランダにかましたのはまぁいいが、アタシはエダとチャカ向けあったんだぜ。タマ張ってんのによ、教会のババァは新参者のロックを褒めやがる。なんだそれ、チェッ。あの日は朝からロックに付き合わされてクタクタになったさ、ポリ公の車でモクにありつくのがやっとだった。ロックの目ぇ見てた?さぁどうだったかな、忘れちまったよ。あ~かったるい、かったるいぜ!
あぁ、まだあるぜ。ロックはよぉ、正真正銘のバカなんだせ。東京でバラライカの姐さんに意見していただろ?あン時はマジ痺れたぜ指がよ、全く。仕事だけしてりゃいいのに感情入れ過ぎちまって、どーでもいいことに見境つかなくなっちまいやがる。わきまえるってことも知らねえんだ。あのバ〜カ。姐さんが銃を下げた理由は分っかんねえけど、幸運以外何ものでもなかった。神の恵みってのをマジ感じたぜ。死たがる奴にはもう手に負えないぜ。雇い主は姐さんで仕事を進めるのはアタシたちじゃないんだぜ。ロックの野郎、わっかんねえよ。惑っちまう。でもよ、ロックがロアナプラに帰る覚悟を決めたって言うんでカトラスで祝砲をあげてやったぜ。日本にグッバイさ。
ロックはよ、時々こう言うんだ、「レヴィ、それ普通だろ。そうじゃないのか?レヴィ。」どっちがだよ。アタシの普通はロアナプラだよ。ここは日本じゃないんだ。なのにあいつは平然とそんなこと吐かしやがるんだ。調子が狂っちまうよ。あぁ分かってないのはアイツさ。全く分かってねぇ。ここはロアナプラだぜ。でアタシは泣く子も黙るレベッカ様だ。ったくよぉいつまでロックはどこに立ってものを言ってるつもりなんだ。アイツと話してると惑っちまうぜ。やっぱ日本に帰しとくほうがよかったよ。
ロックの野郎、ゲリラやらスクールガールやらにも拐われただろ。呆れるぜ。相手はゲリラだぜ。口を割らない奴は拷問かけて早晩殺されちまうんだ。ほっとけないだろ。バカなアイリッシュには参ったがまぁ何とか逃げおおせたのはいい仕事だったろ。けどシェンフォアに言われて急に腹が立ってきてよ、ロックの奴にどうしようもなくムカムカきちまったんだ。あぁ、馬乗りになって言ってやったさ、てめえのケツも拭けないなまっちょろい奴のそのケツを拭いてるんだぜ、アタシはアイツの保護者じゃないっつうの。ジャンボには膝をサーベルを突かれちまったが、なに大したことはねぇ。でもよ、ロックがスクールガールに言わせたのさ、生者の夢ってやつを。アイツの言葉はGun Slingerみたいなもんなのさ。あのサーベルの野郎、最後に生きようとしたな。紙一重で命を拾ったよアタシは。ロックに借りができちまった。言うなよロックには。
ルーマニアの双子がいたな。イタリアマフィアが呼んだ連中だ。ガキでも同情はしないね。アタシもまァ似たり寄ったりだったさ。ガキが生きていくにはそれなりのやりようってものがあるだろ?そういうことさ。アイツらも金と銃を持ってた、アタシと同ンなじ悪党なのさ。でもよ、許せねぇのはロックの前でスカート捲りやがったことさ。ガキのくせして大人に取り入りやがって。全くよガキはガキらしくしてろってんだ。どんだけ殺してきてるんだよ、アイツらホントに壊れちまってるな。お空が青いって可愛子ぶる奴は死んで当然さ。ふん、感傷的にもならないよ。
それはそうとロックと東京の姫君何かあったのか。詳しくは知らねぇがまた入れ込みやがって参ったぜ。ホント、ハイスクールガールに情が移っちまったついて行ったのかと思ったぜ。そんなのはアタシらの契約にはねぇんだよ。無だ、無。・・日本にはあるんだろうがな。まぁロックが日本に帰っちまっても構やしないんだが。それにしてもなんだ、女子高生が喉を突くとき思わず「見るな」って言っちまったよ。でもアイツ顔を伏せもしなかった。日本にまで心配してついていってやったってのによ。
ガルシアお坊ちゃまん家のクソメイド。あんな奴を探し出す依頼を受けるなんて気がおかしくなっちまったのさ、ロックのバカ野郎。ありゃなメイドの個人的なリベンジだっていうのによ。お相手様は合衆国だぜ?とにかくあいつが戦争おこしちまったらロアナプラがまるごとなくなっちまう。さっさと追い出さないとアタシら商売あがったりだろ。そいつはいけねぇ。んで、やられっ放しってのもアタシにはないさな。ガツンとやってやろうと思ってたさ。ロックは車ん中にいたし安全なんだろ?ならいいじゃないか。あいつに道が見えてるならアタシはやるまでさ。ホテル・モスクワに商売道具をやられちまったのは迂闊だったけどそれはそれさ。ロックもアタシが使えなくなっても大丈夫、ことは進むっていってただろ。結局、ダッチの船でアメリカ野郎とガルシアお坊ちゃまを連れ出すことになっちまったがチャンさんからの依頼ってのはどうなんだ?ダッチもよく請け負ったけどこれもロックのシナリオだってことらしいじゃないか。みんながロックに振り回されちまって、あ〜やなこった。いつまでロアナプラに居続けんだよぉ。そう思うだろ?
あぁそれにな、ファビオラってのが青くせぇんだよ。いちいち癇に障りやがること言いやがって。父さま母さまだとよ。アタシはとうに家族なんてなまっちょろいのはいねぇし、まるっきしDVだったさ。果てはコロシだ。クッソ嫌なもの思いだしやがった。あ~ムカムカしてきやがった。けったくそ悪いぜ。アタシのまわりにゃ神とか愛とかなんてのもいねぇのさ。そんなものはクソ溜にもねぇ。アタシはアタシ。なぁお前、実存主義って知ってるか?それがアタシさ。ホワイトカラーの理想なんてどうかしてるぜ。むしずがはしるぜ、思わずカトラスを向けちまったじゃないか。
信じるとしたらカネと銃。当然だろ?
死ぬか殺すか、やるかやられるか。いつもナイフの刃ギリギリのところに立ってるのさ。そいつがアタシの仕事なんだ。ロックなんかにやすやすと分かってたまるかってんだ。
ガルシアの坊やはお屋敷に帰っていったがロックはチャンさんとやる気だ。あいつロアナプラをどうするつもりだ?まぁ、わかんねえことは先に回すさ。何だかしらねぇけど先は遠いぜ。
あぁ?喋りすぎたな、やってらんねぇな。そろそろオフにしようか。エアコンの効いた部屋と旨い酒とポーカー。これがあればご機嫌さ。まぁ、酔いに任せてぶっ壊すこともあるがな。そうだエダの野郎、ロックのことじゃ一々絡みつきやがってうぜぇんだが、ま、ちぃっと気晴らしの小遣い稼ぎに付き合うにはご愛嬌のうちさ。こう言っちゃあなんだがアタシら悪党はそう簡単には死なないんだよ。
インド女にも参ったよ。あいつのおかげで、ロックともども焼け死ぬとこだったぜ。事務所もドックも丸焼けになっちまったからな。はぁ~。 ま、あいつはロックじゃなくてベニーがお好みみたいだからいいけどよ。
もうそろそろやめようか。とにかくロックはロックのやり方でよろしくやってるよ。ロアナプラは良いところだぞ。仕事はある。イエローフラッグもある。誰と組むか何を求めるか。やたらに主張あそばしてそれぞれの理不尽に火をつけるのさ。そいつらが何やらかにやら問題起こしやがってドンパチの毎日さ。楽しいったらないぜ。
ただよ、生半可な善意じゃ正気ではいられない世界だ。偽善だって通じねぇのさ。ロックだって変わっていくだろうよ。そう、たぶんな・・。え?ロックのことよく知ってるって?このバカ!ラグーンじゃもう家族なのさ。
そうさ、そうなのさ!分かってんのかコラ?毎度同じこと言わせやがって。お前、部外者のくせしてよ。とっとと出ていけよ。
{/netabare}
レヴィさん、ご活躍を。
{netabare}
あ、アタシらのDVD観て楽しんでるってか?なンかアタシが可愛いって誰かが言ってるって聞いたぜ。まぁなんだ。命がいらねぇんならご褒美にカトラスをハートにブレゼントするぜ。一発で十分だろ。ただし日本までの往復の交通費はてめぇもちだぜ。じゃあな。 おっと忘れるとこだったぜ。インタヴューは1万ドルだ。口座番号教えるから入れとけよ。
{/netabare}
レヴィさん、帰ってもらったよぉ。怖かったよ〜。
チャン、バラライカ、マフィア、カルテル、暴力教会、警察、そしてラグーン商会。
皆、ロアナプラの街で張り合いながら利権の確保にシノギを削る。
中国、ロシア、イタリア、コロンビアの顔を見せながら張りあう影の名代たち。あまりにも巨大な国のCIAとNSCのつばぜり合い。
武器と麻薬が生み出す利益と、その利益に群がる悪党どもの街。ロアナプラ。
こういった骨太の設定とストーリーは男性には受けるし、レヴィたち女性陣が男勝りなのも小気味好い。まあ、銃と金があっての平等というのはこちらの世界観ではないけれど、ハードなエンターテイメントとしては1級品だと思います。
ロックは、小心者のビジネスマンではないし、柔軟性も自在性もしっかり持ち合わせている男。捨て身の度胸と機微ある交渉術も繰り出せる。ロアナプラのローカルルールと、世界の産・軍を支配するグローバルルール。それぞれの思惑が幾重にも絡みあうロアナプラを俯瞰できている。
ロックの情報収集能力と分析力は、ラグーン商会を助けることになっていく。
やがてダッチも驚くような手際のよさをみせるロック。逃がし屋として危険な男の片鱗を現してくるようになっていく。
3期のシリーズでいよいよロックの覚悟が見えてきましたね。
{netabare}
彼は、チャンに押されてパズルをひとつ作る破目になります。ロベルタがもたらしたあらゆる必然と可能性を読みとき、行くべき道の先、その先もまた見通していこうとします。ダッチとの約束を破ってまでガルシアとともに自らの作った最後の賭けの顛末まで見ようとします。それどころかチャンを使ってラグーン号をも巻き込んでいくのです。
ロックの意志は極めて明確です。
{netabare}
「ロベルタを見つけ出しガルシア、ファビオラとともに生きてベネズエラに返すこと」
「ガルシアの父を殺めたアメリカに対する復讐を終わらせること」
「ロベルタの怨嗟と怨恨の思念を完全に断ち切ること」
「殺めた人たちへの罪を贖(あがな)うこと」
{/netabare}
この四つです。
そのためにはどうしても避けては通れない道があります。ロックは二つの罪を背負わなければなりません。
{netabare}
一つ目は、ガルシアのために悪人を演じきることです。
二つ目は、二度と後戻りのできないスイッチを押すことです。
{/netabare}
ロックは、自分のシナリオを俯瞰すればするほど死のにおいを感じます。この依頼を受けることは、その引き換えに恐るべき死の舞台をプロデュースせざるを得ません。ロアナプラのすべての組織の相関関係を組み込むと無血では済まされない。ロックのシナリオで人が死ぬ・・。
ベニーは言いました。「ロック、君は耐えられるかい?」
この3期においてロックは決定的なターニングポイントを迎えるのです。
{netabare}
「なぁレヴィ。俺はもう死んでいるんだぜ。」・・それはレヴィにとってはいつも聞いている台詞で、茶番でした。悪党にはなりきれず人助けが趣味だと嘯(うそぶ)いていたロックではあったのですが、レヴィにとってはそれはそれでよかったのです。寧ろそこで踏みとどまっているほうがレヴィにとっては救いでもあったのです。
しかしロックはついに銃弾になろうとしているのです。しかもとびっきりの銀の銃弾です。善良な人間の喉に噛みつき新鮮な生き血を啜るドラキュラを仕留める特別あつらえの弾です。レヴィはとっくに知っていて、しかし見たくはなかったのです。ロックにはそういう特別な才能があることを。
ロックはとても実直な人間。その彼が物事の本質を見抜き、実存主義者の場所に立って行動を起こすとき、ロックの持つ才能は人を救い、活かす力にもなるだろうけれど、一つ間違えば自らを破滅させる剣にもなるのです。そういうロックの選択はレヴィにとっても新たな覚悟を必要としていきます。
{/netabare}
ロックの手掛けたシナリオの最終章。
{netabare}
遂に、複雑に絡み合った怨嗟と恩讐にまみれたロベルタの復讐劇に、ガルシアの銃弾が終わりを告げることになります。
ロックのシナリオは、ガルシアとロベルタを満身創痍にさらしましたが、あらゆる遺恨を一片も残さずに、” 罪だけを身体から摘出する ” ための手術式であり、ほかに方法を持ちえませんでした。
私には、ガルシアとロベルタの ” 魂に隠れ潜んでいる慟哭を引きはがし、浄化させ、穏やかに生きる道を作ることができた ” ように思えます。
ふたりの身体から取り出された罪については、償(あがな)いという目に見える形に置き換えられるでしょう。神への懺悔と遺族への謝罪というおこないがラブレス家の役割として残され、当主ガルシアは生涯をかけてロベルタに寄り添い、彼女の魂を支えていくことになるでしょう。
もう一つ大事なことがあります。
しかしファビオラも傷つくはずです。ロックはそう読んだと思います。ファビオラの忠誠心は強く大きい。蔑(ないがし)ろにはできない。最終章においてファビオラもまた深く傷を負い、手厚いケアが必要になると判断したと思います。
案の定、ファビオラはロックの仕掛けたカンボジアンルーレットを激しく詰(なじ)り、迷わず銃弾を撃ち込みました。その弾は空砲であることはファビオラは知っていました。ロックが死ぬことはないとわかっていたでしょうが、ファビオラもまた死の危険を背負って引き金を引いたのかもしれません。何といってもそこはレヴィのいるラグーン号なのですから。
ファビオラがその危険を冒してまでもロックを撃ったのは、敬愛するロベルタがガルシアを撃ってしまったことを目の当たりにして、ロックの賭けのあまりの不条理さ、道徳心のなさに激しい憤怒と憎悪の気持ちをロックに向けたからでしょう。
当然のことだと思います。
しかし、それさえもロックのシナリオには折り込み済みだったのかもしれません。ラブレス家の者が二度とベネズエラから離れないようにするためには、ファビオラ自身に深く刻み込まれてしまうだろう負の感情、怒りや憎しみや悲しみの念などもまた、完全に消しておく必要があります。
ロックはファビオラに自分に向けて引き金を引かせることで、彼女のこころに巣くってしまった憎悪の念の最後の糸の一本まで断ち切らせたかったのではないかと思います。
私は、ロックはこのシナリオをガルシアには伝えてあったのではないかと思います。ガルシアはラブレス家の当主としてメイドを守らなくてはならないのです。
ガルシアはロベルタに「この銃で君は死なない」と言いました。しかし、ロベルタはガルシアを認識できないかもしれない。銃を向けあったらガルシアを撃つかもしれない。これはロックからガルシアに授けられたおそるべき賭けだったのではなかったか。ガルシアはファビオラに「僕だって怖いよ」と打ち明ける。
ガルシアの銃が火を噴き、轟音と衝撃波がロベルタを襲います。ロベルタは本能として反射的に引き金を引いてしまいました。
当主に向けて銃を使ったことでロベルタはパニックに陥りますが、ガルシアは彼女を気遣い救いの言葉を伝えます。「もう終わったんだよ。ロベルタ」。
ロベルタはアメリカ兵がガルシアに救命処置を施すのを見ているしかありません。そしてガルシアのために生きることを選ぶ・・。ロベルタもまたアメリカ兵の治療を受け入れるでしょう。
そしてガルシアは銃をファビオラに手渡します。「これはロックに返すように。これは実弾は装填されていない。空砲だよ。」と言って。
ファビオラはロックにどんな怒りをぶつけるのでしょう。殺してしまいたかったでしょうか。でもそれはガルシアの意に反してしまいます。空砲ならばカポエーラのように殺すまでのことにはならないと思っていたでしょう。
なによりもその銃はガルシアが命を懸けてロベルタを救うために使った銃なのです。当主様とロベルタをつないだ銃がロックとの悪しき縁を切る銃になるのです。
ロックへの一撃はファビオラにとっては精一杯の返礼だったはずです。そして「あんたはこの町一番の糞野郎だ」と。
・・大成功です。ロックは悪人を演じきりました。
そしてこれでラブレス家とロアナプラとの悪しき縁も切れました。ガルシアもファビオラも100%、ロックのシナリオを演じきってくれたのです。
{/netabare}
これからのロックは?
{netabare}
ロックは、できうる限り賭けの要素をつぶしました。大難を小難に、小難を無難へと振り替え続けました。それでもロアナプラに関わった者を生きて帰らせるためのシナリオが、どれほど過酷で残酷な結末となったのかを思い知らされることになりました。彼が傷つかないわけはないと思います。
ロックはたったひとつ安息を得ることになりましたが、もうひとつ、後戻りのできないスイッチも押してしまいました。
ロックは、今のところは実直な人間のようです。それゆえに、なお苦しみの道に立つことになるでしょう。
今回の依頼の結末は、ガルシアやファビオラの心に深くかかわろうとした結果です。完全に許すことは難しいかもしれない。時間がかかるだろうと。でも、これ以上、憎しみの連鎖が続くことだけは断ち切ることはできたと。
普通に暮らしたいと願う人が、普通に暮らせないことにはロックは耐えられないのです。それがロックという人物の矜持なのです。
チャンは、今回の依頼の代償とは別に、ロック個人にボーナスを与えました。金で解決させようとするチャンらしいやり方です。ロックの矜持に対するバリケード、口封じでしょう。でも、そういうやり方は逆にロックの覚悟を定めさせ、研ぎらせることになっていくようです。
その切っ先はロアナプラの権力者に向き、「人の心を深く知っているのは俺だ」とロックに嘯(うそぶ)いた者への挑戦の始まりでもあったのです。
否応なしに核心に進んでいくロック。
闇の世界に立ちきる覚悟を持ったのは、ひとの心を権力でもてあそぶ実存主義者を追い出すためなのでしょうか。
{/netabare}
俺はここにいる。「だが、今じゃない。」
レヴィのカトラスが火を噴き、ロックの緻密な知力とタッグを組む。やがてロアナプラの権力者を狙い、追い詰めるのでしょう。その先の先ににロックは何を見るのでしょうか。
おまけ。
{netabare}
幕末期、イギリスの役人に優れた通訳がいました。名前はアーネスト・サトウ。
類(たぐい)まれな日本語の翻訳力に加え、勝海舟、西郷隆盛ら国論を二分する双方にも太いパイプをもっていました。
江戸を焼き払って権威を示そうとする西郷隆盛と、焼かれる前に自ら焼き払って江戸庶民100万人を事前に逃がそうとした勝海舟。
武士がふりあげた拳と刀、突き合わせた意地と面子を、あらゆるコネクションを駆使し徹底的なコミュニケーションを通じて納めさせた魁傑者です。
ロックとサトウ。
2人の共通点は、問題を紐解く分析能力と解決のための処理能力。そして両国の権益を上手くかわし、また操作して、ウインウインの関係に持っていく知恵と手腕にあると思います。
何よりも、国籍に縛られずに、外国の人のためその幸福のために尽力しようとする志の高さにあると思います。
ロックは、サトウを知っていたのかもしれません。いや、知らなかったとしても勝と西郷によって江戸の町が火の海に沈むことはなかったことは学んでいたでしょう。(江戸城の無血開城の歴史的意義のひとつです。)
{/netabare}
ロアナプラの住民である前に、日本人としてロックはどんな志を立てるのでしょう。
立ちはだかるのは、チャンの思惑。弁護士としての矜恃は暴力にとどまるのか?あるいは?
そしてバラライカの思惑。ソビエトを失うも元軍人としての矜恃は彼女を何処へ連れていくのでしょう。
ロックの小さな意思が舵を取り、航路を大きく変えていきそうな気配です。
悪の世界に身を投じるロックをレヴィはどうするでしょう。あるいはロックの理想にレヴィが感化されていくのでしょうか。
レヴィに刻み込まれた実存主義と、ロックの根幹をなす本質主義がこれからも対峙していくのでしょう。
ロックとぶつかり合いながらも少しずつ受け入れていくレヴィ。
レヴィとの勝手の違いに戸惑いながら密接につながっていこうとするロック。
ロックは銀の銃弾になっていきます。炸薬が爆発するときを待っているのです。
トリガーを引くのは「レヴィ、お前だ」。すでにロックはレヴィに命を預けているみたいです。
レヴィは本能的に知っています。一番近くでロックの命を守れるのはカトラスを持つ自分であることを。レヴィに心の中にロックの命が宿り耀きだすのでしょう。
恋ごころも知らない、ましてや愛を語る意味すら分からないレヴィに、ロックはどのような道すじを作り誘(いざな)っていくのでしょうか。
レヴィとロックの綾はどんなふうに紡がれるのでしょうか。
観られるものなら・・・いや観てみたい。
続編が楽しみです。
P.S その1。ブラックラグーン。
{netabare}
『大アマゾンの半魚人』(だいアマゾンのはんぎょじん、Creature from the Black Lagoon)は、1954年に製作されたアメリカ合衆国のSFホラー映画。 ジョー・ダンテは、本作に登場する半魚人ギルマン(「鰓のある人間」の意)の造形美、人間らしさを備えた性格を高く評価している。(ウィキペディアより)
悍(おぞ)ましい容姿や外見、見た目や見てくれのために違和感や嫌悪感を抱くことがあったとしても、暴力で否定・排除するのではなく、共感の持ちうる内面性に寄りそっていくことや、思いやる心根の大切さが必要であることを教えてくれる良作です。とても古い作品ですがもしかしたら今でも見る機会はあるのかもしれません。
ジョー・ダンテはアメリカの映画監督さんですね。グレムリン(1984年)、スモール・ソルジャーズ(1998年)などの楽しい作品があります。
{/netabare}
P.S その2。君の名は。
{netabare}
第2期の雪緒ちゃんとロックの神社の境内でのシーン。別れぎわにロックが雪緒ちゃんを呼び止めるのですが、「君の名は」の三葉と瀧のそれに似ているところが。あ、逆か。こちらがきっと元祖なんでしょうね。
雪緒ちゃんは三葉。雪緒ちゃんの高校の後輩は四葉。ほかにも「あ、ここだったのか~」ってシーンもありますよ。
よかったらDVDじっくり観てくださいね〜。
{/netabare}
長文をお読みいただきありがとうございます。
この作品がみなに愛されますように。