明日は明日の風 さんの感想・評価

4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

終末に旅する二人の女の子の日常…独特な世界観を楽しむ作品

物知りで生真面目なチトと天然で度胸満点のユーリ。全く違う性格の二人が、誰もいなくなった世界を旅する物語。二人の会話はコントか漫才のようにボケと突っ込みが入り、クスクスしてしまうこともあります。大半はこの二人だけの会話と動きだけで回が成り立ちますが、カヲル君(カナザワ)とミサトさん(イシイ)、AIロボット(自律機械)、ざーさんのマスコット(ヌコ)が絡んだりもします。

キャラデザインも会話ものんびりした感じだけど、その背景には「誰もいない世界」という設定が織り込まれているため、どこか寂しい雰囲気を漂わせます。こも作品を見ているうちに無性に見たくなった作品がありました。それは「ソラノヲト」。実際に見返してみると、物語もキャラも全く違うのですが、奥にあるものが良く似ている雰囲気を感じさせます。

どうしてこんな世界になったのか、なぜ二人きりで旅に出ることになったのか、なぜ人がいないのか、時おりこの問題に触れますが最後にはっきりします{netabare}最終回の演出は見事だったと思います。カナザワのカメラが伏線となり、それまでの世界がどう流れていたのかが分かり、写し出される映像と二人のいる世界の違い、楽しさ、惨さ、世界、人、生きること、日常、いろんなことを考えさせられます。そしてヌコの成体との会話。{/netabare}。実に悲しく、寂しい話です。それでも二人は旅を続けることになります。こんな世界にも関わらず、最後まで考えを変えることなく。

キャラデザインがほのぼの系なのに、背景はガッチリとした近未来を描いており、作画はなかなかのものでした。また、各話の演出もすごく良いです。中でも８話の螺旋階段を登っていくシーンは本当にハラハラさせる感じでとても気に入っています。中の人も水瀬さんと久保さんが二人をうまく演じていたと思います。全体的に佳作といえる、良い作品だと思いました。

終末もので、やっぱり寂しいところもあるのですが、チトとユーリの終末を感じさせない日常も良いです。独特な雰囲気のあるアニメを楽しみたいという人にお勧めします。