でこぽん さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
読者や視聴者を信じる心がもたらした作品
この物語の原作は、2015年に『このマンガがすごい!』オトコ編で第1位、『マンガ大賞2015』で第3位を獲得しました。
しかし、この作品が誕生してから日の目を見るまでの経緯は、私たちの想像を超えた険しい道のりでした。
原作者の大今良時さんは、この作品で2008年に週刊少年マガジン新人漫画賞に入選されました。
通常、入選作は副賞として雑誌に掲載されます。
でも、この作品を掲載すると聴覚障害者に対するいじめが増加する可能性があるとの意見があり、雑誌への掲載は中止されたのです。
素晴らしい作品だから入選したはずなのに、問題が発生した際に責任を取れないとのことで、以降この作品は、お蔵入りになったのです。
2年経ち、2010年に月間少年マガジンの担当の方が、「やはりあの作品は素晴らしいので掲載したい」と社内で申請されました。
でも一度掲載しないと決定した意見を覆すためには、大変な努力が必要です。
講談社の法務部や弁護士の意見を聞き、さらに全日本ろうあ連盟とも協議を重ね、2011年にようやく掲載が認められました。
このとき、ろうあ連盟の方からは「何も変えずそのまま載せてください」との意見をいただいたそうです。
雑誌に掲載したところ、この作品は、当時人気作だった『進撃の巨人』の連載作を抑えて1位を獲得しました。
そして、出版社のお偉い方々が恐れた、聴覚障害者に対するいじめは発生しませんでした。
それどころか、この作品で聴覚障害者に対する理解が深まったとの意見が多く寄せられました。
読者の子供たちは、お偉い方々の予想と違い、優しい心の持ち主だったのです。
そして、全日本ろうあ連盟監修のもと、2015年には道徳教材化された30分の実写DVDも作成されたのです。
この原作や映画は、読者や視聴者を信じる心がもたらした作品だとも言えます。
この映画をご覧になられた貴方は、どう感じられたでしょうか?
きっと聴覚障害の方々に対する理解を深めていただいたと思います。