ブリキ男 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
不思議の国のアリサ×語り手の国のヴェロニカ
誰もが一度は何らかの形で触れた事のある児童文学の名作「不思議の国のアリス」をモチーフにしたFlashアニメーション。10分程度の短編です。
本を読む事が好きな亜里沙は、頼まれ事をされると断れない性格の、優しくて責任感の強い女の子。周囲の人たちは彼女を"委員長"と呼び、何かと甘えてしまいます。
ある日の放課後、亜里沙が学校の図書室で本の片付けをしていると、一冊の不思議な本が見つかります。「仮面の国のアリス」と題された、その見慣れぬ本を、ついつい夢中になって読み進めてしまうアリサ、チャイムの音が鳴って、あっとなって、手から本が滑り落ちたら…いつの間にか不思議の国に迷い込んでしまいます。
「不思議の国のアリス」の最終幕に似た裁判のシーンから物語が始まり、中途から、原作を読んだ人なら多分覚えのある「首をはねよ!」の台詞で有名な、ハートの女王様の視点を通して物語が展開していく流れが斬新、かつ興味をそそります。
{netabare}
女王の責任や義務、威厳や重圧からくる苦痛を、アリサがお話を通して解きほぐしていくところ、お話を語り続ける事で生かされるアリサの境遇を見ると-作中でもちらっと触れられていましたが-千夜一夜物語もモチーフの一つとなっている事が伺えますが、こちらはお話そのものでは無く、語り手と聴き手が主役になっている点が異なります。
昔の海外ドラマ「ジムヘンソンのストーリーテラー」にもそんなお話がありましたね‥ってこっちは知ってる人少ないか(汗)
{/netabare}
Flashアニメとして非常に丁寧に作られている点、テンポの良さ、作中BGMの選曲の妙、キャラのかわいさ含め、とても完成度が高く、女性作家さんらしい優しさも感じられて、楽しくて、怖くて、ちょっと泣けてしまう素敵な作品になっていると思います。
作者のイズさんは自主制作アニメーションを趣味で作っている方だそうで、現在は「ガラスの水槽」という同人サークルにて活動中の様です。
世のため人のためと、ついついやせ我慢して頑張ってしまう様な人、苦労性気味で他者との関係を上手に築けない人、そんな人に特におすすめしたいアニメです。
ぜひぜひ、不思議の国のアリサとヴェロニカに癒されて下さい。