たいさちゃむ さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
原作組ですが大満足!
中高生の頃に原作のライトノベルにドハマリしていました。ずっとアニメ化されるのを待ちわびていましたが、作風がアニメ向きじゃないし完結からもう時間が経ってしまったので無理だろうと思っていました。なので今回アニメ化されるに当たって本当に嬉しかったし出来上がってものもとても満足行くものでした。以下、特に良かった点をまとめてみたいと思います。
まず脚本についてですが、原作を驚くほど忠実に再現してくれたと思います。時系列は多少変わってますが、尺の都合と作風に起因する分かりにくさをうまく解決するための最低限の改変でまとめています。それでいて「アンドロイドは誰」「無力な善とおせっかいな偽善」という鍵はしっかり最序盤に配置しているのが見事。最初から最後まで一貫したテーマを論理的に無理なく導いています。
また声優、特に相麻菫役の悠木碧さんの演技が圧巻。淡々とした話し方が意図して徹底されたキャラクターが多数を占める中で、実に情緒豊かで繊細な演技をしてくれました。私の考える相麻像を完璧に体現してくれています。
音楽はピアノ多めで少し淡白な印象ですが、それが意図したものなのか何らかの制約によるものなのかはさておき作品の雰囲気によくマッチしていると思います。
でも一番この映像化でセンスを感じたのは、会話の「間」。哲学的な会話のシーンが作品の多くを占めるこの作品では、バトルアニメの戦闘シーンとかアイドルアニメのライブシーンのような「見せ場」がない。だからこそその会話シーンでは、徹底した雰囲気作りがなされています。たとえば第1話冒頭、ケイの質問に「はい」か「いいえ」で答えるハルキに対してケイが一瞬だけ考えるシーン。派手な効果音や視覚的な五月蝿さがないからこそ、彼がハルキに初めて出会い興味を惹かれた瞬間がひしひしと伝わってきます。これは意図的でしょう。なぜなら重要な会話(ぶっちゃけ全部が重要なんですが)シーンにおいては全編通して安定した、「間」が用意されているからです。近年のアニメとしては作画は正直リッチではないし、動きも少ないですが、なぜか臨場感が有ります。例えるならアニメというより小説を読んでいるときの、ページをめくるときみたいな感じ。
この作品は決して万人受けしないし、この作品を絶賛する人間はめんどくさいタイプの人間かもしれない。でも、私は2017年の覇権にこれを推します。いわゆる逆張り的な、選民意識のようなものがそうさせるのではなく、本気で一番面白かったです。バカがバカに騙されるのを頭脳戦とか評しちゃう人たちに辟易しているあなた。少し考え込まないとついていけないアニメを求めているあなた。私のこのレビューの文章に何か近しい「めんどくささ」を覚えたあなた。このアニメを観てください。本物はこれです。
ちなみにこの作品がもし気に入ったら、マイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」とか、このレビュー「http://longfish.cute.coocan.jp/pages/2011/110109_sakurada/」(超絶ネタバレあり)を読むとなおよいかと。それでは駄文失礼しました。