雀犬 さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
本当は恐ろしいエロゲ童話
♂あらすじ♀
{netabare}
むかしむかし、あるところに、伊藤誠という青年が住んでいました。
ある日学校へ向かう途中、桂言葉(コトノハ)というたいそう立派な胸の女性と出会いました。
発情した誠は彼女を盗撮し、
「好きな人の写真を携帯の待受け画面にして、3週間誰にも見られなければ思いが成就する。」
という学園の言い伝えを行いました。
ところが次の日には、となりに座る西園寺世界という女性に見られてしまいます。
世界は言いました。
「おやおや可哀想な誠どの。私が彼女と恋仲になるための手助けをして差し上げましょう。」
こうして彼のジェットコースターのような人生が動き始めるのでした。
(中略)
「トントンカラリ、トンカラリ、ギシギシアンアン、ギシアンアン」
吸った揉んだの末に二人は契りを交わします。
タイやヒラメやアワビの舞い踊り。
どういうわけか、コウノトリも祝福に訪れました。
(中略)
こうして、二人は仲睦まじく天の国へと旅立ったのでした。
めでたし、めでたし。
{/netabare}
♂雑感♀
{netabare}
スクールデイズは2007年夏、アダルトゲーム原作の作品です。
センセーショナルな結末と主人公のクズっぷりで知名度が高い。
伊藤誠は「クズ主人公四天王」の中でも特に有名。「誠氏ね」が定型句。
観る前から最終回の内容をどこかで知ってしまったので観ないつもりだったんですけどね。
最近このアニメのレビューを書いている方が何人かいらっしゃったので触発されて観ちゃいましたよ。
始まるとさっそくアホ毛のヒロイン、料理の超下手なヒロイン、うざい親友、
そして意味なくモテる主人公、とエロゲ名物が勢揃いで出迎えてくれます(笑)
特筆すべきなのは西園寺世界のバイト先のファミレスの制服ですね。
素晴らしくエロい。
どう見ても飲食店の制服じゃないし、この店ファミレスなのにカウンターがあるし、狂っている。
原作はマルチエンディングでバッドエンドの数は実はそれほど多くないらしい。
が、アニメは"バッドエンドありき"で制作されており
「スクールデイズ」というタイトルから連想されるような学園恋愛物というより
誠のあくどさを強調したピカレスクやノワールに近い作風になっています。
小説では珍しくないもので、実はけっこう好きなジャンルだったりします。
見れば見るほど負の感情が沸き上がってくるのはこの分野では望むところで、
例の「誠氏ね」はむしろ彼への誉め言葉といえるでしょう。
ただし!本作には重大な欠点が2つあり、作品のグレードを大きく下げているように思います。
まずひとつは誠を「悪い奴」ではなく「嫌な奴」として描いてしまっていること。
彼のやっていること自体はそれほど騒ぐほどのことではなく
何故かモテまくるというエロゲ主人公の特権を活かして何人もの女と肉体関係を持つものの
金ヅルにしたり強姦したりしているわけではありません。
見ている僕たちを不快にさせるのは彼の性格の悪さですよね。
煮え切らない態度、女性への不誠実さ、すぐ他人のせいにする癖、
何より自分だけは傷つきたくないという考えで保身に走るところが腹立たしい。
後半になるとイチイチため息をついて視聴者をイラつかせます。
狙い通りの感情を引き出せているとは思うのだけれど、
結局はスケコマシに過ぎず、悪党としてのスケールの小ささは否めません。
もうひとつは登場人物の行動にまるで理解できないものが多すぎて、リアリティーを失っていること。
これは致命的な欠陥だと思っています。
物語の後半でサブヒロインの加藤乙女が誠に向かって「あんた何考えてるのか分からないよ」
というシーンがあるけどさ、俺に言わせると君たち全員何を考えているのか分かんねえよ!
まず誠。言葉はお嬢様ぶってガードが固くて面倒くさい女だと思って避け始める。
これは分かります。でも第6話のプール回では言葉は胸を押し付けてくるなどやたらに積極的になるのに
彼の態度がより冷淡なものになっていくのは違和感があります。
その後手当たり次第に女に手を出す展開を考えても、
自分からキープして二股かけようと考えるのが自然にみえます。
次に世界。最初に言葉と誠をくっつけようとしたのはなんだったのか。
第一話の最後に誠にキスをしたこと、わざわざ刹那と替わってもらって誠のとなりの席に座ったことから
最初から誠が好きだったのは明白です。
キューピッド役になることで誠と仲良くなってから奪う算段だったようにも見えない。
普通にとなりの席のアドバンテージを活かして親密になれば良いし
愛想が良くコミュ力のある世界にそれができないとも思えない。
こんな回りくどいやり方をする必要はどこにもない。
誠が迫ってきた時に「あなたは言葉さんの彼女でしょ」と拒否する理由もわからん。
最後に言葉。
これは君に限ったことじゃないけどさ、誠のどこが好きなのか全然理解できないよ。
誠への印象は最悪だろう。デートは自己中、性格の悪さ丸出し。付き合ってすぐに避け始める。
付き合う前は電車で顔を合わせるだけの関係。
さっさと別れればこんなややこしいことにならなかったのでは?何故誠に執着する?
お嬢様のプライドが寝取られたという事実を認めたくなかったから…には全く見えない。
ヤンデレの考えることはサッパリ理解できません。
サブヒロイン達も似たようなもの。
誰一人共感できる人物がいないのがスクールデイズの特徴です。
あまりに現実離れしていると、視聴者にとって他人事、遠い世界の話で終わってしまう。
それこそ「むかしむかしあるところに…」で始まるエロゲ童話にすぎない。
これではドス黒さにも今一つインパクトが感じられない。
胸糞悪い作品にするなら、見ている者に精神ダメージを与えるくらいの力が欲しいですね。
結局、本作で生まれる憎しみは
"ティッシュと一緒に丸めて捨てれる程度のもの"
だってことなのさ。
Game Over.
{/netabare}