はあつ さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
深淵の申し子たち
冒険ファンタジーと銘打つ作品は数あれ、これほど、探険の醍醐味を満喫できる魅惑的な舞台と、登場人物の冒険に挑む想いと苦闘する姿が鮮やかに活写された作品は、近年お目にかかったことがありません。
今期終了時点では、登場人物や冒険にまつわる謎が興味深く示されたものの、物語の核心まではまだまだこれからと言ったところですが、魅力たっぷりのキャストが出揃い、否が応にも期待が高まります。
後半や終盤に失速し期待が裏切られる作品も多いのですが、そうならない事を切に願い、製作が決まった続編を待っています!
以下、ネタバレ感想になります~
《ストーリーについて》
{netabare}
原作者つくしあきひと先生は、漫画家としては本作でメジャーデビューされたそうで、当初は同人誌で発表する予定だったとか。
それにしては、世界観の構築もハートフルな人物たちの描写もお見事です。
アニメのストーリー構成も上手く、冒頭から、神秘的な冒険の舞台が鮮烈に描かれ、危険で過酷な冒険に挑む動機が回を追うごとに深まり、物語へ引き込まれていきました。
《メインキャラたち》
「リコ」
明るく前向きな冒険の牽引役であり、料理上手な女子力とメガネ属性を持つ本作のヒロイン。
序盤、アビスへの挑戦が短絡的に感じましたが、オーゼンから明かされたリコの出生に、もう一人の母親とも言えるアビスに惹かれる衝動に納得。
「長生きしたくて潜ったんじゃない!」はオーゼンも認めたであろうアビスへの覚悟を感じて好きなキャラになりました。
にしても・・痛ましい描写が多くて気の毒にも。
まあ、そこも見応えを深めてるんですが、棒状のシルエットで人形のようなキャラデザでなければ見てられなかったです。
(このバランスも作者の計算なら凄いですが、かなりのサドかとも思ってしまう・・ともかく、元の同人誌向け設定なのか、裸吊りとスカトロはもうやめてあげて欲しい~^^;)
「レグ」
間違いなく物語の鍵を握るキーパーソン。
今のところ、秘めたスペックも思い出せない記憶も謎だらけで、その真価を問うのは続編を観てからになりますね。
ロボットとして紹介されてますが、瀕死のリコに号泣し、ナナチの自死を察して止める優しい心は人間の少年そのもの。
(人間でなかったら、リコとの温泉での反応はロボットの機能としては大人向け過ぎ・・これも同人向けのネタ提供なのか?^^;)
「ナナチ」
終盤に満を持して登場した、フワフワのぬいぐるみ。
裏腹過ぎる壮絶な過去が生んだ可愛い姿形は絶品です。
ぬいぐるみ好きだった?ミーティの想いがあの姿を象ったのかもと思うと切なくなり、はかなげな表情も、照れたり、おどけたりする反応も愛くるしく魅了されました!
最終話、この子の慟哭する姿には多くの方が泣かされたと思います(T^T)
かく言う私も「やめろょ~」と言われてもレグと一緒に抱きしめてあげたくなりました。
ナナチとミーティはどれだけの時をあのアジトで過ごしたのか?
寝る時に本を読んであげるさりげない描写に深い愛情を感じます。
そんなナナチの、ミーティを火葬砲で送る場面で見せた躊躇は、自分のやり方が正しいと自信が持てていなかったのかも知れません。
しかし、ミーティの魂を見届けたリコのおかげで、間違ってなかったと確信できナナチの心も安堵できた事でしょう。
2人からの同行の誘いに即諾するのも当然ですね。
互いに救い合った3人の心の絆は揺るぎなく、この先の冒険の試練を乗り越えていく姿が楽しみです!
《作画と舞台設定に関して》
美術監督の増山修氏はジブリ出身の方だそうで、幻想的なアビスの美しい背景美術は、直接携われてませんが「風の谷のナウシカ」の腐海の森に通じる魅惑的な興奮がありました。
テーマに沿った生態系の設定の作り込みとしては「ナウシカ」には及ばないですが、「アビス」はエンターテイメントとしてのギミックがふんだんに盛り込まれていて楽しめます。
両作の単純な比較ですが、人体に致命的な影響を与える、腐海の瘴気とアビスの呪い。
前者は現生人類すら汚染の対象として浄化するという、テーマである環境問題に繋げる装置の一つですが、後者は舞台の神秘性を維持すると共に、進むほど帰還困難になる試練を与え、エンタメとしての冒険に深みと迫力をもたせてます。
また危険生物は、ナウシカでは昆虫を基にした蟲にコンセプトを統一し、腐海を拡げて地球を浄化する目的に即した設定が見事でしたが、アビスでは多種多様な生物が、冒険に危難と糧を様々にもたらし、バラエティーに富んだ見た目も併せて、飽きさせない工夫に富んでいます。
初っぱなの巨大ツチノコが空を飛んだり、タマちゃんのチート能力は、突拍子もない設定ですが、人の最期の声マネや美味しそうな匂いでおびき寄せる習性は、現存する動植物から考案されててリアルな狡猾さが面白かったです。
遺物、居住物などの美術も凝りに凝っていて楽しめました。
呪いの説明に使った遺物の布地。透明なのになんとキレイな事!
ナナチのアジト。緑に包まれた癒しの巣は、見てるだけで心が安らぐ~♪
《声優さん》
井澤詩織さんの「んなぁ~」声の演技がハマりすぎて耳から離れません。
本作の以前、同じキネマシトラスさん製作の「灼熱の卓球娘」でも、井澤さんが演じる終盤に登場するキャラクターが一番インパクトがあって良かったんですが、ナナチは他の声優さんは考えられないくらいベストな演技をされたと思います。
ライザと2役の坂本真綾さんのナレーションも物語に深みを増すいい味だしてました!
《音楽》
OP、ED共にキャラ達の歌声と背景作画が
作品にマッチしていて大好きです。
EDは物語の登場に合わせて10話からナナチが参加してるんですね♪
オーストラリア人の方が担当された劇判曲も素晴らしく、神秘的な雰囲気を醸し出してました!
《最後に》
それにしても私の様なオッサンが、ぬいぐるみの様なキャラにメロメロになるとは・・自分の感性というか社会性が危ない(汗)
ですが、キャラデザ、声、描写、それら演出の全てが素晴らしく、「ナナチ」にはキャラ・オブ・ザ・イヤーを送りたい!
(まだ秋アニメ観てないんですが、この子を超えるキャラはそうそう出ないでしょ~^^){/netabare}