iruka さんの感想・評価
2.9
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 2.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
世界観やキャラクターが魅力。
同じPAワークスのSIROBAKOが面白かったので、同じお仕事アニメでありながら未視聴だった本作を見ました。
感想としては旅館を舞台にした作品の世界観、雰囲気や、岸田メル氏がキャラデザでそれぞれ朗らかな魅力のある登場人物が魅力的で面白かったです。
しかし魅力的なビジュアルとは裏腹に、物語の7割8割が恋愛ドラマに比重があり、もう一つの魅力である旅館を舞台にしたお仕事ドラマの要素が薄かったところがマイナスポイントでした。
本作の脚本は「あの花」や「とらドラ!」など恋愛もので定評のある岡田マリ氏が担当していますが、それゆえに主人公の御花や民子を取り巻く恋愛描写に対しては力の入ったドラマが展開されていました。
ですが一方の旅館を舞台にしたドラマにはあまり力が入っているとは感じられませんでした。物語序盤こそ主人公御花が突然旅館経営に携わることになり、そこからのトラブルなども描写されていましたが、基本御花は特に苦労することもなく淡々と接客業をこなしていますし、SIROBAKOのようないわゆる”業界モノ”特有の専門的な展開が描かれていないところに疑問を感じました。
さらに恋愛ドラマの内容も主人公御花は基本的に自分ひとりの中だけで解決してしまいますし、本作のもう一つの魅力の旅館モノという「主人公の仕事を通した成長」が全く恋愛ドラマにかかわっていないところが残念でした。
お仕事ドラマとしても舞台になる喜翠荘が具体的にどういう経営状態なのか(お客の入りが悪いなどあまり良くないと読み取れるところはありますが)描かれていませんし、御花が着物を着て盛り上げたり、終盤四十万縁と川尻崇子が結婚し、お店を立て直そうと奮起する描写もありますが、結果的に最後はお店を畳むというハッピーエンドとはいいがたい完結になっています。
特に四万十スイなどが「常連さんやお客様を大切にしなさい」と劇中何度となく描かれているのに、終盤の喜翠荘の雑誌掲載、ぼんぼり祭りによる集客上昇に伴っての描写が「お部屋でゆっくり食事ができるのを楽しみにしている常連客を、バイキング形式の変更による裏切り」など、まったくの矛盾した描写として描かれているのに納得できませんでした。
さらに旅館を畳んだ後の建物は、”市が文化財として保存してくれる”としてありましたが、逆に文化財で保護されるほど立派な建物を持っていながら、それで旅館経営を維持できなかった主人公もとい、経営陣の登場人物はどれだけ無能だったのか…と疑問に思いました。
恋愛ドラマとしては非常に丁寧に描写されていて、恋愛ものが好きな人にはお勧めできる作品だと思います。
しかしお仕事ドラマとしては残念ながら舞台になる接客業、旅館業に対するポジティブな印象は見受けられませんでした。
個人的にはもう少し旅館特有の困難やドラマが展開され、そのドラマが主人公御花の成長につながり、さらにそれが恋愛の悩みへの解決、困窮していた旅館経営の立て直しにつながる…などの明るい展開になればより見ごたえのある物語になっていたのではと思います。