雪雫 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:今観てる
食べること 生きること
この2つが本当にシンプルに、そして丁寧に描かれている作品だと思う。
素材も技術も段違いな料理。
そして味覚に貪欲な日本人だからこそ、この作品で描かれる料理の素晴らしさはわかるし食べた人達の感動も簡単に伝わってくる。
海外の人が日本に来た時にその味と技術に感動するというのはよくある話だけれど、まだ技術も素材も未発達な彼らにとっては、本当に天国のような食事なのだと思う。
この作品の素晴らしいところは彼らの感想が、あくまでシンプルで誰もが共感するところ。
料理漫画にありがちなこと高級食材云々、技術云々といった食べた人やわかる人でないと想像がつかない味なのではなく。
あぁ、近所のあのお店で出る あの料理が食べたいなっと思える。そんなシンプルだけれど、その料理自体を素人が食べた時に感じる感想だからこそ、本当においしそうに感じられるし、作者は食べるのが好きなんだなという印象を持つ。
無駄に肩書きや能書きを垂れ流して、味を無理やりおいしいと思わせるのではなくて、普通の西洋料理屋の味に異世界の人たちが感動する。
それを見ると、自分たちは恵まれた環境に生きているんだなっと感じるし、世界を救ったり、他人に自分を認めさせたり、他人に対してマウントを取りたがる作品が多い中、ただ相手に美味しい料理を出すだけのこの作品は、自分達のできる範囲で自分達のできることをするのがいかに大切で幸せなことかを感じさせてくれる。
食べることは生きることであって、最高級の食材や技術で作られる能書きがないと美味しさを感じられないような何かを食べないと人生に機転が起きるわけではなくて、ただ日常の中で同じように食べる「美味しいもの」は、気づかないけれど感動や生きる気力を与えてくれていて。
当たり前のようにあるそれは、ほんの少しだけれども確実に明日を生きる何かをくれている。
だから彼らが美味しそうに週に一度、自分の好きな美味しいものをソワソワしながら、楽しみに生きている姿は、自分の好きなお店に通ったり、友達や仲間と食事をしながら語らうあのほんの少し幸せな自分達の時間を思い出させてくれる。
人から見ればささやかで、羨望するような生き方ではないしとんでもない絶望や苦難に突き落とされてるわけではないけれど、自分達の人生を懸命に直向きに生きて、目の前の問題に悩んで立ち向かって、そんな自分という存在があるからこそ自分の大好きな料理のこだわり譲らない。そんなキャラクター達も本当に愛おしい。
そんな話の最後を飾るEDも素晴らしくて、ただそこにある小さな幸せや大切なものがいかに愛おしいかを伝えてくれる。
ただ残念なのはOPが世界観にあまりあっておらず、騒がしいだけで中身もなくシンプルなのに趣があるこの作品とは対極なところ。それ以外は本当に素晴らしい作品だと思う。