MLK さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:今観てる
無題
全部見終わって
これ以上ないというぐらいに王道中の王道。ヒーローがヒーロー足りえるのは勇気があるからという王道というか無難というか、とにかくヒーロー物を抽象化して語りなおしたということでは間違いのない作品。
ただ、良くも悪くも角のない作品のため、滅茶苦茶面白いかと言われればそんなことはないし、なにより、過去の語り直しをしているために、子どものなりたい職業の上位に公務員が来るような現代日本でヒーロー物を語るということが、空虚になってしまうという現実を感じずにはいられない。
この国には界堂一道が大勢いるし、子供は界堂一道を許容するのだ。それが全てだ。
それが良いのか悪いのか分からないが、一つだけ言えることがる。
この物語で本当にヒーローを欲していたのは、笑ではなく一道だったし、ヒーローになるべきなのも、一道であった。
以下途中感想
深夜アニメとしての一定の水準は越えている。少なくとも何かを物語ろうとしてはいて、中堅クラスを集めた豪華声優陣もよくキャラにフィットしているし、賛否両論の作画も、ゲームムービーみたいなものと割り切れば質感含め気になることはない。脚本は、伏線のない唐突な展開が多かったり、「差別」「共存」といったワードを直接会話の中に混ぜ込んで来たりと正直お粗末な部分も目に付くが、ヒーロー物のお約束をこなしつつコミカルなキャラクター描写は好感が持てるし、1クールで話畳むにはまぁしょうがないのかな、と思う部分もあるので許せる範囲である。
肝心の内容は、身も蓋もない言い方をすればシュタインズ・ゲートの後半の内容を元にしたヒーロー論だ。
まゆりと紅莉栖の問題を、娘である笑と世界に置き換えると非常に分かりやすい。
主人公・界堂笑の父である界堂一道は、ある日世界線を飛び越える力を手に入れるんですね。で、どんな世界線でもまゆりこと笑が死ぬことを発見してしまう。それを回避するためには紅莉栖こと他の世界を殺さねばならない。ここで笑を助けるために世界を犠牲にしてるのが一道で、他の道を探してどっちも救えというのがヒーロー4人の主張。
シュタインズ・ゲートではよく分からない理論でラスト一転攻勢に転じどっちも救ってしまうのですが、本作では多分気合と根性とヒーロー力でどうにかしますね。
それはそれとして、本作は昭和のヒーローを元にしながらも、「ヒーローってなんだろう」ということをテーマにしている通り、アプローチとしては平成の特撮ものに近い。このような問いが出てくること自体が表している通り、最早今の世の中では昭和のヒーロー観はなかなか受け入れられ難いものであり、必然としてヒーロー像も微妙に変化する必要がある。
はずなのだが、どうにも本作からはそういう香りがしない。作品内で笑に言及されている「強いからそんなことができる、ただの自己満足だ」という問いに有効な回答ができそうにないのだ。
これは現代社会においても非常に重要な問いだ。いまや政治はエリートのおもちゃとして正義の名のもとの自己満足に陥っているという告発に世界中が混乱に陥り、露悪と合理へと進んでいる中、真剣に取り組むにあたいするテーマだろう。だが、それは決して昔の価値観の復活や精神論、ご都合主義では、解決できないテーマでもある。とりあえず最終回までは注視していきたいと思う。
またまたそれはそれとして、私的に主人公の笑はドストライクだ。CGによって再現されたドスケベボディにはセルアニメでは出しがたい魅力があるし、薄幸かつ真っ黒な目の死に方、自暴自棄な表面とナイーブな内面、CV茅野愛衣、どこをとってもシコリティに不足は無い。酷いことをされても、幸せになっても満足できる、稀有なキャラクターだ。
11話まで視聴
おおむねで間違ってはいない、間違ってはいないのだが……。
笑が自立することで解決するという物語の流れ自体には問題ないのだが、もう少し笑の成長過程や強さを獲得する過程を描かなければ説得力が出ない。まあ尺の都合上これ以上深く描くのは無理だろう。
ただ、界堂一道を物理的に倒すのは笑であって欲しかった。死の未来を招くものの正体が明示されない以上、最後は勇気をもって一歩を踏み出すことが最強の武器!が最終回答なのだろうから、ヒーローからも自立した明確な勇気の描写が欲しかった。