N0TT0N さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
すずの日記
視聴前にコトリンゴさんの「悲しくてやりきれない」を何度も聴いていて、なんの迷いもなくEDだと思っていたんですが実際はほぼOPとして使われていてちょっと混乱してしまいました。何かがあったせいで悲しくてやりきれない。といった前振りありきりの歌詞に思えるのもあって何ともいえないミスマッチ感があり、同時にそういう物語的な文法に囚われない作品なのかな?と感じさせられました。
流れ的には4コマ漫画を積み重ねるかのように淡々とエピソードを繋げていくようなスタイルで、やはり物語というよりドキュメンタリーのよう・・というか主人公すずさんの日記を追っているようでした。
そういう「過剰さ」を抑えた史実に誠実なスタイルや、生活を軸に描くスタイルはすごく好感が持てました。
とはいえ過剰に思える現実というのは実際にはあったはずで、そこを描くのは非常に重要だし誤解を恐れずにいうとドラマチックの宝庫でもある。エンタメ的過剰さや感動の押し売り感を拭いきれない作品も含め、たくさんの映像作品がこの部分を描いてきた訳ですが、そういうのがあったからこそ過剰さを抑え生活を軸とした作品が多くの共感を得たという側面はあると思います。
監督がどの程度エンターテイメント性を考えていたかは解らないけど、過剰さを抑えた作画、音はそれ故の生々しさがありました。
「エンタメ的な迫力」のない無情で無機質な砲撃の音の恐怖や、まるで現代と戦時中の生活感の差のように数十キロ離れた場所に吹くそれ相応の爆風、光、窓の振動。それが何なのか解らない感じ。
こういったディテールの誠実な描写や、「生活を軸にする」という、多くの人にとって地続きな設定が、戦争と生活の距離を、現代と当時の距離をぐっと縮めていたんではないでしょうか。
それに加え日本昔話的で愛らしいキャラ設定、それに合わせながらしっかり丁寧に描かれた背景。
私なんかの想像が及ぶ「いわゆるアニメ像」の外側で見事に構築された唯一無二の作品がこの、『この世界の片隅に』ではないかと思います。
「おもしろい」とか「感動した」とかいった評価がなぜかしっくりきません。(かといってなんと評すればいいか解らない^^;)
多分あにこれの星の評価でも計りかねるタイプの名作だと思います。