DEIMOS さんの感想・評価
3.8
物語 : 5.0
作画 : 2.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
王道野球漫画の大河アニメ(シリーズ1のみならず全シリーズの評価)。
サンデーに長期連載した漫画・メジャーが最初から(ほぼ)最後までアニメ化され、主人公吾郎の野球人生を描き切った大河作品。サンデーで連載を読んでいた時の感覚では、普通に野球をしているだけのつまらない漫画、と切り捨てていたが、改めて(3日ほどで)シリーズ1−6のアニメ全話を見通して見ると、不思議なパワーを秘めた作品であると驚愕した。一見ありふれた野球漫画の本作のどこに魅力が隠れているというのだろうか?
まず第一に、親がコロコロと入れ替わる設定が斬新かつ大胆。私は、常々、「生死」といった重要なテーマを扱えないことがスポーツ漫画の限界であり、それを描けない以上、スポーツという媒体を通じて「あしたのジョー」以上の漫画作品は生まれないだろう、と唱えてきた。唯一これに肉薄したのが弟の死と残された者たちの奮闘を描いた「タッチ」であったが、それ以降、これらに匹敵するスポーツ漫画はなかった。メジャーは、ここに挑戦をした。実母の病死、父親の再婚、父親の死、養母の再婚を通じて、最後は、主人公の名字が変わるというトンデモな展開を見せる。中でも重要なのは、実父の死であり、吾郎の野球に対する強烈なモチベーションの原動力となる。ここが、極めて「漫画的」であり、面白い。
第二に、吾郎が、常に自ら進んで逆境に身を投じ、死闘の末に強敵を打ち負かしていくという展開が痛快。「真田丸」や「ジャイアントキリング」で流行ったあの要素をこの漫画はしっかりと備えている。「メジャー」というタイトルながら、主人公は、常に「マイナー」な経歴を持つのだ。野球漫画なのに、甲子園に行かない(そもそも目指していない)って、破天荒で面白い。
第三に、中だるみが少ない。いつもNHKの本家大河ドラマを見ていると、中盤が退屈になるが、本作は、リトル、中学、高校、マイナー、日本代表、メジャー、と定期的に舞台を変えることで、中だるみを防止。ピークは、シリーズ1−3だが、それ以降もなかなか面白い。
第四に、世界に視点を置いている。メジャーリーグを通年追いかけていると、プレイスタイルの自由さやダイナミックさに驚かされる。日本野球に閉じずに、メジャーの舞台をしっかりと描いているのが面白い。そもそも、吾郎のプレイスタイル自体が、このメジャー向きに設定されている。
もちろん、作画の動きが悪い、主題歌がダサい(それはそれでクセになるのだが)、野球の設定が詰め甘(ジャイロボールの特性等)、ファストボールだけでそこまで通用しないだろう、などなどツッコミどころは満載なのだが、元々サンデー漫画だから、その辺りはご愛嬌。
もっとも面白い野球アニメは何か?という話になると、名前があがって然るべき作品だろう。
私自身、ドカベン、巨人の星、プレイボール、タッチ(及び他のあだち作品)、おおぶり、ダイヤのA、ONE OUTS等を観てきたが、それらと比較しても遜色ない(別種の)面白さを持つと思う。