退会済のユーザー さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ロマンスの喪失
名も知らずに別れた君を想う・・・邦画の名作『君の名は』
そのロマンチックな響きにヒントを得て、いつも通りの童貞男子の妄想恋愛物語を広げまくったのでしょう。
私の新海誠への印象は、『秒速5センチメートル』は退屈すぎて途中で観るのやめたし『言の葉の庭』は薄っぺらい恋愛描写に終始イライラ。という感じなので、それに比べると十分視聴に耐えうる内容だった。
セリフや独白などが必要以上にセンチメンタルで押し付けがましくって胃もたれしそうだったけど。
RADWIMPSの音楽が青春のキラキラ感と切なさを多いに盛り上げて、キャッチ―でテンポよく商業的アピールは絶大で、これは川村元気のプロデュース術の勝利だろう。音楽が違っていたらここまでの大ヒットには至らなかったかもしれない。
展開は随分駆け足だけど、飽きさせないための現代的な工夫のひとつだなと感じた。次々と畳みかけることでスピード感を落とさず考える隙を与えない。それで「なんかわかんないけどすごーい」から、力技でハッピーエンディングに持ち込んで「感動した!」と思わせる。そういう意味では編集も上手い。
しかし冒頭のネタバレは余計だったと思う。だって、{netabare}大人になった姿が描かれてたってことは少女の死亡は無事に回避されて、大人になって東京で再会して「君の名は?」って言い合って終わるんだな。ってとこまで予測できてしまって、一番ハラハラドキドキするはずの住民避難させる場面はすっかり冷めた気持ちで観て、最後は「もうわかったからさっさと再会してください」ってシラケた気分だった。{/netabare}
それと、すれ違いと再会の演出について…
かつての『君の名は』では再会を約束しながら様々な事情で行くことができず、それを知らせる手段もない(なんせ終戦直後の混乱の時代なんで)ために再会を果たせずにすれ違い、想い合いながらもなかなか一緒になれない。そうしてもどかしく切ない恋愛劇が始まる。しかし現代では、それはスマホで連絡先を交換しておけばあっさり解消してしまうことなのでリアリティに欠ける。
{netabare}スマホの日記が消える描写と記憶を失くす設定も不要じゃないかと最初は思ったんだけど(名前と場所だけを頼りに探し出して再会って展開でも十分ドラマティックだから)、あれだけの記憶の手がかりがあればいまはSNSやネットで簡単に探し出せるだろうから、やはりリアリティに欠けてしまうんだなと思い直した。{/netabare}
そうなると、現代的な情報ツールを駆使しつつドラマティックな再会を演出するためには、{netabare}もはや記憶を奪い4次元に頼るしかないのかもしれないと。{/netabare}
かつての名作映画のようなロマンスは、きっともう生まれにくい。