まりす さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
心を絡め捕られる男(と私)
文化庁が主導する若手アニメーター育成プロジェクト
「アニメミライ2012」の参加作品4つの内、Production I.Gが制作を
担当した作品。
アニメーター育成事業だけあって、時間は30分程度と短いながらも
色んなシーンを仕込んでいます。
戦闘シーン、ホラー的な構図、ヒーロー番組等々…
場面も古都→現代の街並み→廃村 と、趣の違ったフィールドでキャラを動かしている。
音楽が抑え目な分、作画をじっくり観られた点も良かったと思います。
ストーリーはほのぼの系…かと思いきや後半のシリアスっぷりも面白い。
また、物語の中心に居る「娘蜘蛛」役である金田朋子の演技は見物です。
「蜘蛛を擬人化して幼女にするとこんな声かなぁ」みたいのをドンピシャで
やってくる。やっぱり役者って凄いや。
ネタバレで3点考察しときます。
{netabare}
①娘蜘蛛は瑞紀の頭に牙を突きたてたり、顔を脚で刺したりして
ましたが、最初から獲物として見ていたような印象を受けました。
そう考えると娘蜘蛛の行動は一貫してましたね。
②廃墟で硯が蜘蛛の糸にまみれながら 何かに誘われていくシーン。
あれは糸に物理的に引っ張られてるのではなく、糸そのものが
「存在をからめ捕る」存在だったのでしょう。
ラストの月吠庵のシーンでは、硯に操られている素振りが見られません。
(目の下にクマがない)
瑞紀が死んでいるにも関わらず平然としている。
からめ捕られたのは理性です。
硯は最早、蜘蛛に贄を捧げるのにも躊躇わないでしょう。怖い、怖い。
③萩原朔太郎の「月に吠える」という詩集で、吠えているのは犬です。
何で吠えてるかと言うと、自分の影に怪しみ恐れて吠えている。
月吠庵の店主は過去の自分と同じく怪異に片足を突っ込んだ硯の状況を
怪しみ、恐れて 瑞紀に「硯を取り戻せ」と耳打ちする。
結局硯は怪異にからめ捕られてしまいますが、店主にとっては
自分の過去(≒影)を見ているに等しい。
不吉な月を怪しみ、影を恐れても、所詮影は自分を離れることがない。
お前も逃れられぬ定めだったかとため息をつきつつ、硯の状況を
割かし簡単に受け入れてしまう店主は結構重要キャラだと思います。
{/netabare}
それにしても娘蜘蛛めごい。めごいぞ。
一匹家に欲しいです・・・(おっと目の下にクマが)
機会あれば鳥山石燕の画にも触れてみたいと思います。
お目汚し失礼いたしました。