めっちょん さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
栗山未来の消失
出会えて良かった
出会わなければ良かった
運命が二人を引き合わせそして引き離す
あなたを、
君を、
救えて良かった
これは、
血に呪われた孤独な二人が出会い
お互いの生きる意味を紡ぐ絆の物語
◎シナリオ構成が素晴らしい
前半は4話で2人の固い絆を描いてるんですが
ここでは栗山さんが過去の因縁で妖夢を倒せないという事が主題になってます
半妖で不死身である秋人を狙うのもそれを克服するためだと語ってます
中盤でその因縁を断ち切る事になるのですが
後半に入ってそれまでのエピソードが覆ります
いわゆる起承転結の転の部分です
話は2人が出会う前にさかのぼり栗山さんの本当の目的が語られる
それまで腑に落ちなかった伏線が「境界の彼方」というタイトルと共に見事に回収されます
なぜ栗山さんでなければならないのか
なぜ秋人が半妖なのか
その理由を知った時
この作品の全体の姿が見えるように作られてます
前半は栗山さんの章
ここでは秋人が栗山さんを救った
後半は秋人の章
前半のエピソードによって栗山さんが犠牲になってでも秋人を救う理由付けがしっかり生かされ
素直に感情移入出来るようになっています
理由付けの無い自己犠牲ほど薄っぺらで滑稽なものは無いですから
そしてラスト3話に渡る栗山さんの喪失回は圧巻でした
ここを丁寧にやらないとその後の感動も半減してしまうのですが
上手く構成を組み立て調整し最後まで引っ張って非常に感動できるラストを演出しました
で、レビュータイトルにある栗山未来の消失
これはもちろん同じ京アニ制作の「涼宮ハルヒの消失」を指します
涼宮ハルヒの消失は日常パートであるTV版「涼宮ハルヒの憂鬱」の上に成り立つ物語でした
その手法をこの作品でも使っています
作品構成のなかでも異彩を放ち強烈なインパクトを残す第6話
一見物語とは何のつながりも無く意味のない日常回のように見えますが
この6話をはじめとする日常パートが後の栗山未来の消失に生きてるわけです
ちなみにこの「消失」演出は他のアニメでも度々見られますが
間が持たないのか1話の中で詰め込んだり消失感を丁寧に描かない作品は個人的に評価が落ちます
ただまあ最終的に元の状態に戻って境界の彼方の問題は何も解決されないのですが
平穏を取り戻したという事と続編に含みを持たせた事
2人の絆を固め異界士協会と名瀬家にも少なからぬ変化を与えた事を思えば
非常に良い第1作目の落としどころだったといえるのではないかと思います
まあ完結しなければ作品の完成とは言えませんがアニメ制作の都合上仕方の無い事ですね