Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい。
この作品の存在は依然から知っていましたが、中々手が出せなかった作品の一つです。
ここ最近、過去に放送された作品の続編がぞくぞく放送されています。
2017年夏アニメの「地獄少女」や「最遊記」
2017年秋アニメの「キノの旅」や「魔法先生ネギま!」などです。
私は自分の性格上、視聴するなら最初からじゃないと嫌なのですが地獄少女で挫折しそうになりました。
これまで3期まで放送されてきたのですが、1期が2クール26話と相当なボリュームがありましたから…
一方、この作品は1クール13話だったのでサクッと視聴できましたが、完走して振り返ってみると不思議な作品だったという印象が強いです。
この物語の主人公はキノ…エルメスというバイクに乗って世界中を旅して回る女の子です。
彼女は「大人の国」で生まれ育ちました。
ここでは12歳になると大人になるための手術を受けなければいけません。
その手術を受けると、この大人の国で何の不自由もなく暮らしていくことができます。
だからその手術を受けるのは、この国にいるための絶対条件…
けれど、国の人々を見て違和感を感じずにはいられなかったキノは、手術の3日前に旅人に出会うのですが、この出会いが彼女の運命を大きく変えることになったのです。
彼女の選択は「旅に出ること」
こうして彼女とエルメスとの物語が現在に至る…という訳です。
不思議なところ=ツッコミどころ、という訳ではありませんが、序盤の物語が動くまでの説明…即ち彼女の在り方に対する説明が少なかったので、旅に出る前後の彼女の言動には多少の違和感を感じましたが、視聴に影響するほどではなかったと思います。
それは彼女の言動に対する違和感は、旅が始まってからの方が大きかったから…
一番の違和感は彼女が傍観者であり続けること…だったと思います。
様々な国に赴き、様々な文化や運命に触れるキノ…
でも彼女は自分のスタイルを決して変えることはありません。
私にとってそれが不思議でなりませんでした。
何故なら中には当事者になっても決しておかしくない出来事もあったと思います。
むしろその方が自然…と思う事も何度かありました。
その人の人生にとって旅人との触れ合いはきっと瞬きと同じくらい短い…
だから、出会う人々の人生に介入してはならない、と思ったからでしょうか。
そしてそれは優しさ…なんでしょうか。
確かに時には優しさに成り得るかもしれない…
不用意な接触が逆に相手を傷付けることもあるから…
けれど、もう少し自分らしさ…というか、自分の本音を曝け出しても全然おかしくない…むしろ人としてその方が自然と思えることがあったのも事実です。
何故彼女は躊躇するの…?
国から国を渡り歩く彼女の守るべきは自分自身だけの筈なのに…
そのためのしがらみは全部捨ててきた筈なのに…
きっと分かってるんです…
そこで優しさを示したとしても、それで得られる安らぎは所詮一時しかなくて…
そしてキノは手を差し延べた人の人生を背負えるほど大人じゃない…
だからどんなに喉から手が出そうになってもその欲求を抑え込んできたんだ…
そう考えると、妙に切ない気持ちになりました。
自分の中でその気持ちのピークを迎えたのが最終話の「優しい国」でした。
彼女の選択は正しかったんだろうか…?
今でもその答えは分かりません。
でも目の前で起きた出来事はこれまでの中で一番辛かったかもしれません。
選ばなかったが故に辛く感じること…
少なくてもキノはその気持ちを胸に刻んだのではないでしょうか。
オープニングテーマは、下川みくにさんの「all the way」
エンディングテーマは、前田愛さんの「the Beautiful World」
物語の世界観を味わうには十分過ぎる13話だったと思います。
これから2期を視聴しますが、キャラデザがガラッと変わっていたのが印象的です。
今度はどんな旅になるんだろう…視聴が今から楽しみで仕方ありません。