101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
畏怖すべき大穴
原作コミックは未読。
冒険とワクワクについて、とことん、えげつないほど掘り下げ、
見る者の心も容赦なく深掘りしてくる逸品でした。
少年少女は冒険に憧れ、旅に出るものだ。
そこで思考停止してしまえばただの中二テンプレートですが、
本作は、とは言え、探窟家たちが挑むアビスの大穴の危険は生半可なものではない。
でもそこに冒険心をくすぐる要素があるからこそ、旅は続く。
冒険にまつわる諸要素を、様々な角度から掘り起こして、
丁寧に設定として煮詰めて、
それらを説得力のあるレベルの背景作画とBGMと共に提示する。
丹念な表現を繰り返すことで、
視聴者を冒険という熱病に感染させる魅力が本作にはありました。
可愛らしいキャラデザとグロとのコラボレーションも、
最初は馴染めず、時折、繰り出されるコロコロコミックじみたギャグと相まって、
私はなかなか折り合えず、苦労しました。
ですが、終わってみれば、このギャップも、
ほのぼのムードから急転、死の淵に転落する、
アビスの恐怖を視聴者に叩きつけるのに、有効活用されていたと思います。
本作が発掘した冒険心くすぐり要素の中で私が一番気に入っているのは、
{netabare} アビスの遺物、新発見は、凄腕と評価された探窟家が認定して初めて既知となるという設定。
即ち、低ランクの探窟家が深層から驚愕の体験談を持ち帰ったとしても、
どうせ“アビスの呪い”で頭がイカれて幻でも見たのだろう?
くらいにしか思われない。
探窟家・最高ランクの“白笛”が確認して、初めて、発見は世間に認められる。
この辺りの設定に触れていた時、私の脳内では高揚感をもたらす謎の物質が分泌されていました。
その他、冒険で未知の怪物や、自然の驚異よりも怖いのは、
狂った探窟家自身の常識、倫理観その他、人間性の消失である。
これらの描写に触れていて、ふと、西洋人による大航海時代の諸エピソードが、
脳裏に浮かんできました。{/netabare}
こんな凄いものを立て続けにハートにぶつけられたら、
アビスに挑むしかありません。
世界観から滲み出た、冒険を鼓舞するナレーションも私はお気に入りで、
視聴中、思わずいくつかメモしてしまいました。
この中から私が一番、心が震えたナレーションを引用してレビューを締めたいと思います。
{netabare}二度と戻れない旅、二度と手に入らない宝物、二度とかえらない命。
この世にある物のほとんどが、二度と元には戻らない。
それを分っていながら、人は今日も一歩前へと進む。
一度も見たこともない景色を見るために歩き続ける。
未知への憧れは 誰にも止められない。{/netabare}
さぁ、冒険へ出よう。