チョビ0314 さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ガルパンはいいぞ
多大な人気を博し続ける人気作「ガールズ&パンツァー」について、今更ながらですが個人的に少し考えてみようと思います。
(今回も長文ですので読んで戴ける方は、どうかご理解下さい)
まずこの作品が何故受けたのか。
多くの方が語ってらっしゃる「第一話のインパクトで一気に引き込まれた」という点。これは大いにあると思います。
最初に高クオリティな戦車戦を見せつけギリギリの所で日常パートに切り替わり、最後に学園艦の全景で驚かせる。
でも単純にそれだけではないと思いました。
自分にとって一番魅力的に写ったのが視聴者に対しての「媚び」をあまり感じない点。
特に実際に存在するor存在していた題材を扱う作品で露骨な媚を感じると、途端に興味が薄れてしまう場合が結構あります。
理由はあくまで見たい優先順位でして、このガルパンなら戦車のリアルな描写。そこを蔑ろ(ないがしろ)にして色気を全面に出されると、作品自体が薄い物に思えてしまうのです。
ガルパンのキャラクターデザインは今風の萌え絵だけど、良くある安易なパンチラや乳揺れ、俗称乳袋もありません。(バレー部はぴっちりしたシルエットですが、実際バレーのユニフォームも同じ様にぴっちりなのでOK)
着替えのシーンがあっても普通の日常レベルで、無駄に露出はさせず自然な範囲。
1話ではないけど作中で入浴シーンもありますが、何故かエロさをあまり感じません。多分ですが彼女たちは単純にお風呂に入ってるだけで、TVの前の我々に対してお色気アピールをしない様に描かれているからではないでしょうか。
更に良かったのがキャラクター達の目線で、しっかりと作品の世界や話し相手を見据えているのが伝わってきました。
あとこれは1話で後から巧いと気づく拘り(こだわり)です。
幾つか挙げてみると…
通学中のサンクスにボコのポスターが貼ってある。
学食のシーンで華、沙織、みほの三人がメニューを受け取る際、トレイ左側に飲み物を置いているのは華のみ。(テーブルでは全員左に置き直している)
華は華道家元の娘で普段から和食を食していそうですし、マナーが自然と身に付いていた故かも。
必修科目選択の際書く用紙に仙道と忍道という科目があり、後に劇場版のオマケで実際に2つの科目の描写がある。
上記に用紙の一番下に小さく、記入に不備があったり選択しない場合は自動的に戦車道選択となる旨が書かれている。
戦車道紹介ムービーで映るメインの戦車は三号J型で、後に黒森峰女学園の囮役を務める三号と同型。
Aパートの校舎が映るシーンで空母のマストが写り込んでいる。
買い食いするアイスが74アイスクリーム、これは自衛隊の74式戦車と掛けている。
道を走っていくトラックが大洗便。
とりあえず1話はこんな感じでしょうか。
その後もワンクール各話を通じて様々な拘りを見つける事が出来るので、見直す時に余計楽しむ事が出来ました。
さてガルパンと言えば戦車道です。
架空の武道であり、最初は「なんだそれ???」状態でした。
でもチームメイト同士の模擬戦や聖グロ相手の練習試合でなんとなく「こういう感じなのね」と理解を深めていきます。
そして舞台は全国大会へと進むのですが、途中で二度総集編を挟みます。
この総集編回の使い方がかなり良く、上手に戦車や戦車道のルールと戦術などを説明してくれたので只の総集編以上に楽しめた上により戦車道を理解できました。
これにより放送の遅延を高いレベルを維持するために已む無し(やむなし)と理解し、最後の二話を期待と共に待とうと思える人が増えたのではないでしょうか。
それから全国大会で戦力的に劣る大洗チームは、奇策とも言える作戦を展開し強豪校を次々破る快進撃を遂げます。
正直相手チームが油断しすぎだし、なんでこんな簡単な戦略にやられるのか?とも感じる部分もあります。ですがそもそも戦車道は架空の武道ですから、正しい正解なんか誰も解らない筈だし、展開の良さや高揚感と爽快感を感じさせるあの作り方で良かったと思います。
戦車を含めた様々な描写も、ただ単になんでもかんでもリアルを追求するのではなく、これは絶対に外せないという部分を選び出して丁寧に描く。
こうやって上手に取捨選択をしたから、全話を通じてストレスなく楽しめた気がします。
だって毎回壊れる戦車の整備を全部再現したり練習のシーンを何度も挟んでいたら、とてもじゃないけど12話に収まらないし、くどすぎて人気に繋がらなかったでしょう。
こういった丁寧な描写に裏打ちされた物語で健気に戦い続けるキャラクターを見るのは楽しく、展開と共に一喜一憂し気がつけば彼女たちを自然に応援していました。
キャラクターだと聖グロのアッサムが同じ様に描かれていたのが印象的です。
これ以上は作品への愛故長くなるので又の機会にw
あとガルパンは徐々にアニメには興味があまり無かったミリタリー好きのファン層も増えましたね。
これもやはり優先順位の問題で、頭の中で想像していた「自分が好きな戦車が縦横無尽に走り回り戦う」という願いが具現化したのを見て、その次に可愛いキャラクター達も徐々に好きになって行ったという感じだと思います。
一気にブームが盛り上がるというより、徐々に人気が加熱し結果としてガルパンは成功を収めました。その後本作を模したと思われる「二匹目のどじょうを狙う」作品が幾つか出ましたけど成功しませんでしたね。
おそらく成功作を形だけ真似た故の粗さやあざとさ等を露呈したからでしょう。
ガルパンは放送よりかなり前から製作者側が舞台である大洗の方々と地道に交流を繰り返し、様々なアイデアを出し合い練り上げて作り上げられた作品です。
製作者側と地元の方々の暖かさ、緻密な作画と演出、拘られた設定、荒削りながら初々しい演者さん方、迫力のある音響とBGM、これら全てが噛み合って生まれた本当の名作だと思いますので、是非色々な方々に見て戴きたいです。
それから毎度ではありますけど、ちょっとした豆知識を1つ。
作中にてプラウダ高校のノンナがカチューシャに歌った「コサックの子守歌」は演者の上坂すみれさんのアドリブだったそうで、それを見たロシアの方が「なんで日本人が俺の田舎の子守唄を知ってるんだ!?」と驚いていました。