空知 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「好きってなに?」を視聴者にきちんと考えさせられなかったストーリーと構成の甘さがもったいない
原作未読
原作の存在すら知りませんでした。
しかも、2017夏のアニメに、男子と恋愛してるのに、実際は百合百合してる作品があるという情報があり、恥ずかしながら、この作品だと思い込んでました(笑)。
制作者の方々すみません(>_<)
初めて観たときの感想は「目、デカッ!」でしたが、段々と慣れてきました。
ラストがモヤモヤっとする終わりかただったので、その点が実に残念。
しかし、超少子化社会を改善するために政府が結婚相手を決めるという設定はアニメならではで興味深い。
が、そこから派生してくる人間本来の心の問題に切り込むストーリーと構成に甘さがあったことが秀作たり得た作品を目立たない作品にしてしまった感があります。
ヒロイン2人はどちらも非常に魅力的です。根島が最初に好きになった女の子と、政府から通知された女の子の間をフラフラするところは、「このヘタレ!5年間想っていた女の子をなぜ選ばないんだ」とイライラしました。が、政府通知の女子も、これまた性格の良い子で、行動を共にするにつれて主人公の心が惹かれて行く気持ちも非常によく理解できます。
高崎美咲と真田莉々奈の間で葛藤する根島の姿こそがこの作品のテーマです。
(簡単に言うと、「運命の赤い糸」と「科学的な赤い糸」のどちらが強いか?です)
また、高崎さんが隠し続けていた秘密とは何なのかが分からないこともモヤモヤ。
(下のネタバレ部分に個人的推論してあります。)
ラストは結局どういうことなのか、よく分からないまま終了。
どっちも選べないなんていうラストなら、作品のテーマ自体に切り込めなかったということになります。原作に欠点があるのか、脚本が駄目なのか、尺が足りなかったのか、どれかなんでしょう。
すっきりしないラストでしたけど、テーマは良いですし、いろいろ考えさせられたりする面白い作品でした。
個人的には67点くらいあげたい佳作の上くらいの作品。
以下、ちょっと考察してみました
ネタバレありますし、長いので読みたい方だけお読みください。
{netabare}
通称「ゆかり法」は、人間の遺伝子情報、生育歴など、ありとあらゆる個人の情報をスパコンに入力し、(「京」に似た緑色の大型コンピューターが一瞬出てきたので、スパコンでやってると推測)、これをもとに、満16歳以上は、結婚相手として最もふさわしい相手が誰であるかを国家が決めてしまうという国の管理システム。
ですが、馬鹿らしいと一蹴できない部分があります。
幾つか感じた点を、述べてみたいと思います。
1.いわゆる「遺伝子決定論」
たとえば、数学的能力とかスポーツ能力などは、遺伝子によって8割程度が生まれながらにして決定しています。病気もそうです。一部の病気は100%遺伝によります。
性格や気質も遺伝子によって決まっているとか。
もちろん、後天的要素も含まれるため、性格は遺伝子決定論だけではすまされない問題です。
作品中に、「好きってなに?」という言葉が何回か出てきますが、
この問題を考えることがこの作品の命題であるはずです。
「人が誰かを好きになるのはなぜ?」
「どうしてその人でないといけないくらい好きになるんだろう?」
というのがこの作品のテーマだと思います。
誰かが誰かに会う。なぜか好きになる。
どうしてでしょう。
a. 好みの容姿や体格。
b. 性格・気質や言動・行動。
c. 趣味や嗜好性向
d. なぜだか分からないけど惹かれてしまう不明部分。
a,b,cは、遺伝子情報プラス生育環境等の情報をスパコンに入力して演算すれば、かなり相性の良いマッチングカップルが誕生するかもしれません。周囲の人間がお見合い相手として紹介してくれるよりも、相性は抜群かもしれません。
要するに、超少子化基本対策法というのは、非常に優れた仲人システムと考えても良いわけです。
問題は、"d"です。
"d"だけはスパコンでも分かりません。
つまり、遺伝子決定論が破綻する部分です。
誰もが思うように、人間は遺伝子で全てが決定づけられているわけではないありません。
「あいまいさ」というファジーな部分は、スパコンでは演算しずらい箇所です。
上記を踏まえると、
2. 高崎美咲と真田りりかの違いとは?
高崎は、1の"d"のドストライク。a-cは根島の目からみた主観。
真田は、AIが客観的にa-cの相性は最善と判断したが"d"を持っていない。
ところが、根島が真田と見合いし、実際に接してみると、確かにa-cは自分に合っているし、高崎との恋を応援してくれる真田の性格の良さから、なんとなく根島の中に真田への情が生じてしまう。
つまり、真田にも"d"の「なんとなく」が生じてきてしまうのです。
ここから話がもつれてはじめてしまう。
何とも難しい三角関係になってしまったものです。
この三角関係は、人工知能であるAIが図らずも生み出したものです。
原作者がこの問題をどう取り扱うのか、非常に興味があります。
3. 高崎が隠している秘密とは何か?(私の推測)
(原作を読んでいる方で、この部分の推測が当っていたら教えて下さるとうれしいです)
初めて公園で根島が高崎に告白したあと、スマホに厚生省から結婚相手として高崎の名前が通知されます。通常、文書通知のあと、スマホに通知される仕組みのようですから、順番が狂っています。
高崎と表示されたあと、電波障害のような感じですぐに消えてしまう。
厚生省の矢嶋が「何者かが政府通知システムに進入した形跡がある」と根島に直接伝えていますよね。
∴ これが高崎の秘密です。依頼者が高崎、侵入者は五十嵐柊
五十嵐は、中学生のとき高崎が嫌いだったが、行事で写された根島の写真を購入する高崎を知る。この時の高崎の一途な想いを知り、五十嵐は高崎を大切な友達だと考えるようになり、高崎の恋の応援をするようになります。
高崎は、五十嵐だけをファーストネームで呼んでいる点も注目に値します。
五十嵐は、ゆかり法創設者の孫にあたり、スパコンのシステムに就職するらしい。しかも、スパコンのシステムを操作?している部分もありました。
僕の推測:
高崎は五十嵐に「自分を通知相手にしてくれないか」と五十嵐に頼み込んだのではないか?
これなら、初めて公園であったとき、なぜ高崎が5時間以上遅れてきたのかも理解できます。
「根島が自分に告白しようとしている」と知った高崎は、このチャンスを逃したら二人が結ばれることはないと感じた。しかし、高崎も根島も気持ちを素直に告白できるような性格ではない。でも、通知がくれば、お互いに「実は前からずっと好きでした」で全て解決する。
根島から「今日、6時に公園でいつまでも待ってる」と言われたあと、高崎は五十嵐に連絡を取り、「私を政府からの通知相手として根島君のスマホに送信してほしい」と言った。
それから五十嵐はシステムに入り込む。準備ができた段階で、高崎に「やったよ」と連絡を入れ、その連絡を受けた高崎は慌てて公園に現われた。これが大幅に遅れた原因じゃないでしょうか?
ところが、五十嵐は高校生であり、真田から高崎への完全な書き換えを行なうだけの技術がなかった。
というのが僕の推論。
そして、再度、第一話を鑑賞すると、
根島と同じクラスの男子が、
「高崎さんって、4月に16歳になったのに、まだ政府から通知がないんだってさ」という場面があります。
これも、高崎から五十嵐への依頼によるものと推測されます。
エンディング・アニメーションで高崎が口に×点してるのは、人は機械よりずる賢いですよってことかも。
{/netabare}
花澤さんの演技良かったですね。
彼女にこの手のヒロインやられたら、観てる男性はやられちゃいます。
しかし後半、牧野由依さん演じる真田に心を持って行かれる僕がいました。
すばらしいお二人の演技でした。
EDは良かったです。
伊藤依織子さんが作画監督すると、女子キャラは魅力的だなといつも思います。
最近、ツイッターが止まっていましたので心配していましたが、こうしてご活躍されているので安心しました。
(第3話のイラスト、良かったです!)