Progress さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
真剣と書いてマジ
繊細なストーリー、といいますか、「感情の機微を描く」というのが根本にありますね。
(インタビューなどで「感情の機微」というのが多用されていますので、
それについて、製作者側の狙いを考えてみます。)
私達視聴者が一度は通った高校3年生の後期という状況の中で、5人の恋愛模様を通して描く「感情の機微」。
「感情の機微」というのは具体的には何者でしょうか?感情の変化かな?
小宮が泉をデートに誘ってもいいか、夏目に許可を求めたら
「ダメ・・・」と返って来た、この作品の名シーンで考えてみますか。
機微というほど繊細かというと、このシーン、この話数で夏目の恋愛ベクトルが
泉に向くわけですから、大きな心情の変化がありました。
しかし、大きなといっても、大雑把な、という事ではないですよね。
心情の変化に至るまでを丁寧に描き出していると思います。
まず、夏目は中学から今まで相馬の事を好きだと周りには言ってきたのですが、
相馬の葉月に対する恋心を知り、一歩引いてしまいます。
何故か?
夏目は相馬を「何となく」好きだったのです。
葉月に対しアプローチを仕掛け続ける相馬や、
相馬の告白に対し、真剣に考えて返事をしたいという相談をしてくる葉月を見て、
夏目は自分の相馬への思い、恋というのは「なんとなく」な所をどこか感じていたのではないでしょうか。
もしかしたら、夏目は相馬に対し行動にも移せないものだったのではないでしょうか?
(消しゴムを返す事すらようやくだったやり取りからも、全くもって行動できていなかった?)
真剣に恋や相手に向き合う相馬、葉月を見て自分の恋の曖昧さに気付いたからこそ、二人の関係を応援、もしくは自分の中学生時代の恋に諦めがつくようになったのかもしれません。
話を戻しましょう。夏目はセンター入試の後、駅に来てくれた泉の事を思い出します。
中学時代、泉は夏目の事を良く手伝ってくれました。
「肝心なことはなにもいわないくせに・・・」という夏目のぼやきからも、
泉が夏目の事を好きなことは何となく気付いていたんでしょうね。
気付いていて、気付いていないように振舞った。
それは夏目が、泉へ恋心は抱いていなかったからでしょうか?
自分の事を見ていてくれていた泉を思い出し、センターの一件で気持ちが泉へ傾く夏目。
恋のライバルの小宮に「ダメ」と言ってしまう部分で、
引き下がれた相馬への恋とは違い、泉への恋は譲れない物があるという、
視聴者への分かりやすい提示ですね。
泉が夏目にとって「譲れない存在」になることが、
今まで泉の片思いを見て来た視聴者にとって達成感的な感情や、夏目の真剣さを受け取るかもしれません。
夏目が電車の中で泉について思い出したときは、視聴者にまだ夏目が泉を好きかはっきりと提示されていないのですが、
(気持ちが傾きかけてるという感じはするのですが。いわゆる「匂わせる、予感させる」、というやつかな)
その後の「ダメ」のなかに存在する「譲れない」という要素がはっきりとした泉への恋心を示してくれます。
感情の提示の仕方で、一方通行か双方向の恋愛かを提示してくる。
少しずつ変化していく恋心を丁寧に描くことが大きな感動を生んでくれる。
「もしかして好きなのかな?」という予感を感じさせるシーンを提示し、
「ダメってやっぱり好きなのか!」という予感が確信に変わるシーンを後に入れる。
この細やかな感情の提示の仕方が、感情の機微を描く上で最大限効果を発揮しましたね。
結局「感情の機微」って何?って聞かれそうですが、感情の細かい変化、ですかね?
夏目が泉への恋愛感情をはっきり示すこの回が、夏目の細かい変化を丁寧に描き、ダイナミックに描き出しているか、
それを感じられたら幸せなんじゃないかと思います。
正直、泉が夏目にマジになって「関係ないはないだろ!」とか、
泉のスマフォをみて「完璧本気じゃん!」と言う夏目、
葉月に対して「私ちゃんと好きな人いるから」などの話を
公式より提示された「なんとなく」と、真剣(マジ)という共通項を用いて、
全体を通して語るべきですが、
あまりに各話で語り落としたくない部分が多いので、
ターニングポイントである「ダメ・・・」の回を中心に書かせていただきました。
このターニングポイント以降、
泉よりも夏目視点のほうが重要になってきているのも面白い点ではありますね。