Progress さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人間の営みの残滓
どうしてこんなにレビューが遅くなったかというと、
この作品のどこに魅力を感じていたか、
整理出来ていませんでした。
チト(ちーちゃん)とユーリは荒廃した文明都市をめぐります。
この都市には人がいない。
でも物はあります。人が使っていた物。
人が使っていた物には役割があります。
それをチトやユーリは使い道を考える。
これは何だろう?食べられるかな?何味だろう?
何に使っていた場所だろう?これを使っていた人たちはどこに行ったのかな?
疑問が沸く。
チト達は考えながら生きます。生きるだけでは暇なので、色んな所を回ります。
色んな物を知り、人の営みを触れる。
そしてこの作品の魅力は「語られない情報」
第三者が誰も「これは○○するものだよ」なんて説明はしない。
だからこそモノは魅力を持ちます。
登場人物に対して情報を持っているのは
カロリーメイト。
でもカロリーメイトは視聴者はどんなものかしってる。
登場人物と視聴者の情報の受け取ったときの差。
チョコ味って何?
チョコはチョコだよと視聴者は思うけど、登場人物には何かわからない。
そういった情報の差で登場人物の反応を楽しんだり。
墓でも、謎のオブジェでも、謎の音楽でも、彼らにとっては何かわからない。
視聴者にもわからない情報がある。
都市の事、住んでいた人達の事、よくわからないモノ等、情報は氾濫します。
そういった情報を人に教えられるのではなく、
チト達が考えることで役割を知る。
その過程に物の中にある情報を噛み砕いて、
視聴者もチト達も、荒廃した都市を見ることを、楽しんでいます。
物の役割を考えることで、いなくなってしまった人間達の営みを考えることになり、
それは、もう出会うことのない人を思う事、
「これを使っていた人たちも、こんな気持ちだったのかな」と
時間的距離が遠く離れた人達の思いを考えるユーリ達が、
視聴者側から見れば、郷愁的で、とても優しく感じました。
荒廃した世界で、
もう会えない人達の生活の中に潜む思いや感情の残滓を感じること、
そのすべての感情の全てさえ観測者がいることで成り立つのであり、
観測者は二人だけ、二人が消えたら人間を思う人はもういない、
世界が眠りにつく前の最後の小さなお祭りかも知れないと、少しずつ感じ取る、
そんな終末感によって、何気ない人間の営みが強調された作品でした。
かつてそこにあった喧騒が無くなると、どうしてこんなに静かなのだろう。