因果 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
色んな意味で革新的
2期が始まるということでそろそろ手を付けなきゃなと思い視聴。
おおまかなあらすじとしては、クソ田舎から治安最悪の都市部に単身移住した主人公が、謎の組織の構成員となって活躍する~という感じ。ちなみに治安最悪というのは足立区とか松戸市とか北九州市みたいなそんな可愛いものではなくて、かのデトロイトを更に5億倍悪化させたような、マジで「俺たちに明日はない」状態の街。なんでこんなところに人が住んでいるのかがそもそも疑問ではある。
とまぁ割とありがちなストーリー構成ではあるのだが、そんな中で私が言及したいのは、このアニメの「境界のなさ」である。
普通アニメには境界が存在する。「境界が存在する」とはどういうことか?それは、普段オタクが使用する言葉で言うなら、「ギャグ(あるいは日常)パート」と「シリアスパート」が分けられている、ということである。
そしてこの境界が存在することによって、アニメには「メリハリがつく」のである。
卑近な例が「Angel Beats!」だろう。このアニメではまさに境界の存在が作品の価値を規定していると言っても過言ではない。序盤ではそりゃもうめくるめくギャグ、ギャグ、ギャグの嵐が吹き荒れてお祭り騒ぎという具合だったが、中盤からはその雰囲気が一変し、登場人物が次々に成仏していくのを「お前・・・良い奴だったな」と感傷的に見送る感動劇が展開される。そこには一切のギャグ要素もないので、視聴者はただひたすらに感動することに徹することができる。「AB!」はそういったメリハリがついているからこそオタク的市民権を獲得しているのではないかと思う。
ところがその一方で「血界」にはそんな境界がそもそも存在しない。ギャグパートとシリアスパートが完全に融和しきっているのだ。
割とガチで世界を破壊しに来る敵が襲来中でもレオとザップのバカ漫才は続くし、最終回のラスト数分でも容赦なくギャグの雨あられが降り注いでくる。
普通のアニメでこんなことをされたら「大事なところで変な茶々入れんなよ!」と非難轟々であるだろうが、「血界」の場合はむしろそれがプラス方向に作用している。というのも、このアニメの世界観では、―レオの受け売りを引用するならば―「異常が日常」だからである。
この街、ヘルサレムズ・ロットでは、血で血を洗うような抗争や、猟奇以外の何物でもない殺人事件といった普通で考えたら「異常」でしかないシリアスイベントも「日常」の範疇内に過ぎないのだ。だから、ギャグ(日常)とシリアスが融和していても何の違和感もないし、それどころか、二者が混ざっていればいるほど「血界」っぽさは強くなっていくわけだ。
そういうわけで、「血界」は、唯一無二の世界観を構築することで一般的なアニメのパラダイムを見事に払拭したわけである。これを革新的と言わずして何と言おうか。見ていて本当に唖然としてしまった。
また、革新的なのは内容ばかりではない。やはり「血界」といえばあのED動画である。本編の中での煩わしい関係は全部忘れて敵も味方も関係なく手と手を取り合って踊り狂う様子はまさに「血界」らしい。見ていてこんなに楽しい気分になるEDは他に類を見ない。
このアニメを見るか迷っている方はとりあえずこのED動画だけでも見て欲しい。楽しいと思えたなら、あなたはきっとこのアニメの本編も楽しむことができると思う。
さて2期も放送開始ということで、まだまだ「血界」熱は冷めることがなさそうだ。さぁ、あなたもこの波に便乗してみないか?