aaa6841 さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
おっぱい
例えば、誰かがヒグマに向かって「あれは熊だ!」と言ったとして、それが正しいかどうかを考えるとき、それを言った本人の人間性を鑑みて判定するだろうか。
もしくは「乱暴な物言いだな。さてはこいつ、いい加減なことを言ってるな」と思うだろうか。
いや思わない。
ここで重要なのは「何を」言ったのかであって、「誰が」言ったのか、「どのように」言ったのかは問題にならない。
何故ならそこに解釈の余地がないからである。
「いや、あれはくまモンだ!」とはならない(たぶん)
例えば、誰かが何かに向かって「お!パイだ」と言ったとして、それがパイ生地のことを言っているのかおっぱいのことを言っているのかを考えるとき、「何を」言ったかに着目するだけでは正確な判断を下すことはできない。
おっぱいだと言った人間はお菓子好きな奴なのか。あるいは人体に詳しい方なのか。
冗談みたいにおっぱいだと言ったのか、何となくおっぱいだと言ったのか。
場合によっては「いつ」言ったのか、「どこで」言ったのか、「なぜ」言ったのかを考慮しなければ答え(おっぱい)に辿り着けないかもしれない。
つまり、人に何かを伝えるとき、「何を言うか」だけに囚われていては満足な結果を得ることはできず、その状況や物の言い方次第で相手に与える印象は大きく変わるということだ。
とりわけその言動が面白さを追求したものであるなら尚の事、状況やタイミングを含めた「どのように言うか」という側面がより重要になり、何を言うかなんて些細な問題にすぎない。
やたらと「おっぱい」などという単語を列挙していたとて、「おっぱい」自体にさして意味はないのだ。
それが、私がこのアニメから得た教訓である。
例えば、頭のおかしい魔法使いやドMクルセイダーが主人公に声をかけるとき、主人公の名前(カズマ)を連呼したとする。
それに対して主人公が「はいカズマです」などと自己紹介のような返事をしたとしても、その自己紹介自体が重要なのではない。
その言い方である。
そのときの声の小ささ。そこから伝わる冷静さ。滑稽に振る舞えるその知的さ。諭すように語りかけるその器のデカさ。ちょっと台詞がかぶりながらも主張しすぎない奥ゆかしさ。
それら、後を引く味わい深さに加え、今のはギャグですよと言わんばかりのツッコミを入れるようなこともなく、さらりと流して会話を進めていくキレの良さと、次のギャグへ移行するための前フリが既に始まっているという手際の良さ。
誰かがボケたからと言って常に流れを止める必要はないし、ツッコミだからと言っていつもハイテンションで叫ぶ必要はないのである。
そんな緩急の付け方が気持ちよくて、楽しい。
何を言うかではなく、どのように言うか。それが重要である。
故に「おっぱい」自体にさして意味はないのだ。なんだったらこのレビューすら大した意味はない。
それが、私がこのアニメから得た教訓である。