takumi@ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
少女期にしか成し得ない独特の世界観がお見事
新房昭之監督、脚本 虚淵玄、制作 シャフト、音楽 梶浦由記、
という豪華な顔ぶれで制作された全12話、2011年の作品。
誰もが書かれているように、この作品タイトルとフォント、
少女達のキャラデザからは、到底あのような展開は想像できず、
最初は観る気が起きなかったのだけれど、4話まで進んだあたりで
周囲がざわめき始めて強く勧められたため、
半ば無理やり観せられたような感じでの視聴スタートだった。
なるほど、3話の急展開でおぉ~~そうきたかと。
オリジナル作品であるため、次回の展開を予想することしかできなかったというのも
この作品の人気が出た鍵だったんじゃないかと今は思う。
{netabare}ただ、マスコット的なキャラデザだったキュウベエだけは登場した当初から、
笑顔ひとつ見せず無表情で、魔法少女になるのに「契約」という言葉を使うところに、
こいつは怪しいぞと睨んでいた。だいたい「契約」なんて言葉からは
悪魔しか浮かばないからね(笑)
で、魔法少女になるには、少女たちの願いがまず契約の条件で
闘えば闘うほど生じる絶望感をキュウベエに仕組まれていることや、
最大の憎悪を生じさせるには思春期の少女を使うのが一番という思想、
その憎悪で濁っていくソウルジェムが命=魂そのものだったり、
戦いの果ては魔女という部分には背筋も凍りつきそうだが、
現実的に考えていくと、デティールこそ違えど、
少女達の思考回路や考え方はとてもリアルに描かれているし、
魔女=大人として見た場合、いろいろな矛盾もすんなり納得できる。
でも、まどかの活躍のおかげで、少女達の憎悪や絶望を必要としない方法で
キュウベエと共存できていたラストには心底ホッとした。{/netabare}
そしてその光景に、あぁそうか!と。
この話は、今現在によくある魔法少女たちの原点というか、
今の魔法少女のような戦闘意義やスタイルになる前の
元祖 魔法少女たちのお話・・とも思えて。
そう考えるとちょっと面白い気がしてくる。
{netabare}また、タイトルは「まどか」がつくけれども、
この物語・・ほんとうは「ほむら」のお話だったなと。
ほむら目線で話を追っていけば、素直にさっさと理解できてしまうから、
それじゃ面白みもないので、彼女から視点をまどかにそらせておく
いわばミスリードだったようだ。
もちろん、まどかが最後に成し遂げたことを思えば
彼女が主人公であることには違いないのだけどね。{/netabare}
手法はそれだけでなく、映像的にも斬新な試みがあちこちに見られた。
例えば魔女との激しいバトルシーン。
コラージュを多用し、色彩も背景も、それぞれの魔女にぴったりな雰囲気で
ダークメルヘンと呼びたくなるような悪夢さながらの不気味さがあり、
そこに流れる梶浦由記さんの音楽も、観ててすごく楽しめた。
ただ、過酷な現実を目の当たりにしてからの彼女達の中、特にさやかは
{netabare} 迷うことなく好きな人を救うために魔法少女になったにも関わらず、
その恋が報われなかったことを思うと、まるで人魚姫のようで{/netabare}不憫でならない。
逆に、杏子の生き様やその潔さには好感が持てた。
ワルプルギスの夜、{netabare}まどかがついに魔法少女になる決心をして、
その代償となる彼女の願いが次々に叶っていくシーンには、{/netabare}
素直に感動したものの、冷静になってみるとちょっとご都合主義で
一抹の疑問と不満が残っていたのも事実。
なぜなら、けっこう深くて良い言葉をボソっと伝える、まどかの母親。
あの中で大人は彼女とまどかの担任だけであり。
この2人の会話から、これまで数々の絶望や憎悪を乗り越えた感じがあって、
魔法少女にも魔女にもなることなく生きてきた大人の
せっかくのこういう部分を生かさないのはもったいないなと。
それだけに、{netabare} まどかの存在が彼女の家族の記憶から消えてしまったラストは
あまりにもあっけなさ過ぎて、{/netabare}
どうしても納得いかなかったというのが唯一、不満な点かも。
とはいえ、やはり観るものを充分に惹き込ませるシナリオの魅力と演出は
とても素晴らしかったと思うし、大きな反響を呼ぶことになった企画は
充分に大成功だったと言えるのではないだろうか。