四文字屋 さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
少女二人きりが生き残った、人類が殆ど滅亡した後の世界は荒涼として寒々として、二人きりしかいない「生き残り仲間」なのに保存食一個で平然と銃を突きつけるさまにゾッとさせられて
これは、1話目から、凄くいい入り方だった。
暗い地下の底から、二人の少女が、
キャタピラ付きの、おそらくは廃棄された軍用車での脱出行から
ストーリーは始まる。
{netabare}ようやく外の世界にたどり着いたときに、
夜だったにも係らず、思わず「明るいね~」と語り合う二人。
これは暗い世界の話だ、と、明確に認識させられる。
キャラクターが世界とは不均衡に絵本的なのが、
メイドインアビスのようで、
これからの二人の、終末旅行の不穏を暗示しているとしか思えない。
ある意味すごく、アニメ耐性を試される作り方。{/netabare}
世界観が一発で解るように、すべてがゆっくりと提示されるのが良。
誰も生き残っていないのに、
戦争で使われたままの弾薬やら兵器やらは溢れかえっている、
どこまでも静かな、雪の降るダイイングアース的世界。
もう30年以上も前になるが、
北村想の演劇作品「寿歌」を観たときに、
激しく感情の底の方を揺さぶられたことを思い出してしまった。
「寿歌」もやはり、核戦争で滅んだ世界に生き残った二人きりの男女が、
リヤカー一台に生活雑貨を積んで、生きるためにあてもなく彷徨う話で、
終劇のときの、
核の灰が激しく降りしきる空を見上げ、
「わあ。雪だ。綺麗!」と口走る少女の無垢に、
万感の想いを禁じえなかったのを、
心ならずも思い出し、この作品の絵に重ねて見ながら震えを感じてしまった。
「寿歌」の終末世界には何もない。
正確には、キリストの幻想が、人の姿をして二人の許に訪れるが、
それ以外、何も事件は起こらない。
{netabare}そして、少女終末旅行では、
移動を続けて行かなければ軍用保存食は手に入らないし、
銃器や爆薬は幾らでも転がっているが生きる糧にはならない。
生活力はあるが、武器が使えないチトと、
何もできず、腹ばかり減らしているのに、銃器の扱いには長けているユーリ。
保存食の余り1個を手に入れるために、平気で銃を突きつけるユーリと、そんな目に会っても、「私も武器持った方がいいのかなあ」とのんびり保存食を奪われるチト。
チトを撃ってしまえば、生活力のないユーリは明日から立ち行かなくなってしまうのに、
ユーリにとっては、明日の安定より、今のこの瞬間の食餌が大事なんだ、という切ない事実。
この二人きりでの道行きは、
二人だからこその、重さを感じさせてくれる。{/netabare}
良質のダークファンタジーとして、
2話以降も刮目して待ちます。
第1話でダークファンタジーと見誤ってしまったが、
実は日常系ダイイングアースファンタジーだった。
で、第5話。
あまりに素晴らしかったので、ひとこと、加筆。
第5話は、「住居」、「昼寝」、「雨音」の、ショートストーリー三部構成だったのだが、
{netabare}この「雨音」の章が、前の2章を受けた、詩情溢れる圧巻のエピソードとなっていて、
二人きりの、生き残り続けるための普段の移動生活が、搭乗する軍用車のエンジン音とキャタピラの音以外、如何に何も音のない生活か、
そして何故に二人きりで、たいして意味もない会話をし続ける必要があるのかが、見事に描き切られている。
そんな二人にとって、
未知だった「音楽」が生まれ、奏でられるその瞬間に、
一緒に立ち会えたのが、視聴しているだけなのに、
奇跡を同時体験してしまったかのようで。
普通なら、悲しいとか嬉しいとかいった、感情の振幅で泣きたくなるものなのに、
不覚にも、訳が解らないままに、気づいたら泣いてしまっていた。
TVではなかなか実現の難しそうな、一見地味なこの作品の制作に携わっている関係者すべてに感謝したい。{/netabare}
6話について
{netabare}5話ではワケわからず気がついたら泣いてしまっていた、という貴重な体験をしましたが、6話で、チトが、車輌の修理に成功したとき、目に涙浮かべて「これでまだ生きられる」と呟いたとき、また、グッと来ちゃいました。この二人は、ただ日々を生きているのではなく、毎日サバイバルし続けているんだ、と。
日常系を仮装してはいるけれど、これは絶望の淵で生き残り続ける物語なのだと、あらためて作品の世界観の重さに感じ入った瞬間でした。{/netabare}
10話まで観て
{netabare}さて、この静謐で美しい物語も、いよいよ大詰めが近い。
遠い過去の戦争のことも、チトとユーリには理解することのかなわない、高度な産業技術のことも、すべて謎のままにストーリーは推移し続けている。
そして、ここに至って、謎の生物が出現した。
受信機(←ラジオ?)を通じて発声する不思議な生きもの。
これは、人工的な生命体なのか。それとも、もっと別の何かなのか?
それが、何かの符牒のように、過去に滅亡した人類の信仰対象だったらしい、不思議な石像と、奇妙に似てみえるのは、何かの意味をもっているのだろうか?{/netabare}
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