「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ Ⅱ(TVアニメ動画)」

総合得点
69.1
感想・評価
480
棚に入れた
1837
ランキング
1906
★★★★☆ 3.6 (480)
物語
3.4
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

若さと勢いだけじゃ、どうにもならない。

アニメーション制作:サンライズ
2016年10月2日 - 2017年4月2日に放映された全25話のTVアニメ。

監督:長井龍雪 シリーズ構成:岡田麿里
「あの花」コンビが作る新しいガンダムの後編。

【概要/あらすじ】

火星独立運動の中心人物、クーデリア・藍那・バーンスタイン。彼女の地球への護送任務の依頼から始まり、
それを阻もうとする、地球を中心とした世界の軍事力の担い手である治安維持組織ギャラルホルンの襲撃。
依頼された民間警備会社クリュセ・ガード・セキュリティの大人たちは逃亡。
大人たちに虐げられて生命を軽んじられていた少年たちは、ガンダム・バルバトスでギャラルホルンの部隊を倒し、
更にはクーデターを起こして会社を乗っ取り、新リーダーをオルガ・イツカとし組織名称を鉄華団と改めた。

その後に、度重なる戦闘。オルガは、気のいい男でタービンズのリーダーの名瀬が兄貴分になったり、
宇宙で仕事をしていく上でタービンズの親筋に当たる893な大企業テイワズの後ろ盾を得るなどの様々な出会い。
そして、数度の仲間の犠牲。主人公である三日月・オーガスが操縦するガンダム・バルバトスなどの活躍で、
ギャラルホルンの権威が失墜したことによって物語は一旦幕を下ろした。
ギャラルホルン内では高い地位にあり、鉄華団と手を組んだマクギリス・ファリドの野心を残して。

そして、2年後。まっとうな仕事で民間企業として大きく成長して順調な鉄華団。

ギャラルホルンのアリアンロッド総司令官であるラスタル・エリオンという人物がいた。
彼はマクギリスに対して危ないものを感じていて疑念を抱いている。
マクギリスは実際に、彼を慕う者を裏切り何度も死に追いやってきた。彼には、そうまでして叶えたい目的があるという。
大規模な紛争はないものの、ギャラルホルンの影響力低下によって治安が悪化している時代。
水面下では次なる戦いの火種が燻りつつあった。

【感想】

ネットでの評価は至極ボロカスで玩具にされつつある2期ではある。
岡田麿里がシリーズ構成なので若者のライブ感を大事にしている。
感情のままに動いて駆け抜け続けていった若者たち“鉄華団”は苦境に追い詰められて後戻りできなくなるのだが。

軍記モノ視点で言えば、主人公側が失敗し追い詰められていく一点に関しては問題は存在しないと思う。
三国志演義で言えば、蜀漢は孫呉との外交破綻・領土紛争から陰りを見せ始め、
劉備三兄弟の全員が別々の場所で望まぬ形での死を迎え、劉備は孔明に後を託して白帝城で没する。

日本史で見ると、旭将軍・木曽義仲は戦は強いのであるが京に入った後は失敗を繰り返し、
宇治川の戦いで範頼・義経に敗れて六条河原でさらし首。
平家を滅ぼした源氏の英雄である源義経は、兄・頼朝との関係が悪化して逃亡した先の平泉で自害をし、
源氏の棟梁である源頼朝は落馬が原因で間もなく命を落とした。

弟・義経を屠って鎌倉幕府を創った頼朝の血流の将軍は三代目の実朝の暗殺で途絶え、
最終的な勝者は幕府内の権力争いを勝ち抜き承久の乱で朝廷の軍を倒し、
執権政治から始まり、幕府の最高権力者としての地位を代々担ってきた北条氏なのである。

歴史の中で様々な陣営の利害と思惑が絡み合い、戦闘状態が勃発する。
戦乱は必ずしも主人公無双の舞台ではない。主人公無双が見たければ、なろう小説でも読んでいれば良い。
これは、時代の流れの中で叫び一瞬の輝きを放ち、歴史の奔流の中でかき消されていった少年たちの物語なのである。

しかしながら、物語を動かすために意図的に登場人物の頭を悪くしているのも事実であり、突っ込まれどころだ。

若者たちの集団“鉄華団”の連中は学が無い。学が無いからこそストレートに彼らは感情だけで動く。
若者の感情をいくら爆発させ蛮勇を奮ったところで、大人の権力や理屈の前では翻弄されていく。

鉄華団の少年たちは教育が施されずに使い捨ての労働力のまま成長してしまった孤児たちであり、
学ぶ機会を持たなかったために元々が字を読めなくて腕っ節以外に何もない、感情のままに生きてる連中。
恵まれていて義務教育がある日本と、このアニメでの火星とでは住む世界が違うということを忘れてはいけない。

主人公の三日月の兄貴分で鉄華団の団長とメインキャラであるオルガ・イツカも例外ではない。
現場をまとめ上げるリーダーシップには十分はあり、その一点では無能ではないのだが、
学の無い割には頑張っているが、彼の能力以上の立場と目標を手に入れてしまったのが運の尽きか?
カッコつけてはいるがオルガの情けない迷走と鉄華団の破滅への道が2期では綴られていく。

現場の叩き上げ偏重主義である鉄華団は少年たちの横のつながりの組織であり、
知識というものを理解できない連中が大半であり、知恵があろうとも大人を信用しない。
鉄華団に在籍する数少ない大人は、自分らの専門分野の業務を遂行するだけで子供のやることには口出ししない。
そのうえで子供たちはオルガの命令がルールであり、自分らの狭い価値観の中だけでオラついた生き方をしている。
その前提の上に地道にコツコツを捨ててマクギリスの誘いという博打に乗ってしまったオルガの舵取りの拙さがある。

特にオルガの主体性の無さと変心ぶりは脚本の都合であり、キャラが動いているのではなく、
脚本家に動かされているとか言われたりしている。
自分から見たら、キャパ以上の状況を背負ってしまいオルガの化けの皮が剥がれただけにも見えるのだが。

高度な判断力を有する事態に相談できる人材がいなかったのがオルガと鉄華団の不幸か?
だが、1期でビスケットが生きてたときですらイケイケドンドンで慎重論が通らなかったので、どうもこうもしない。
仲間への信頼におんぶに抱っこで、失敗から教訓を得ないのが鉄華団の弱点なのではある。

結束は堅固で戦闘力は高いものの、行き当たりばったりの脳筋武装集団でしかない鉄華団。
組織に不足している要素があれば、それを可能にする能力のある人材を登用するのが基本。
だがしかし、鉄華団は怪我人が出る武装集団であるのに不自然にも医療スタッフが存在しないし、
中長期的な視点を持った参謀的なアドバイザーを雇うなど組織の弱点を補おうともせずに、
自分だけの判断に付き従い何も変わらない彼らのままであり続けて鉄華団は消滅への道を歩み続けていく。
コンセプトは解らないでもないが、見せ方に若干の難があったのは事実かも知れない。
事業拡大には事務方の仕事も増えていくのだが、適切な増員をせずに個人にオーバーワークを強いてもいたし。

山場を作るためにマフィア映画の如くにバンバンバンと死が続いていく。
それは良いのだが他はまだしも、『キボウノハナー』の48話。これは擁護できない!
止血して輸血すれば死なずに済んだ。結果が同じでも生きるために最善を尽くしたのであればまだしも、
銃で撃たれた後、手当せずにカッコつけて血塗れでポエムを語り続けて逝ってしまうのは伝説になった。

他にはマクギリスの目的がガバガバであり、それを成し遂げれば決着だと彼は思っていたのだが、
思い通りに行かずに狂言回しとしてシナリオの都合で踊らされるピエロになってしまった。

と数々の描写の拙さから、不遇から這い上がろうとした少年たちの青春とハードな戦場を扱ったアニメから、
残念ながらネタアニメへと評価が変わってしまった作品ではある。
他にもつまらぬヤクザの嫉妬や、バカな御曹司の猪突がトリガーとなって歴史が動くというのだから、
戦争はマトモじゃない!バカな人間の感情で起きるものだと作品を通して揶揄したかったのだろうか?

ちっぽけなものがイチイチ大事になっていく展開に、なんとなしにスケール感に欠ける印象を持ってしまう物語であった。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2017/10/10
閲覧 : 352
サンキュー:

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