Progress さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
政府通知の相手は運命の人?
この作品のキャッチコピーは「恋愛禁止の世界で、僕たちは「恋」を通知される。」ですか。
自由恋愛を禁止された世界で政府の決めたお相手と恋愛して結婚するという世界です。
お相手を紹介するのはいいとして、それを強制して、自由恋愛を禁止にしてしまうってそれなんてディストピア?何があったし日本という感じですが…
さて、主人公の根島 由佳吏が初恋の相手である高崎 美咲と政府通知のお相手の真田 莉々奈、2ヒロインのゆれる恋心を描いた素晴らしい作品です。
終盤にあっさり真田ちゃんが根島君を諦めてしまうのは「もっと盛り上がれるだろ~」と尺の長さや原作未完結である事を嘆きましたが…
高崎美咲と根島の恋が作中の中でロマンティックなものだとすれば、真田莉々奈と根島の出会いとはなんだったのかという事ですよね。政府通知で「相性がいいから」お互いに惹かれあってしまうってなんか残酷じゃないですか?
本人達の意思が無関係な所で、それこそDNAで相性が決まってて、政府が紹介してくれる、全て規定路線。思い人に感じた恋心が本人の意思は関係ないってつらいですよ。なんだろうこのつらさ?つまらなさっていったほうがいいのかな?
そういう残酷さ、つまらなさが存在するのに本人達は出会って付き合ってしまえば幸せ。書いててなんだか怖いですよ。自分の相手は自分の意思で決めたいと聡明な性格である真田は思ったんじゃないですか?
真田が、高崎と根島の恋を「素敵だと思った」と言うのは、政府通知のあずかり知らぬ不確定要素の中で生まれた本当の運命を二人の恋に感じたからじゃないでしょうか。
「これって運命の人・・・?」みたいに唐突に故意に落ちる話がありますが、この作品は、二人の意思が介在しない運命に、なんとつまらないことかと訴えているようにも思える、こう振り返っています。
この作品の一つの魅力としては2ヒロインの性格の良さ。
高崎美咲は「片思い」による恋愛感情の滞留を描くことで、ごく普通の恋をしてしまったにもかかわらず、世間のシステムによってその恋が叶わなくなろうしてるその受難の日々での高崎の恋心と恋模様を描くことで、ロマンティックな物語になったのだと思います。
真田莉々奈はその性格の良さを前面に出して、根島の恋をサポートしようとしつつ、政府通知の相手である根島に恋心のような物を抱かざるを得ない。その献身的な性格にはとても多くの共感を呼んだと思います。ですが、凄く悲しい物語なのはこちらの方ではないでしょうか?高崎は偶然の中で恋に落ちて「偶然の中の素敵さ」を偶然獲得できた。真田は、偶然もなく、運命の出会いもなく、そこに、ロマンティックが欠けたまま「運命の相手」と出会わされてしまった。
出会ってなかったら真田は昔のままの真面目すぎる性格のままだったのでしょうが、彼女の恋は高崎の恋に比べてあまりにも勝ち目を「持って」いなさすぎた。
聡明な真田による政府通知での恋との自らによる決別は確かに「偶然性」「理性」の勝利ではありますが、そこで犠牲になった真田の恋心に思いを馳せずに入られないんですよね。
原作未完結とのことなので、運命を「持たざる」真田さんの恋と「持ってる」高崎さんの恋、どちらが成就するか見物ではありますね。いや、政府通知で言えば二人の「持ってる」かは逆転するのですが、その逆転関係もこの作品の魅力と言えるでしょうね。
オススメ度としては1クールでは足りない作品だったと言っておきましょう。少なくともラストのオチ以外は魅力的な作品です。2期、OVAもしくは劇場版まで使いラストまで納得のいくオチを作ればよかったのではないかと。
見る価値は十分にありますよ!2017年の恋愛作品の中では筆頭候補に上がるオススメ度です!