「Just Because!(TVアニメ動画)」

総合得点
81.9
感想・評価
904
棚に入れた
3654
ランキング
391
★★★★☆ 3.7 (904)
物語
3.8
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

高三の冬……青春の消化試合に訪れるシャッターチャンス

一話感想。

{netabare}
何とも微妙な時期設定の青春アニメです。
が、私はむしろ、そこに惹かれて、
着実に冷え込んでいく現実の季節との同期も期待しつつ、
視聴を選択した作品。

高校三年も冬にもなると、部活は引退、生徒会は後輩に引き継ぎ完了。
後は受験の合否などはあるものの、今更、進路の方向性が決まっていない学生もいないだろう。
交友、交際関係の進展も、最後の夏休み辺りまでに決着していなければ、
大局が動く見込みはほぼないと思われます。

それでも尚、各々、心中には青春の残り火がグズグズと燻ってはいる様子で、
名残を惜しむような言動は垣間見え、
本作もそれを拾い集めてはみる。

だが、それで青春の劇的な瞬間が訪れる気配はない。
残り火は卒業へ向かう秩序の中、
冬の寒気に冷やされ消えていくのが道理というもの……。

ところが、そこに投げ込まれた、季節外れの男子転校生の来訪。
四年振りに神奈川へ帰還した少年というイレギュラーにより、
鎮火に向かっていた青春は俄にザワつき、波紋が広がり始める……。


初回は作画、キャラ、演技、音楽、いずれも私には凡庸に感じられ地味な滑り出し。
けれど、土壇場で蒸し返される青春という、
本作が発掘を試みていくと思われるビターな味わいは存分に感じられました。

学校や季節にイベントなど与えられなくても、光る青春の1ページはあるのかもしれない。
私も淡い期待を抱きつつ、風邪など引かぬように、しっかりと着込んで、
この妙に気になるアニメの決定的瞬間を逃さないように、
瞳のレンズを合わせ続けたいと思います。{/netabare}


全話観終わって。

期待した通り、高校卒業直前になっても尚、
モノレールの如く宙吊りになり燻っていた青春の日々を、
煙に巻くような言動の数々で活写しつつ、
漸次前進を試みた、私好みの渋い作品でした。


初回、凡庸だったと感じた諸要素のうち、
物語やキャラは、なかなか地に足が付かない高校生群像を掘り下げて、
味わい深いセリフを多数発掘する等、ジリジリと好転。

例えば、{netabare} 陽斗(はると)の「俺、やっぱり好きだわ」とか、
恵那の“告白宣言”に対する美緒の「だめ……」とか、
美緒の「私、完璧本気じゃん!」との遅延ときめき発言とか、{/netabare}
この辺りのセリフは私にとっては場外ホームラン級でした。

音楽もOP、EDの両スルメ曲の渋味が染み込んでいく内にジワジワと上昇。

ただ、作画は私の中では今一つ上がって来ませんでした。
特に表情描写が物足りなく感じました。

勿論ヤマ場ではしっかりと心情を顔に書いて来てはいますが、
底では顔面維持が精一杯と言うのは……。
脚本が丁寧に心の機微を捉えていただけに、
作画力があれば、もっと瞳で語れたはず。
という悔恨が残りました。


春の訪れが迫る中、私は本作の渋味が忘れられず、
鴨志田一氏書き下ろしの“原作小説”に手を出して余韻に浸っていました。

小説版は群像劇のうち、瑛太と美緒の心情と関係に焦点を絞った構成。
なかなか分り辛い二人の魅力に気付かされる佳作でした。

戸惑いながらも堅実に塁を進めようとする葉月や、
狼狽えて満塁の好機に凡打を重ねる陽斗や、
果敢に内角攻めを繰り返す恵那。
サブの三人に関してはアニメ視聴時も
応援したい感情も沸いて来た良キャラでした。

一方でメインの瑛太と美緒は、
ただでさえアンニュイな面が並んでいるのに、いっそう気だるげだし、
皮肉屋だしw素直じゃないしw
可愛くないなぁ~と思うことも多々ありました。

ですが、小説で、この二人が意外と早く、
自身に燻る本当の気持ちを意識し始めていて、
それと折り合いを付けるため、
遠回りしたり、憎まれ口を叩いたりしていたことを、
活字で再確認しているうちに、この二人も可愛いなぁ~と思えるようになりました。


そうこうしている内に、再視聴の欲求がジワジワと盛り上がり、
何より起死回生のベストショットの場面を、
もう一度目撃したいという気持ちが抑え難く、
春本番を前に、一気見再視聴を敢行。

冬の鎌倉などを舞台にした本作ですが、春を迎えつつ鑑賞するのも粋な物です♪

一回目の視聴では想い人の本音を見出せず苦悶する恋愛アニメとして観ていましたが、
二回目に整理して観ると、それ以上に自分の気持ちが見えずに空回りする描写が印象的です。

他人の恋煩いには、隣の二人は青く見える。といった感じで鋭く勘付くのに、
自分の恋の病には無自覚。それが隣で恋する他人の表情に感化され、
次第に誤魔化し切れないほど燃え上がっていく……。
共鳴する青春の心模様がたまらなく綺麗です。


……やべぇ。俺、やっぱこのアニメ好きだわ。


こんな瞬間、私の予定にありませんでしたが……。
今更ながら、お気に入り棚に進路変更決定です♪

投稿 : 2018/03/29
閲覧 : 517
サンキュー:

50

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