「Wake Up,Girls!(TVアニメ動画)」

総合得点
61.5
感想・評価
647
棚に入れた
3000
ランキング
5372
★★★★☆ 3.2 (647)
物語
3.3
作画
2.8
声優
3.1
音楽
3.6
キャラ
3.3

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ネタバレ

雀犬 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 4.5 作画 : 2.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

偶像と物語、理想と現実

アニメ業界の問題児、山本寛ことヤマカンが企画し結成された
アイドル声優ユニットWake Up,Girls!(以下WUG:ワグ)
2014年に放送されたTVアニメのレビューです。

WUGとしてオーディションに合格した7人が声優を務め、
アニメ内のWUGと名前・性格・デザインまで全て現実と結びついているのが最大の特徴です。

TVアニメと同時に劇場版が公開されたのですが
TV版は完全な劇場版の続きからスタートしていて、
かつ劇場版を見ていないと人物関係が分かりにくく、
その後も劇場版を伏線にした演出が多々ありかなり不親切というか、
無謀な構成になっています。
もし最初から見るのであれば必ず『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』から見ましょう。

「アイドルとは物語である」
これがWUGの理念です。聞き覚えの無いフレーズだと思います。
アイドル(idol)の本来の意味は偶像。
つまり男女の理想像をファンに見せ、夢を与える職業というのが一般的なイメージでしょう。
WUGは既存のアイドルの概念を覆すものです。
彼女たちは「アイドルである前に人間である」という言葉の通り、
売れる前の泣かず飛ばずの状態から始まり、泥臭い練習風景やメンバー間の諍いなど
通常見せない舞台裏まで全て見せた上でひとりの人間として好きになってもらう。
これは新しいアイドルスタイルの提案であり、とてつもなく志の高い作品と言えます。

WUGの7人はよく言われるように、声優としてあまりうまくありません。
ただこのアニメに限ってはそれが一概に悪いことだといえないので難しい。
というのも、アイドルは歌やダンスが上手くなければいけないというものはないからです。
AKBにも下手なメンバーはいるし、古いところでは近藤真彦とか、鈴木亜美とか、
歌が下手でも人気になったアイドルは多い。
未完成であっても頑張っている姿を見て応援したくなる、それもアイドルの魅力。
そう考えるとWUGも演技の上手さより声の個性の方が重要なのかもしれません。
下手下手と叩くのはあまり本質的ではないように思います。

ストーリーはWUG結成からメジャーデビューまでを描く青春ドラマで、
アイドルものとしてありふれたものですが丁寧に作られていて、
メンバーの成長を実感できるアニメになっています。
特に第9話はメンバーが一つにまとまる場面を感動的に演出できていて
良いエピソードになっています。
この回は作画も良く、全12話でも傑出した出来栄えになっております。
その他、「いかにも」という感じのアイドルオタクやプロデューサーのキャラが見ていて楽しい。

しかし全体的に見ると…
このアニメは作画が最大のウイークポイントになってしまっています。
メンバーの顔がカットによってバラつきがあり、静止画でも明らかに変な顔があります。
その他首の動きが妙だったり、等身がおかしなカットまであります。
不自然にロングショットが続くシーンも多く、制作現場の苦しさがありありと感じられます。
Blu-ray版ではかなり修正されているようですが、
残念ながら僕が見たDアニメストアはTVで放送されたままの未修正版で、
いわゆる作画崩壊が散見されました。
特に第10話のライブシーンは悪い意味で伝説となっているので見ると面白いです。
いや本当にヤバいから!

作画が悪くてもコメディ系や日常系ならそれほど気ならないのですが、
悪いことに本作は性質上、作画クオリティの低さが致命傷になっています。
WUGはリアル志向を打ち出していて、人物描写もリアル。
作画で漫符をほとんど使用していません。
漫符とは照れると頬に赤い線が入ったり、青ざめると縦線が入ったり、
怒ると血管が浮き上がったりするような感情の記号表現です。
漫符を封印するとキャラクターの感情をひとつひとつ微妙な表情をつけて
表現していく必要があるのだけど、全然それができていないんですよ。
オマケにCVを務める彼女たちは声優としての経験値が低い。
本来は作画で演技力をカバーしてあげるのが理想なのですが、逆に足を引っ張ってる有様。
キャラの台詞と芝居、表情の整合が取れておらず違和感を感じる場面がものすごく多い。
すると大根役者の演技を延々見せられているような感じで、見ていてつらいものがあります。
この作風でアイドルアニメを作るのであればワンランク、ではなく
ツーランクより上の作画が求められると思います。
そうでなければアニメーションで作る長所は感じられないし、
女の子の可愛さを表現することに全力を出している萌えアニメには絶対に勝てないだろう。
WUGの7人を現実よりもかわいく見せてあげようという思いが
画面からは全く伝わってこないことが何より悲しい。
10話・12話のライブシーンの出来映えにがっかりされた人は多いはず。
 "二次元と三次元の魅力を融合した新しいアイドルユニット"
新しい価値観を創造するのは並大抵のことではありません。
思い描く理想を実現するだけの制作スタッフを集められなかった、それが現実なのでしょうか。

この作品を通して感じ取ったこと―――
それは「夢に向かって邁進することの美しさ」が3割。
残りの7割は、「どれだけ才能があっても人望がなければ良い物は作れない」という教訓。

ネットの記事を掘り起こすと、放送中はアンチによるネガキャンが繰り広げられ荒れたようです。
その後のヤマカンはというと、自ら立ち上げたOrdetの代表取締役を辞任、WUGの運営から外され、
アニメ業界から事実上追い出されるという絵に描いたような没落劇。
WUGの企画自体は秀逸だし、東北を盛り上げたいという意志も立派。
このアニメも世間で言われているほどひどい出来ではないと思います。
それでも自分で再定義した「オタク」とやらを目の敵にして、
日々ネットで空中戦に明け暮れる今の彼の姿を見ると同情はできません。

なんというか、非常に惜しい作品でした。

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{netabare}うんめーにゃ♪ に決まってんだろ{/netabare}

投稿 : 2017/10/15
閲覧 : 436
サンキュー:

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