STONE さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
独創的なハイファンタジー
原作は未読。
秘境冒険ものだが、この世界観の作り込みが独創的で素晴らしく、アビスの呪いに代表される
アビス特有の現象はストーリー自体を面白くしている感じ。
アビスに生息する生物の造形や生態も独創的。他のハイファンタジー作品だとドラゴンだの、
ケルベロスだのといった既知の生物を登場させるものもあるが、そういった場合は読者や視聴者に
特徴などを伝えやすい反面、没個性化しやすいわけで、個人的には本作のようなオリジナルな生物の
方に惹かれる。
タマウガチに襲われる展開は以後のリコの生命の危機も含めて、かなり危険な生物という印象を
持った、この辺もタマウガチがオリジナリティな生物だからこそ、より強烈な印象を
持ったんじゃないかと。
アビスの生物に関しては「アフターマン」、「鼻行類」などの学術書のような体裁で想像上の
生物を描いた一連の書籍を読んだような感覚に近いものがあった。
世界観の説明だが、ナレーションは最低限にして、キャラ同士の会話によって視聴者に
伝えている。
作品によってはこういったやり方はキャラが不自然なまでに饒舌になってしまうものが
あったりするが、本作に関してはこの辺が自然な感じ。
特に主役であるリコとレグを始め、子供キャラが多いため、大人が子供に言い含めるようにして、
視聴者に伝えるシーンが多い。このやり方は物語作りの王道パターンの一つと言えるようなもので
本作も上手いこと使っているなと。
可愛らしいキャラデザインとは裏腹に話が進むにつれ、かなりきつい展開に。
これは映像的なグロさもあるが、それ以上に精神的に響くきつさといった感じで、ある意味
万人向きではない印象。
ただ、この手の冒険ものに関して、冒険の辛さ苦しさが頭では判っているものの、感覚としては
伝わりきれない感があったが、本作はその辺がよく伝わってくる。それゆえにその代償を払ってでも
進もうとするキャラの憧憬がより感じられる。
また、他にも嘔吐、失禁などあえて汚い部分をスルーせずに描くことで生々しさが感じられ、
作品世界がよりリアリティのあるものに。
ストーリー構成的にはじっくり描いた印象で、話が進むほど面白さが増してくる感じ。個人的には
地味な部分もていねいに描くスタンスは好みなので、これは大歓迎。
話自体は途中で終わったが、1クールものの締めとしては凄く良かったんじゃないかと。
キャラもリコ、レグ、ナナチを始め、いずれも印象深いものが多く、特に白笛達のくせ者振りが
強烈。
更にこの作品世界、ストーリー、キャラなどを支える作画、音楽、キャストの演技なども
素晴らしく良かった。
キャストに関しては多くの主要キャストがベテラン勢の中、この当時はまだ新人であったリコ役の
富田 美憂氏の熱演が素晴らしい。
あと難しい語句や凝った言い回しこそないものの、会話における言葉選びのセンスの良さを
感じた。
2020/03/22