ふりーだむ さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
原作があるものの映像化は、まず原作通りに作るべきである。
屍鬼
原作:小説既読
三方を山に囲まれた集落「外場村」。人口わずか1300人の小さな村のその中の一つの集落「山入」で集落全員が死体で発見される。
村の医師・尾崎敏夫はその死に不信感を持つも、事件性は無いと判断される。その後も死者が続いていく。
原作を読んだのは10年ほど前になるのかな。当時京極先生の本を読み漁っていた時期で、仕事場の後輩から「面白い本がある」と言われ、借りて読んだのがこの「屍鬼」である。
上下巻で1冊がとても分厚かった。しかし、京極先生の「レンガ本」を読んでいた私はそれを苦にせず、通勤の行帰りの電車の中で読みふけっていました。
原作本は序盤の登場人物の紹介の長いこと長いこと。本編に入るまでにだいぶ苦労しました。本編に入ったらスムーズに進むので読みごたえがありましたね。くしくも同先生の「十二国記」同様、序盤がヤマでした。
その作品の映像化ということで、気にはしていましたが、このたびようやく視聴開始。
2クールの作品に仕上げているので、無駄な人物紹介などなく、すんなりストーリーに入って行けたと思います。
多少原作との相違もあるものの(一部大きな違いもありますが)原作の雰囲気を壊さず、良い出来に仕上げられた作品だと個人的には思います。
「屍鬼」と呼ばれる吸血鬼の一族が小さな村に入り、ここを拠点にするという流れで、医師の敏夫が村人の死の多発の原因を究明し、静信は屍鬼の一族の沙子と通じ、その狭間で苦悩するという話。
吸血鬼ものでありがちな、吸血鬼の悲哀と、死者がよみがえるという恐怖とパニック、起き上がった(蘇った)家族や友人との関係などを小さな舞台に濃密に、細かく描いていると思います。
架空の物語ながら、人の心の移り変わりや、日常(慣れ)の怖さなども描いていたとも思います。
印象に残っているのは、終盤、村人が活動停止状態になった屍鬼を片付けているシーン。
屍鬼の死体には大量の血液がついており、処理するにも、移動するにも手に血が付く。
女性衆が処理の合間休憩するシーンで、手に血が付いたまま「おにぎり」をつかもうとしたところ、手に血がついていることに気づき、「エプロンで」地をぬぐい、そのまま食事をする場面。まるで「泥」か何かが付いたようなしぐさで、手を洗いも、消毒もせず、素手でおにぎりをつかみ食事をするシーンに、「慣れ」というものの怖さを感じました。
ドラマやアニメでも手に血が付けば、その血に驚き、しつこいぐらいに血を洗い流すシーンなどありますが、この女性衆は、この作業を繰り返すうえで慣れてしまったんでしょうね。何の作品か忘れましたが、「銃で人を撃つなんて、すぐに慣れるさ」といったようなセリフを思い出しました。(正確ではないですが、そんなニュアンスのセリフだったと思います)とても怖くなったことを思い出します。
メインのキャラとして夏野を残しておきたかったせいで、終盤で夏野と辰巳が戦うシーンがありましたが、原作では夏野は起き上がらなかったこともあり、最後のシーンも夏野のためのシーンのせいか、茶番に見えてしまいました。無くても良かったんじゃないかと。
キャラクターデザインに多少違和感がありしたが、絵や構成などはほぼ原作通りでとても良かったですね。
漫画や小説などを原作にすると、筋書きを変えて、妙にお涙頂戴的なストーリーにしたり、まったく筋違いの物語にしてしまったりする作品が多い中、ほぼ原作通りに作っているおかげで、視聴後もすっきりした感があります。
屍鬼を殺すシーンなど多少グロい部分もありますが、物語として、映像化作品としてよくできた作品だと思います。