fuushin さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
本当に大切なものは失って初めてわかるのですね。
今から47年前、1970年の、27分という短編の作品ですね。
幼子にやさしく語りかける童話のようでもあり、陽気な歌とリズミカルなダンスのミュージカルのようでもあり、そして深く心に沁み入る崇高な法話でもあるような不思議なストーリーです。
原作は、やなせたかしさんですので、子どもそのものの存在をおおらかに受け止め、高らかに賛美し、おだやかな喜びにあふれる、観る者の心を揺さぶるシーンがスクリーンの随所に現れます。
また、種を超えて情愛を通わせる母と子のありようは、当時もワンオペで子育てをしていた母親への ( 今時はさらにワンオペか?) 深い共感と、みなぎる励まし、そしてどこまでもどこまでも応援をしつづけるように話が静かにたおやかに流れます。
本当の母ではないし、血のつながった子どもでもない、そんな関係のなかでも、お互いに精一杯、慈しみあい大切に思いやりながら生きてきた母と子。
でも、世間はそれを認めないし許さないのです。人間は許さない!
皆、等しく同じ生命を授かっているのに、なぜ母子の望むままに、つましく平和に暮らせないのか?
私はこのとき小学生。ただただ悲しくて泣いていました。
なぜ、この映画を観るの?
なぜ、こんな不条理を感じたの?
生きることが否定される世界があることを、(たとえそれがフィクションであったとしても)、両の目を通じて受け止めなければならなかったこのとき、とても辛くて悲しくて、耐えきれなくて、母子を引き裂き排除し破滅に追いやった人間を嫌いになってしまいました。
本当に大切なものは、失って初めてわかるのですね。
だから、大事にあたため、抱きしめて、ささやかな幸せを一つずつ、小石を積み上げるようにして作っていくのですね。
やなせたかしさん、もう亡くなってしまいましたが、その限りない愛の大きさをこうした作品に遺してくださったことにあらためて感謝いたします。
晩ごはんをたべたあと、お部屋を少しだけ暗くして、ご家族で観ていただきたい作品です。