takumi@ さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
雪と桜と空と海
作画クオリティーは素晴らしく、リアル以上に美しい。
四季それぞれの、時間帯によって刻々と変化する空の色合い。
ゆっくりと舞い降りる桜や雪・・・
打ち上げられたロケットのまぶしい光や、夕暮れに染まる海も。
だけど・・・物語はとてもセツナイ。
恋はセツナイ、セツナイのが現実だ、と言わんばかり。
それでもこの作品を観ると、山﨑まさよしの歌とともに流れる映像に、
胸が締め付けられて涙ぐんでしまうのがなんだか、悔しい。
3話までに登場する人物は、遠野貴樹、篠原明里、澄田花苗の3人。
第1話での、思春期の少年少女のドキドキした心の高まり。
大人になって思い返せば、ほんのり甘く、とてもピュア。
雪の中で冷えたはずでも、頬だけは火照っているその温度感。
秒速5センチというスローな雪が電車を遅らせてしまうという
そのもどかしさに、伝えられない想いを抱いたままの2人を感じる。
第2話では、遠野に片想いしている女の子 かなえが主人公。
まず背景、『星を追う子ども』と繋がっていることに気づかされる。
こちらでは女の子視点だが、片想い中の気持ちというのは
ときめきも、悩みも、優しくされたら泣きたくなるような思いも、
男女に変わりはないのだなぁと。
時速5キロのロケットに揶揄された、少女の昇っていく想い。
そして遠野が度々打っているメールの相手は・・・
第3話では大人になった遠野に再びスポットを当てて。
かつて想い合い、文通もしていた二人のその後が描かれる。
ここではやはり、何といっても踏み切りのシーン。
2人の今を表現した心憎い演出。
恋=相手を想う気持ちには、性別関係なく個人差があれど、
長い月日の間会わずにいた場合では、男と女それぞれに
性質の違いが出てくるのが一般的なのかもしれない。
それを想うとたまらなく切ないけれど、
同時に、結ばれなかった想いを美しいと思うより、
美化してはならないもののようにも思える。
そして過去からずっと恋を引きずっている人は、
自分を想ってくれている人に残酷な仕打ちをしている現実に
なかなか気づけないものなのかもしれない。
この作品では、初恋をただ単に美しいものとするのではなく、
その部分もしっかり描いていることに好感が持てた。
秒速5センチで舞い降りる雪と桜だけれど、
雪は降り積もり、桜は散ってしまうモノ。
片想いの想い出がある人には特に共感されやすい作品だと思う。