◇fumi◆ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
流れよ我が涙、とシビュラシステムは言った
2012年~2013年に放送されたテレビアニメ 全22話
総監督 本広克行 監督 塩谷直義 脚本 虚淵玄 深見信 高羽彩
制作 Production I.G
この第一期は第二期に合わせる形で直前に1クール放送されたらしいが、
1話1時間枠で新規カットが多いらしい。また残酷シーンを追加して放送中止にもなった。
このタイトルはフィリップ・K・ディックの長編小説が元ネタで、警官→シビュラシステムに変更。
作中でもディックの有名作のタイトルが連呼されているシーンがあります。
シビュラとは地中海文明に伝わる神の信託を受ける巫女の名前で、
固有名だったり職業名だったりするという。
ディックの末期の短編「シビュラの目」は難解なため一度読んで諦めました。
op動画からして、もろディック調のアメコミSF風味。
内容もブレードランナーなんかよりもずっとディック風。
人間の悪意を事前に摘み取ることで事件の起こらない未来社会が舞台。
作中ではあまり描かれないが、日本は鎖国状態で海外の情勢は不明な様子。
人間の内面を数値化することで理想的な人生が強制されるという、
ディストピア風ユートピアに暮らす日本人の物語。
それでも起こりえる犯罪の芽を管理するための組織が厚生省管轄の公安局。
いわゆる警察だが、管理システム「シビュラ」による細かい規則に縛られている。
狡噛慎也(関智一)公安局刑事課一係執行官
常守朱(花澤香菜)公安局刑事課一係監視官
槇島聖護(櫻井孝宏)一連の事件の裏で暗躍する謎の人物
の3人が主要人物 他に公安局のメンバーが多数登場しちゃいます。
槙島が起こす事件に公安局が振り回されるという物語で、
100年後の東京が精密に描かれ、観ているだけで臨場感が味わえる力作です。
設定は難しそうではあるが、非常に明快に描かれ1話ですでに世界の中にのめり込めると思います。
物語も明快で単なる事件捜査もので、言うほど哲学的でもなさそう。
最も理解しづらいのはヒロイン常守朱の生まれ持った官僚体質で、
これは自分としてはストレスを感じてしまったが、作者の狙い通りだろう。
ただ、声優はやはりこの作品のヒロイン役は荷が重かったように思えて残念だ。
他の声優はベテラン揃いで一分の隙もない。
第一期では死亡者が多いにもかかわらず、まるで水槽の中を覗いているような無感動を味わったが、
これもまた、ディックの「暗闇のスキャナー」のような狙いだと思う。
非常に練り込まれた未来SF作品であるにもかかわらず分かりやすく楽しい、
いや、それは不謹慎だろうか?
これは傍観者的立場で観てしまう作品。
そこに一石を投じるのがヒロインの異常性(なでこメドューサ風)かもしれないと思ってしまいました。
ディックファンにはたまらない一作。
高評価にしておきます。
未来社会のおっさん「テクマクマヤコン女子高生になーれー」