岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ギャンブル好きに贈る、ギャンブルのためのギャンブル作品
原作未読。
前置きとして私は普段この手の作品は見ないので詳しくはない。ただ漫画やアニメでギャンブル系は一つのジャンルとして確立されていると思うし、それだけ普遍的な魅力のある作品なのだろう。
ギャンブルものというとイメージでは「金」「心理戦」「イカサマ」「成り上がり」「プレイヤーの協力と裏切り」といったワードが浮かぶ。本作でもそれらの要素がどれも盛り込まれていたので、ギャンブル作品としての下地は全体的にしっかりしていた印象。ただ逆にそうした設定に特に尖った点も見受けられなかったため、世界観の輪郭は薄れてしまっている気もする。
本作の一番の特徴は前述の全ての要素が、最終的に「カケ狂い=常軌を逸したギャンブル好き」という展開に収斂されていくこと。毎回のギャンブルで当たり前にイカサマがあってそれを見抜くのも、階級制度や多少の心理戦も、全ては夢子がカケ狂うための手段であって、目的ではない。彼女がギャンブルをする理由がどうしようもなくシンプルなため、かえって一般人には受け入れがたい異質感がある、というのが本作のウリかと。
各ゲームについては比較的わかりやすいゲームとそうでないものがあったように感じた。全体的にルール説明が駆け足だったため、原作を知っているかやゲームの基礎知識があるかも重要なのだろう。
本作では夢子が目的のため「あえて試合に負けて勝負に勝つ」ケースもあるので、ゲームの勝ち負けは最後まで飽きさせない部分はあった。ただ夢子のとっては賭けを楽しめれば表面的な勝ち負けはどうでもいいわけなので、あまり勝負に一喜一憂する必要性も感じなかったが。また中盤の風紀委員とのギャンブルはもはやギャンブルでもなんでもないものだった。
ギャンブルものとして定番の要素を盛り込みながらも、ヒロインが最終的にギャンブルする動機は非常に明快。恐らく本作のキャラクター心理に既存のギャンブル作品の先入観を持ち過ぎると、両者との乖離に戸惑ってしまう気はする。ギャンブルにおける不純物をとことんそぎ落とし、彼女の気持ちを理解できるかが本作を楽しめるかどうかの分岐点。
兎にも角にも、早見さんのお芝居での貢献が非常に大きかった。