lEFUg59761 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
レビューが無粋になる作品
「花咲くいろは」「SHIROBAKO」に続く、PAのお仕事シリーズ第3弾になる作品。
ちょっとした手違いで見知らぬ町の国王(という名の観光大使)になってしまった主人公が、戸惑いながらも周囲の人を徐々に巻き込んで町おこしに尽力する物語です。
この作品を見終わって思ったことは、「もっと多くの人に、最後まで見てもらいたい」
ただこれだけでした。
確かに他のお仕事シリーズに比べると、地味な展開が続きます。
良くも悪くもテンションが一定で、25話見続けるにはそれなりの理解が必要です。
しかし、これまでのお仕事シリーズの中では最もテーマに則しており、その意味では『本命』と言える作品でしょう。
脚本が地味とか、動きが少ないとか、そういうレビューははっきり言って無粋以外の何物でもなく、この作品を丁寧に作り上げ、テレビ放送したというだけで意味があると言えます。
一応、私のレビュー方法として項目ごとの感想も書かせていただきますが、この作品には要らない要素なので、隠させていただきます。
お暇な方か、もの好きな方だけクリックしてください。
{netabare}
■物語……4.0
とにかく丁寧に脚本が書かれていて、伏線回収率もほぼ100%。
それゆえに驚きが少なく、現実でも起こりえることしか出てこないので、アニメでやる意味が薄いのも事実です。
しかし、それはあくまで脚本のみを切り取って評価した場合。
近年の安易なアニメ頼りの町おこしに対する問題提起としては、とても分かりやすくできていました。
そのバランスを考えると、むしろ多くの制約の中でこれだけアニメ的に描いている事に、高い好感を覚えます。
SHIROBAKOの時もそうでしたが、この「教科書のように丁寧な脚本」は、作画が注目されがちなPAさんのもう一つの特徴と言えるでしょう。
■作画……4.5
もちろん、素晴らしいです。
私が視聴した限り、作画の崩れはほとんどありませんでした。
また、CGと原画の境目が薄いのも特徴的で、これだけの技術力を保つ体力にはさすがの一言。
あえて言うなれば、背景よりも人物に対する細かい作画が目立ち、それ以外はCGで補う手法が少し目についたぐらいです。
■声優……4.0
新人からベテランまで幅広い層の声優さんを起用しており、田舎の年代格差を上手く演出しています。
SHIROBAKOの時にも思いましたが、とにかくディレクションが上手く、中の人がでてこない没頭感のある演技が味になっています。
それに答える声優さんも、新人やベテラン関係なく勿論演技力が高いのですが、特に斧アツシさん、上田麗奈さんのハマり具合は素晴らしいです。
抑揚や発声だけでそのシーンの雰囲気を引っ張る力があり、新しい声優さんの魅力に気付けました。
■音楽……4.0
他のアニメ作品よりも、アーティスト色の強いBGMです。
(K)NoW_NAMEさんは灰と幻想のグリムガルで総合的な音楽を手掛けた実力派のクリエイターユニットですが、それは作品の色が違う本作でも十分に発揮されていました。
OSTも一つ一つのシーンに合わせて作られたボリュームある内容になっており、音楽としても楽しむことができる作品です。
ただ、音響効果に関しては少し物足りないと感じました。
ヒューマンドラマは現実感も重要になってくるので、手助けの環境音はもっと多用して欲しかったです。
■キャラ……4.5
地味と言われる本作ですが、キャラクターはかなり攻めてます。
ピンク髪で就活する主人公に始まり、エネルギッシュな老人、謎の流しの外国人、20年先ぐらいのテクノロジーを駆使する発明家、実際こんなのいないでしょってぐらいテンプレなテレビディレクター……。
尖ったキャラの少なかったSHIROBAKOとは違い、こちらはかなり濃いです。
要所要所でこのキャラクターたちが活躍してくれるので、視聴意欲を助けてくれます。
個人的には、主人公の木春由乃は非常の好みのキャラクターで、正直国王の可愛さ目当てで見ていた部分もあります。
誰かしら気に入るキャラクターができるのは、それだけキャラ作りが上手いと言う事でしょう。
{/netabare}
最終回まで地味ですが、視聴することで人生経験の実になる稀有な作品。
途中であきらめてしまった人や、前評判だけで見る気をなくしている人には、ぜひ最後まで見てほしいです。