kku さんの感想・評価
2.8
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 1.5
キャラ : 2.0
状態:観終わった
望月智充監督
「月がきれい」(以下「月」)を見たとき感じた世界観というのがどうも既視感があり気になっていました。
記憶の細い糸をたぐり寄せて思い出したのが氷室冴子著「海がきこえる」です。確か小学生の時友達の女の子に薦められて図書館で一気に読んだ記憶があります。
そしてアニメ版の情報を知り取り寄せ視聴する事に。
小説で感じた(もう一度読み返しました)世界観ぴったりで、「月」ともいくつかの共通点があり「月」に繋がる作品だと確信しました
さらに調べると、望月智充監督は制作会社亜細亜堂に所属、「月」の岸誠二監督も元々、亜細亜堂所属。どういう訳か結びついてここで鳥肌全開というわけです。
ストーリーは視聴なさった方の書いてる通り賛否あると思いますが、女性が強気で一人よがりでプライドが高く甘えん坊で不器用。こういうキャラは今のアニメだとなかなか受け入れられないかもしれないけどまさにこういうややこしい女子は「あの頃」確かにいたはずです。
また古い作品なので時代背景もあるかなと私は思います
当時女性の社会進出が活発になり、強い女性への憧憬も多分に含まれていたと思うし、そういう女性に振り回される男性心理の裏の願望もあったと思います。原作者は女性ですがその辺社会の空気を読み取っていたのかもしれませんね。そういう背景を押さえて観ると最初は好感が持てないヒロインもとても可愛らしく見えてきます。
次に印象的だったのが、フレームワークです。
ずっと固定カメラでまるで実写ドラマのように描いています
固定の為背景をじっくり見ることができますし、画面に落ち着きが生まれます。それはまるで彼ら主人公たちの平凡な日常そのものかもしれません。
しかし、最後感動シーンで仕掛けが!
つまりこの為に固定だったという訳です
まるで溜まったダムの水を開放するように主人公たちのこれから広がる世界を示唆、演出しています。この作品は書籍版では続編がありますが、スムーズに続編世界へ続く導入ともなっており原作ファンにも配慮していたのかもしれません
「月がきれい」同様、『等身大』の人間を描いた世界は一見つまらない世界に見えますし、アニメでする必要が?って意見もあるのも否定はしません。でも人の記憶って案外いい加減でアニメで使用される誇張表現、印象表現が作り手の皆さんの人の記憶に基づく訳ですしそれなりに説得力があるはずです。それどころか、記憶をさらに美しく更新する作用もあるのでは?とこういうアニメを観ると感じます