雀犬 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
感情は理屈を超える
2011年放送のオリジナルアニメーション。深夜アニメの金字塔を打ち立てた作品です。
最近パチ屋の前を通ると本作のキャラをよく見るます。
「僕と契約してパチンカスになってよ!」と言いたいのかな。
その手には乗らんぞ。骨までしゃぶる気なんだろこの悪魔め。
/人◕ ‿‿ ◕人\
このレビューは視聴済みの方向けの完全ネタバレビューです。
もしこれから見ようと思っている人がいたらひとつだけアドバイス。
このアニメは予備知識がなければないほど楽しめると思います。
僕の評価がこんなに高いのは、内容を全く知らない状態で視聴できたことが大きいです。
よって、まだ見てない人はこんなレビューは読んじゃ駄目ですよ。
このアニメの面白さはなんといっても常に予想の上を行くストーリー展開の妙。
随所に仕掛けられたトリック&ギミックに翻弄される感覚がこの上なく楽しい。
どんな風に「してやられた」か、思い出しながら書いてみます。
実は第1話から惹かれるものがありました。
魔女との戦闘シーンはモダンアートのようで面白いし
謎の魔法少女ほむらの正体も大いに気になる。
少し心配していたキャラデザは意外とすんなり受け入れられました。
好みが分かれるというシャフト演出も特に違和感はなかったですね。
で、問題の第3話。
負けフラグがビンビンに立ってたのでマミの死はさほど驚かなかったのですが…
EDにMagiaが流れてきたときは正直ゾクッときました。
この演出は「これからこんな展開ばっかりだよ~^^」という、
視聴者に対する宣戦布告のようなものですからね。
まぁ、ロクでもない事が起きるんだろうなと予想できるんですが
このアニメは予想を毎回超えてくるんですよ。
第4話にさっそくさやかがキュゥべえの生贄になってしまう。
早まりやがって。絶対不幸になるやつじゃんこれ。
僕はてっきりマミを生き返らせるためにまどかがまず魔法少女になると思ってたよ。
案の定、魔女に大苦戦するわ、第4の魔法少女である杏子にボコられるわ、と散々な目にあう。
そして第6話。ソウルジェムの秘密が明らかになりますが、これはかなり衝撃的でした。
「こんな悪趣味な設定よく思いつくな…」という驚きもさることながら、
この設定が開示されることで、物語の中盤にしてまどかが魔法少女になるという選択肢を
相当選びにくくなったからです。どうなってるんだこのアニメは。
第7話でさやかにとどめをさすべく仁美が恋のライバル宣言をする。
いわゆるNTRというやつですな。虚淵サン…アンタ鬼だよ。
この展開はけっこう強引なのだけど、
人魚姫の伝説になぞらえることで極力感じさせないようにしている所がうまいですねぇ。
第9話でついに白い悪魔、キュゥべえの正体が明らかになる。
なんか急に壮大な話になった。
魔法少女物から始まり、ダークファンタジーとしての本性を現したかと思ったら、
いつのまにやら近未来SFに変貌している。
一体何形態あるんだこのアニメは。RPGのラスボスかよ。
まどか魔法少女になる可能性はほとんど閉ざされてしまったように思う。展開が読めない。
そして巷で大人気の第10話。
ループものの面白さをたった1話に集約した贅沢極まりない構成と
今まで傍観者だったまどかに代わり、ほむらを真の主人公に仕立てる演出は見事ですね。
ほむらのようなダウナー系キャラは好きなのでこの展開は熱かった。
OP曲コネクトをエンディングに持ってくることで
これがほむらのための曲だということを明かす仕掛けなのだけど僕は気付かなかったです。
エンディングのCVクレジット表示でまどかの次はさやかではなくほむらだったので
物語の鍵になるキャラクターだいう認識はあったんですけどね。
しかし本当に凄いのはここから最終回までの流れです。
まどか☆マギカが傑作なのは第10話を見て生まれる
私達の感情を利用して物語を完成させている所にあると思います。
最終話でまどかが犠牲となり、世界は改変されることになります。
改変後の世界では魔法少女が魔女になることはなくなるものの、
人間が地球外生命体に支配されている事に変わりはなく、
魔法少女も彼らにエネルギーを搾取されるための明日なき戦いを強いられている。
理屈で語れば何も解決していないように見えます。
しかし多くの人がこの結末に納得できるし、感動的ですらあります。
それは何故なのか?
第10話を見て、ほむらの境遇に深く同情し、ほとんどの人が思ったでしょう。
「この子だけは救われてほしい」と。
その祈りにも似た感情が解放される時、絶望と希望の相転移が起きる。
ただ1点、ほむらの魂が救済されたというだけの理由で
僕たちはこの結末を受け入れることができる。
それはキュウべえが語ったように、人間が感情の生き物であることの証明に他なりません。
まどか☆マギカという物語は人の感情のアレゴリーとして完成しています。
また本作の行きつく所はセカイ系なのですが、
この結末はセカイ系というジャンルの最適解を示したように思います。
ゴチャゴチャ書いてしまいましたが決して難解なストーリーではなく、
エモーショナルで、分かりやすい面白さを感じられるのがまどか☆マギカの魅力だと思います。
キャラクターではキュゥべえをMVPに選びたい。
一見かわいいのにドアップになると不気味なデザインが絶妙で、
アップとロングを繰り返すシャフト演出との相性がことのほか良かった。
可愛さ余って憎さ100倍。名悪役があってこその名作ですね。
/人◕ ‿‿ ◕人\
次の日仕事だということも忘れて夢中で見てしまったので、悔しいけど満点つけちゃいます。
ああもう、悔しい!