血風連あにこれ支部 さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ありがとう、この世界の片隅に うちを見つけてくれて
広島、原爆を取り扱った作品では「はだしのゲン」が有名ですね。
あの作品も原爆を知らせてくれたという意味では価値ある作品と思いますが、左翼臭がとても強かった。
天皇に対する描き方など、かなり厳しいものがあると思いますし。
が、本作はそれとは違ったアプローチで描かれていると思いました。
戦争作品というより、それに近い日常作品。
絵の得意な主人公すずが北條家に嫁いで、物資不足に悩まされながらも工夫を凝らして生きていく様子を描いています。
絵柄はどことなくふわふわしていて、今風の萌えでもリアルでもありませんが。独特なタッチで、しかもこのタッチだからこそ伝わる戦争の怖さを感じました。
恋愛ものとしても面白いですが、やはり本作で印象深かったのは、じわじわと襲いかかってくる戦争の恐ろしさでしょうか。
{netabare}空襲や、機銃の乱射、不発弾での悲劇。右手を失い、生き甲斐である絵を描けなくなったすずが、落ちてきた焼夷弾に一瞬諦めかけるが、布団にくるまって何とか家を守るあの描写。
あの時代に生きていたからこその力強さだと感じました。
それだけに、玉音放送からのあのシーンは辛かった。
戦争当時の世論が、植民地支配による力の拡大に頼っていたのは確かで、それは日本においても例外じゃないですからね。
ただ、穏やかな性格のすずがあれだけ納得できないと激情に駆られたものは、力の支配……というのを聖戦のようなもので正当化し、誤魔化したこの国の欺瞞だったかと思うと、何とも心が痛かったですが。{/netabare}
タイトルの言葉は周作に向けられたもので、見合い結婚で好きかどうかもわからない、周作にとってすずは世界の片隅にいるような存在だった。
そんな二人が、辛い時代を生きる事で徐々に夫婦になっていく。そういう関係性を示している言葉だなと思いましたが。
同時に、広島で起こった悲劇を知ってくれてありがとう。といったメッセージが二重の意味でかかっているのでは、とも感じました。
総じて、とても良かったと思います。戦争物としてもそうですが、一つの映像作品として非常に完成度の高いアニメだと感じました。
それから、以下は本作の感想ではありませんが最近の北朝鮮ミサイル情勢について思った事。
{netabare}https://jp.sputniknews.com/japan/201704213561028/
Jアラートでは出来るだけ地面に伏せて頭を守ってって指示があったそうですが、これあまり意味ないですよね。
核シェルターがないなら、防空壕でも掘った方がまだ少しはマシに思えますし……。
本作では、空襲に備えた準備をテキパキやってるシーンがあります。しかし、あれから時代がかなり進んでるのに、攻撃に対する備えがあまりにも無策なのは時代ゆえの平和ボケかと思いましたが……。それにしても落差が酷い。
避難するどころか、落ちたら落ちたで若干諦めムードな所もありますね。水爆の威力は確かに恐ろしいですが。今後、脅しがエスカレートしないとも思えない。
経済制裁だなんて言ってますけど、パチンコの売り上げの一部が北朝鮮の国に流れて、それがミサイルの資金になってる話も国会で何度か取り上げられましたし。
それなのに何故かパチンコで遊ぶ国民の気が知れませんね。
唯一の被爆国で核廃棄を訴えてる国が、実は裏で北朝鮮を支援しているなんて、そんなんで広島長崎で犠牲になった人達に顔向けできるんですかね……。情けない。あの時代を生きてきた人達にも、前を向いて歩けるような。そんな強さを今一度日本人が持てたら、と思います。
何だか愚痴のようになってしまいましたが、こんな所で。{/netabare}