Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「少年と少女と正しさを巡る物語」
この作品の原作と実写版は未視聴です。
ですが、丁寧さを感じる作画とキャラデザ…それに花澤さん、悠木さん、牧野さんが出演されるとあっては視聴しない訳にはいきません。
この物語の舞台は咲良田…この街はとても不思議な街で、住人の約半数が何らかの「能力」を持っているんです。
能力…能力は千差万別なので個性とも似た感じを受けますが、決定的な違いは自分が望めば自分を含めた自分以外に干渉できる…という点です。
本来能力は付与されるモノではなく先天的なモノ…
そして能力の効果が発揮されるのは咲良田の街中だけ…
それは、管理局がこの能力が外部に漏洩しないように隠蔽しているから…
管理局が情報を統制する社会…というと聞こえは悪いですが、状況が状況だけに仕方ない面もあるかと思います。
それだけ、管理局は絶対的な権限を持っていました。
これまでこのシステムはずっとうまく機能してきました。
だからこの状態を維持し続ければ絶対に大丈夫だと思ってきました。
けれど、世の中に「絶対」的存在が無いように、この咲良田にも絶対が存在しないことは誰でもピンとくると思います。
主人公である浅井ケイの能力は、見聞きしたことを完全に思い出せる「記憶保持」
そして本作のヒロインである春埼美空の能力は、最大3日分時間を巻き戻す「リセット」
リセットによって時間が巻き戻されると、全てが巻き戻された状態に逆戻りするのが世の常なのですが、なぜか浅井ケイの記憶だけは巻き戻らずリセット前の記憶を全て覚えていたんです。
本来逆戻りするはずのモノが巻き戻らない…
そんなイレギュラーに端を発してこの物語は動いていくのです…
序盤は、物語の幅も狭いしゆっくりとしていて静か…
振り返ってみると、春埼美空はとっても不思議な女の子という印象です。
無垢っぽさを感じさせる面も持ち合わせていますが、彼女独特の思考パターンが独特なので、彼女と対話を重ねると無垢っぽさは影を潜めてしまう気がします。
彼女が虚しさを感じたり望んだりしている訳でもないから虚無とも違う…
やっぱり不思議な女の子です。
誰でもそうですが、人は無限の可能性…選択肢を持っています。
そしてそれは彼女も同じ…
でもそんな無限の選択肢の中から浅井ケイの隣を選んだのはきっと正解だったと思います。
殆ど表情を変えることの無かった彼女に笑顔と涙がこぼれるようになりましたから…
そんな彼女が選んだ浅井ケイは春埼美空と同じ高校1年生なのですが、とても年相応に見えないほど冷静沈着で聡明な印象を持っています。
何故、彼は聡明でなければならなかったのか…
彼のポリシーなのか…それとも彼の「忘れられない」という能力が所以しているのか…
この物語は、彼に刻まれた運命をなぞらえながらその理由を突き詰めていく…そういう類の作品という印象を受けました。
でもこの作品を語っていく上で、相麻菫の存在は外せません。
きっと春埼美空より不思議…というより可哀そうな立ち位置の女の子だったのではないでしょうか。
素直と天邪鬼をコロコロと入れ替えながら浅井ケイと接し続けた彼女の真意…
それは彼女の内に秘めた本当に触れて明らかになるのですが、彼女の思いの深さに思わず涙腺が熱くなりました。
誰かのために自分の気持ちを完全に押し殺す事ができますか…?
誰かの願いを叶えるために全てを厭わず差し出せますか…?
そしてそれを笑って自らの本懐だと言えますか…?
きっと一番遠回りをしたのは彼女だったんでしょう…
物語の中で色んな彼女を見てきました。
でもきっと彼女の事をより深く理解できると思います。
誰よりもまっすぐで…
誰よりも自分の一番を大切にして…
誰よりも無欲で、でも本当は誰よりも強欲で…
この物語の中で一番人間らしさに溢れた存在だったと思います。
浅井ケイ、春埼美空、そして相麻菫は何を望み、何を選択するのか…?
彼らと対峙する相手に深く刻まれた意志と思いは…?
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
オープニングテーマは、牧野由依さんの「Reset」と、WEAVERさんの「だから僕は僕を手放す」
エンディングテーマは、THE ORAL CIGARETTESさんの「トナリアウ」と、牧野由依さんの「Colors of Happiness」
牧野さんの曲が最高過ぎ…特に「Reset」は私の中で「ど真ん中」の曲でした。
2クール全24話の物語でした。
作品全体がとても丁寧に作られている上、とても真面目な作品なので時折
この作品がファンタジーであることを忘れそうになりましたが、とても見応えのある作品だったと思います。
最後までしっかり描き切ってくれた事に感謝です。