どらむろ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:今観てる
呉視点のユニークな三国志バトル。女性向けキャラアニメだけど結構良く出来てます。
呉の陸遜(りくそん)が主人公の、バトルファンタジー路線の三国志物です。全26話。
主要人物に女性皆無、男の絆重視な、女性向けキャラアニメ。軍記要素は皆無。
独特すぎるキャラ配置や解釈は賛否割れるところですが、そこが面白いです。
女性向け(腐向け?)なきらいはありますが、意外に良作かも。
(例によってGYAO!無料枠で去年視聴)
{netabare}『物語』
異能バトルありの、三国志っぽいバトルファンタジーです。
「玉璽(ぎょくじ)」という謎の悪しき力が戦乱を生み、玉璽を巡る闇に翻弄される武将たちのドラマ。
呉の若き将・陸遜を中心に、仲間たちが友情を深めつつ、玉璽の闇に立ち向かっていく。
解釈が奇抜ながら、三国志演義の元ネタに沿ってストーリーが進行。
バトル面は左程良くは無いものの、ノリと勢いと割り切れば、まぁまぁ。
ただし軍記的な面白味は全く期待できず、あくまでもキャラ萌えアニメ。
主人公の陸遜と、師匠の諸葛孔明の師弟関係や、淩統(リョウトウ)との義兄弟など、男の絆重視。
三国志の元ネタをかなりユニークに解釈しているものの、良く出来ていると思う。
不器用な武将・甘寧と、甘寧に父を討たれて仇と憎む→和解して友情結ぶ淩統など、元ネタちゃんと活きている。
陸遜と仲間達(呉の六俊、りくしゅん)の関係や掛け合いも中々楽しく、個性的な仲間たちと良き絆結んで危機に立ち向かうのは王道的な良さあり。
9話のブードキャンプ回(若武者集いて、江東の山河に己を磨く)がコミカルで面白かったですw
この回に限らず本作はサブタイトルが分かり易くて秀逸でした。サブタイで大体どんな展開か分かる(三国志ファンならば)
玉璽の闇に抗えず翻弄されるストーリー、三国志演義ではカマセな黄祖が結構傑物で甘寧とのドラマが良い等、要所でキャラクターを大事に扱う脚本が好感持てる。
元ネタを脚色したキャラ同士の関係性(太史慈と呂蒙、周瑜と甘寧等々)が丁寧なのが、要所での盛り上がりに繋がる。
…魏の陰が薄いのが難なのと(ビックイベントの赤壁の戦いがアッサリで拍子抜け)、蜀の劉備陣営のドラマがかなりユニークなのは賛否あり。
でも劉備三兄弟の絆は原作通りなので、特に違和感は無いです。
本作の魏はあまり存在感が無く、主に蜀(無邪気だが不気味な劉備、黒幕な諸葛孔明)が脅威…
闇落ちした劉備のラスボス感と終盤の絶望感は中々、序盤から積み重ねてきた六俊の絆の盛り上がりが熱い。
…ただ、ラストはイマイチ煮え切らないのが残念でした。
いや、あれだけ悲劇振りまいたのに、事情あったとはいえ許されんだろ…
総じて、一見奇抜だが元ネタを丁寧に活かしたストーリーで2クール飽きさせなかったです。
「呉主人公の三国志物」としては、白眉。
腐向けと切り捨てるのは惜しい、キャラクターとキャラドラマは良質。
魏関連と、ラスト微妙なのを除けば、結構良作だと思いました。
『作画』
女性向けキャラアニメとして十分な美少年美青年揃い。
異能バトルはまぁまぁですが、ノリと勢いは感じました。
『声優』
陸遜の宮野真守さん初め、豪華男性声優陣。斎賀みつきさん、佐藤利奈さんら女性陣も好演。
孔明の子安武人さんの黒幕感や、石田彰さんの弱虫キャラ、遊佐浩二さんの飄々とした諸葛瑾など印象的でした。
周瑜の三木眞一郎さんが特にイケボ。
『音楽』
主題歌は雰囲気良く出ていたのでは。
『キャラ』
陸遜はやや煮え切らない面もありますが、真っ直ぐな王道的主人公で好感持てる。
陸遜を兄貴と慕う淩統(ショタかわいい)、豪快な六俊の兄貴分・太史慈、不器用だが義に厚い甘寧、ヘタレな頭脳派で太史慈の遺志を継ぎ大成長する呂蒙、孔明の兄で飄々とした実力者・諸葛瑾。
六俊のキャラクターと関係性が非常に良く、演義では地味な諸葛瑾の渋い活躍など、ユニークな解釈ながら良い感じ。
「細目やオネエや糸使いは強キャラ」な法則通りな諸葛瑾、好きです。
ラスボスの弟には及ばなくとも、存在感で決して負けていない兄。
呉の君主・孫権がどうみても美少女っぽい(でも男)のはともかく、蜀の君主・劉備玄徳が頭お花畑な無垢な子供(暴走すると邪悪)だったり、多くの三国志物ではスター級な趙雲がカマセ小悪党だったり、色々とユニーク(というか奇抜)なキャラ配置は賛否ありそう。
…でも、劉備玄徳の描かれ方は、案外的を射ている気がしないでもないです。
現実から乖離した理想主義者、情ゆえに暴走した末路…
呉視点の三国志ならば蜀は悪役、魯粛は孔明シンパの裏切り者という解釈もわかる。
関羽張飛はテンプレ通り。周瑜も苦労人ながら呉主人公視点の英傑に相応しい。
演義でも、一騎当千など他三国志物でも、全くのカマセな黄祖をカッコ良く描いたのは評価。
終盤に文官筆頭の張昭が老文官としての矜持を見せる等、地味なキャラでも大事に描かれている。
魏の面々がカマセなチンピラ集団なのは少々残念ながら、多くのキャラクターに魅力あり。{/netabare}