プラ さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.5
作画 : 2.5
声優 : 3.5
音楽 : 2.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
これは思考実験である
哲学的思考が好きな人なら、考えたことがあるかもしれない。
わたしたち人間は、人間より高次にいる存在が創った世界で、意思を持っているようで実は彼らに支配されているのではないか
噛み砕いて言えば、ぼく人間は誰かが創ったゲームの中で動くRPGキャラクター群であるのではないか、ということ。
自分はこのことについて、小学生の頃から考えていたけど、もちろん結論は出ない。なぜなら、そういう「異方存在」は認知すらできないからである……だから、哲学(自分の考えを証明する手段がないタイプの学問)なのであろう。
自分語りはさておいて、アニメの内容については批判が多いようだが、個人的には悪くないと思う。そもそも、こういう世界観を描いたことを評価すべきだと思う。だからこそ物語の結末をどうするか悩んだだろうし、クリエイターたちが導いた「正解」として受容するべきだろう。
ストーリーの核心は、"宇宙は異方が処理しきれない情報を求めて創られたシステムであり、人間は情報を生産する資源であった。そして、その事実に人類が初めて気づいた時、人類は何を選択するか"ということだろう。
◯ザシュニナの間違いと成長
ザシュニナは異方は人類の創造主であるために人類よりも上位の存在だと考えていたこと・人類は"途中"で異方が"完成"と考えていたこと、これが大きな間違いであった。異方の「人類を異方に連れて行く」という計算結果とは違う答えを出してきた人類・進藤に対し、殺すという人間らしい判断をしたのはザシュニナの成長であろう。
◯「正解」とは?
1話でザシュニナが言っていた「考え続けること」が唯一の正解である。つまり、正解は変容するものである。ある人が出した答えに同意する人もいれば、否定する人もいる。ある世代が正解だと決めたことが、次の世代では不正解であったりすることも。
正解というのは、世間の総意で論理的に正しいと判断され導き出された答えであり、その過程に至った思考・正解が出た後の検証が大切であり、それができることこそが「人類の価値」である。
これは作品というよりは、思考実験という感じで面白かったです。
(以下メモ)
#01
理学博士の助手がかわいい。謎の立方体に対して、単なる知的好奇心をブーストさせて"科学"してるのが親しみを感じる。一方で、科学で対処できなかった場合は、人智を超えた存在として容認する姿勢であるところも好感が持てる。
#02
ネゴシエーター・進藤の真価がさっそく発揮された。想定外、夢か現実かわからないような状態にありながら、あの冷静沈着な対処。外交官としての素晴らしい素質を見せつけたが、彼が何を望んでいるかわからない。あの笑みの裏には何かあるかもしれない。
#03
情報の正当性・平等性に敏感なザシュニナ、高次元世界であるノヴォ"異方"からやって来たと語る。カドは異方と宇宙を繋ぐ境界体だと言う。そして、無限に電気を生み出せる「ワム」を日本人に与えた。彼の意図は果たして。
ザシュニナとの交渉を一任された徭。彼女も凄腕の外交官なのだろう。徭はザシュニナの一貫性の高い存在だと捉え、一定の理解を示した。しかし、ザシュニナと日本の間に立つ"進藤"に対しては意外と懐疑的である。そう、人は複雑なものなのだから、読めない存在なのだから。
#04
世界が動き出す。もはや永久機関である「ワム」を手にする日本に対し、そのことを問題視する国連安保理からワムを提出するように要請される。
進藤はこの世界のシステムを含め、ワムに関わる事情をザシュニナに説明する。ザシュニナは語る、「国」という高度な概念は効率的に世界を治めるには適していると。しかし、ワムは国ではなく「人類」に与えられるべきだと言う。
安保理は強力な制裁を含む決議を下し、ワムをすべて国連に提出するよう日本に要求する。それに対して、ザシュニナはとある方策かある、と言う。果たして、その方策とは?
#05
品輪博士はが天才すぎる。なんと、たった5日もかからずに"ワムの作り方"を編み出してしまった。ワムの形が重要で、その形が異方に通ずる店になっていて、異方からエネルギーを取り出すことができる仕組みになっている。
日本政府は、安保理決議に従ってワムを提供することにしたが、同時にワムの作り方を公表。この公表こそ、ザシュニナが意図していたワムの全人類への供与に沿うものであり、正解に近づくための方策だったのだろうか。
果たして、人類はワムをどのように使うのだろうか。
#06
ワムを作れるのは異方に対する理解があり感覚に優れた者らしく、子どもなど精神構造が幼い人間が多いと言う。進藤は処理に際して、"異方の感覚"を手に入れたらしく、ザシュニナにとっては地球人と異方のパイプ役に最も適していると語る。
乗客解放後、カドは羽田空港から狭山湖へ移転される。固定された面に接地しながらの移動、要するにサイコロを滑らせることなく転がすように行われ、カドを移動させることに成功する。
移動後、ザシュニナは告げる。「エネルギーの充足という"第一の課題をクリアした」、と。進藤に言い渡した第二の課題とは……
#07
政府のプレスリリースの前にカドの映像を撮った腕を評価された言野は世界的な企業Settenにヘッドハンティングされる。早速ザシュニナに体当たり取材を申し込む。
ワムに引き続き異方からもたらされた道具「サンサ」。それは"異方の感覚"を人類に分からせるもの。ヒトは多次元・多数の空間にまたがっている個体存在であるが、一つの実態しか認識していのだとザシュニナは語る。進藤はいち早く異方の感覚を理解し、自分自身でワークシェアリングすることで20日以上寝ずに仕事ができている。
ザシュニナはワムを政府に託したが、サンサはメディアに託して世界へ拡散することを選ぶ。
進藤はザシュニナを近くの祭りへ連れて行く。その終わり、徭から提案される、「ザシュニナを異方に帰したい」、と。
#08
徭はプライベートな時間を使って進藤と"交渉"をする。交渉に必須である相互理解をするため、徭は自分の歩んだ人生・考え方を進藤に伝える。そして、ザシュニナを異方に帰す進言をした意図や理由を話す。徭はザシュニナが異方からもたらされたものによって宇宙が異方へと変貌してしまうことを危惧している。異方からの道具によって宇宙にもたされる利益より、宇宙が"宇宙"である、つまりオリジナリティを失わないようにすべきだと話す。
突然現れた異方に対して、人類は各個人がそれぞれの哲学に従って動く。Settenは異方に関する特別番組を開き、サンサの公開をする。ザシュニナは"ヒトの拡張"を目的とし、それが「正解」に近づくために必要なのだと語る。
ザシュニナは政府とは対照的にスピーディなメディアという存在を手に入れ、世界は加速し始める。
しかし、進藤はザシュニナから与えられたモノによって人類に幸福がもたらされるのか、悩んでいた。そして、そのことをザシュニナに話しに行く。
#09
進藤は盃を交わしながらザシュニナに話しかける。不便が便利に、可能が不可能になり加速した世界の変化を破壊ととらえる者もいる、と。そんな進藤にザシュニナは4つ目の道具「ナノミスハイン」を示す。それは重力制御・質量制御・慣性制御をするためのものであった。あらゆる物事が効率化される世界を想像した進藤は、"全人類バブル"が起こることを心配する。しかし、それに対して、今までもこれから先も永遠に人類は消費を生産が上回ることはないと答えるザシュニナ。その理由を語るべく、ザシュニナは異方の根本について話し始める。
異方は宇宙の37乗倍の速度と拡がりを持つ世界であり、それ故に常に"情報不足"に苛まれていると言う。異方は莫大な情報を産出する"情報の繭"を創り続けた。異方はたくさんの繭を試作した結果、無数の情報を産み出す人類を有する宇宙を、ついに創り上げた。結局、光の速さ・モノの重さなど、宇宙空間におけるあらゆる事象は彼らによって設定されたのだった。
ザシュニナはついに、進藤に異方に来ないか提案する。しかし、進藤の反応は良くない。その反応を見たザシュニナは現在の進藤を消し、複製した数時間前の進藤からやり直そうとする。しかし、そこに現れたのは徭だった。
#10
繭の中で地球(宇宙?)が形作られるようすが描かれる。繭の外ではト・ワ・ノ・サ・キという"何か"が話し合っている。その中の"ファン"が転生するような形で宇宙にやってくる、それが沙羅花だった。
手を加えない自然進化、それがルールだが、ザシュニナはそれが不正解だと言う。そして、ザシュニナの目的はヒトを異方に連れて行くことだった。
沙羅花は限られた時間の中を生き抜くのがヒトの幸せだと語り、進藤を護ろうとするも、ザシュニナの圧倒的な力の前に屈する。
しかし、沙羅花を庇った進藤がザシュニナの攻撃に遭う。沙羅花は進藤の治療のため別空間へと移遷する。
ザシュニナは"代替"の進藤とともに外に出る。そして、第四の道具・ナノミスハインを人類に示す。
#11
ナノミスハインを操作する素質はすべての人にあると言う。これで人類の異方変換の速度が上がるらしい。
進藤はもはや最強であるザシュニナを止める方法を沙羅花に聞くと、一つだけ可能性があると告げる。品輪博士と花守を呼び、フレゴニクスを作りザシュニナと交渉する作戦だ。
進藤はザシュニナを求めているものが「純粋な驚き」であると考え、サプライズを用意する。品輪博士はついに人工のフレゴニクスを創り出し、アンタゴニクスと名付ける。
ザシュニナはついに人類を異方に連れて行く作戦を実行する。その眼前に進藤が現れる。彼はいったい何を交渉する?
#12
ついに人類vs異方存在の最初で最後の究極的な交渉が始まる。
ザシュニナは、人類の力は「1」に「1以上」の価値を与えるものだと語る。進藤は、たとえ異方の創造主だとしてもこの生まれ故郷である宇宙が好きだから残りたいと願う。さらに、自分の言っていることが間違いだと気付いているはずだ、と進藤はザシュニナに指摘する。計算限界を超えた人類の概念にたくさん触れたザシュニナは、進藤を異方に連れて行くという「正解」を諦め、進藤を殺すという最も人間らしい判断をする。
進藤はアンタゴニクスを使ってザシュニナに対抗しようとしたが、ザシュニナはそれを予測していた。品輪博士にヒントを与え、フレゴニクスに対抗する装置を作らせるよう仕向けたのだった。進藤はあえなく死亡した。ここで人類は敗北した……
しかし、これは沙羅花の作戦であった。ザシュニナに万策尽きたと思わせるものだった。進藤と沙羅花の間に子「ユキカ」を設け、人類と異方のハーフというすべてを超越存在を作り出し、時間の流れを早めた別空間で育て上げ、ザシュニナに対抗する手段とした。これを進藤は"新たな解"とした。ユキカはザシュニナを消し去り、同時に異方が人類に与えたものすべてがなくなった…たった一つ、異方という存在の認知を除いて。
人類は見事に正解し、前と変わらない世界を取り戻した。
p.s.
取材班の「良い悪いじゃない!事実を取れ!それが俺たちの正解だ!!」というのは、今のメディアに見て欲しい