MLK さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:----
無題
この作品のテーマを一言で表すならばこれだろう。
「やりたい!」
近年、ここまで真の意味でポジティブな作品があっただろうか。
だからこそラブライブ!は素晴らしい。
ーーーここよりネタバレ含むーーー
最初、廃校の危機に瀕した学校を救うためスクールアイドルとなった三人は3話のファーストライブに際し大きな壁にぶち当たる。しかし、穂乃果は諦めなかった。たとえ惨めな姿であっても、自分の感じた充足感に正直に「やる」ことを決意する。この「やりたい」という言葉が、物語を通じて彼女たちに問いかけられていくメインテーマとなる。
4~8話まではいわゆる仲間集め回だ。ここで登場するのも、穂乃果たちの行うアイドル活動に憧れや興味があるものの、何らかの理由でそれに加わることのできない「やりたい」気持ちを抑えたキャラクターばかりだ。ここで、気持ちを殺した少女たちの心を穂乃果は解きほぐし、「やりたい」気持ちを持った9人の仲間が集結する。
9話から10話の日常話にかけても「やりたい」についての話は続く。9話は「やりたい」を開放できる秋葉原という街とことりについての話であるし、10話もまさに「やりたい」を隠すことにかけては本作の白眉であろうツンデレ真姫が願いを叶える話である。
最終三話にかけては、ここまでテーマとなってきた「やりたい」という心が問い直される。最後のくだりが無ければラブライブ!は良いという意見はネットでしばしば見受けられるものであるが、それは大きな間違いで、絶望とそこからの復活は人間が真にヒーローとなるために必要なものであり、この問い直しこそがラブライブ!をラブライブ!足らしめているのである。
「やりたい」という気持ちの空回りが引き起こした二重の悲劇。それに直面した穂乃果は落ち込み、初めて「やりたい」という心を抑え込むようになってしまう。しかし穂乃果は周囲のサポートを受け復活、「やりたい」気持ちに再び正直になり物語は大団円を迎えるのであった。
良い作品では、キャラクターは欲しいものではなく必要なものを求めているというが、この作品では自分に忠実であることを求めている。このテーマは実に強力だ。シェークスピアも「何にもまして自分に誠実であれ。それを昼も夜も続けるように。そうすれば誰にも嘘をつかずにすむ」という言葉を残している。
思うさま生きることは、美女ぞろいのハーレムを作ることや、強い力を手に入れることや、やる気ないように見えて実は凄い奴に一目置かれている存在になることより得難く、より幸せだ。(実際に、優勝したはずの二期は物語の質としては一期を超えることはできなかった)
それを教えてくれるからこそ、この作品は面白い。