岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
違和感から触れる夢の世界
原作未読。今敏監督の作品に触れるのも今回が初めて。
事前の情報からとにかく摩訶不思議な作品らしいということは聞いていたので、見ようかどうかかなり迷っていた。実際に見終わってみると、確かに摩訶不思議。様々な夢の世界が息をつく暇もなく連続展開され、また現実から夢、夢から現実へと舞台変換など複雑に入り組んでいる。加えて夢の世界での無機物のパレード、人形たちや夢に侵された人々のセリフ。
世界観として一度見ただけでは理解しきれないほどの情報量が凝縮されており、恐らく繰り返してみないと理解できない部分も多分にあるが、個人的に一回でお腹がいっぱい。
森見登美彦氏原作のアニメ作品で感じた夢か現かわからないファンタジーな世界観を、さらに過激で大人向けに映像化したというイメージかな。
一方で物語全体の流れとしては理解できないわけでもない。キャラクターの心情などは比較的わかりやすく言葉でも表現されている。主人公の恋心や彼女の違う一面がもつ願望をパプリカを通して描く演出。また視聴者と同じ目線で物語に巻き込まれる刑事役のトラウマとその克服、共犯者の小山内の嫉妬など共感もできた部分もある。
黒幕の理事長の台詞で一番印象的だったのは、「夢は人間が最も人間的である最後の楽園」といったニュアンスの一説。夢の中に人間の本質を見出し、それを不可侵にするいうのは確かに一理あるかもと思いながらも、なぜ彼がそういう理念に至ったのかはまた別の話。
摩訶不思議で前衛的な映像表現と、比較的理解しやすかった人物描写。両者のギャップがこの作品にいい意味で違和感を発生させ、作品の異質感をさらに際立たせているような気がした。