ろき夫 さんの感想・評価

4.7
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

涙とめどなく。その優しさ限りなく。

私はどっちかというと非社交的で、家でアニメばっか観ていますが、前向きに生きようと努力はしています。ネガティブになっても良いことなんて一つもありませんから。
でも、生き続けてると、どうしようもなく心折れそうになる時ってありますよね。

人には話せない悩みを抱え、他人に嘘をつき、自分に嘘をつき続け。
物事をうまく運ぶためにはそれが一番なんだと自分を納得させ、
慣れたつもりでも、やっぱりどこか痛くて。苦しくて。
そうしないと生きていけない現実が嫌で、抜け出したくて。
生そのものを呪いたくなって。

他人とは永遠に理解しえないとあきらめ、
自分の唯一の理解者は自分だけだと塞ぎ込み、意地を張って。
一人でいることが楽で、理解者なんて鬱陶しい。必要ない。
そう思っても、たまに寂しくなったりして。
人に優しくしたいし、優しくされたい。理解したいし、理解されたい。
心の奥底では期待し、求めている。身も心も安心して預けることのできる暖かさを。


この作品を観るとそうやって塞ぎ込んでいた自分の想いが解放され、とめどなく溢れてくるのです。
悲しみ・恨み・憎しみ。
それと同時に涙も溢れてくるのです。そういった想いを洗い流すかのように。


夏目が体力を削りながらも妖怪を解放してあげるのは、可哀そうな妖怪を救ってあげたい想い以上に、
現実に纏わりつく自身の苦しみから解放されたい、そういった想いがあると思うのです。
夏目は、自分の気持ちが少しでも救われたいから祖母の姿を懸命に追い求め続けるのだと。

私が遠の昔に持つことをあきらめた、まっすぐで純粋な気持ち。
夏目の存在が限りなく眩しく目に映りました。そして幼くも。
そう、わかっているのです。夏目のようには生きられないし、あくまで空想の話だと。
だから余計切なくなって、涙が止まらないのです。

おそらく、私やそういった大人の代表として「名取周一」が描かれており、
夏目に惹かれながらも、どこか冷めた目で見てしまうのですよね。

でも…

「…そうだね、僕も好きだよ。
　優しいのも、暖かいのも…。
　惹かれあう何かを求めて懸命に生きる心が…好きだよ。」(第六話『水底の燕』より)


この台詞を聴いた時、胸が熱くなりました。
…結局、完全には捨てられないんですよね。理解者を…好きになれる誰かを求める気持ちは。
環境のせいにしてあきらめてはいけない。
せっかくの一度きりの人生なんだから、惹かれあう何かを求めて懸命に生きる心を私も抱き続けようと、
そう思える力強さをこの台詞に感じました。

名言ともいうべき台詞の数々。ただひたすら優しく綺麗な物語。そして素朴な田舎の風景。
そのどれもが輝きに満ちています。観た後はすっきりと軽く、前向きな気持ちにさせてくれます。
分かりやすい内容だが、奥深い。そんなこの作品が大好きです。

なんだか少し恥ずかしいことを書いてしましたっ(´ω｀*)ゞ
でも、こんな素敵な出会いがあるから、私はアニメを観続けるのかもしれません^^