たわし(爆豪) さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
シャフト特有のアニメ的演出を極力廃してる
「君の名は」を歴史的大ヒットに導いた川村元氣プロデューサーと、「スワロウテイル」でお馴染み岩井俊二が撮った実写映画を
今アニメ界で一番トレンドな会社、「物語シリーズ」や「魔法少女まどかマギカ」で名を馳せたシャフトで新房昭之を監督に迎えてアニメ化するという今までに聞いたことのないタッグの組み方である。
しかも脚本は実写で脚本家をやっている大根仁というだけあって、不確かな世界観にリアリティを持ち込んでいる。
シャフト特有のケレン味のあるアニメ的演出や舞台設定を徹底的に無くし、どちらかといえば細田守や新海誠にある「現実の日本のどこか(今回は千葉県)」を取り入れたことにより、キャラクターも萌え寄りではなく極力実写的、写実的な線で描かれている。キャラクターデザインを担当したシャフトお抱えの渡辺明夫が結構苦労してここまでたどり着いたのだろう。なかなかの頑張りだ。
それはまるで去年観た「傷物語」やその他シャフトアニメから想像もつかないような大胆な方向転換であり、今までにあった不用意な下ネタなど一切なく「映画」としての完成度を重視したのは恐らく新房監督がもともと実写監督をやりたかった経緯もあるだろう。
声優も大物でも脇に周り、広瀬すずや菅田将暉といった俳優陣を主人公に迎えたのもアニメファンというよりは一般層に向けた心がけでありそれも成功していると思う。棒セリフという人もいるだろうが、個人的にはそんなに違和感がなかった。
シナリオだが、正直荒削りではあるし「君の名は」ほど完成していない。しかし、映像面では映画マニアなら唸るような映画的メタファーの連続であり、実写ではほぼ不可能な演出と映画的な意味合いが上手く混ざって程よい心地がする。
特にラストにおいての演出は拍子抜けする人もいるだろうが、映画をよく読み取り、セリフ一つ一つを考え、人物たちの行動原理を観察していれば自ずと理解できるはずだ。
ひとつネタバレになるが、男女が水の中で抱き合う意味、「濡れ場」はそのまま映画的には男女の性行為である。(この映画の中でもキスまではしてたしね)
などなど、目を凝らしてみると新しい映像的発見があり、それを新房監督は巧みに用意している。
実に「映画的」なアニメだった。シャフトらしさはなかったけどね。