「屍鬼[シキ](TVアニメ動画)」

総合得点
78.1
感想・評価
1461
棚に入れた
7830
ランキング
578
★★★★☆ 3.7 (1461)
物語
3.9
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.6

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ネタバレ

ve さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

おもしろかったけど…。

元は小説なだけ「もやもや…これからどうなるんでしょう〜?」
みたいな終わりだったし、主人公無双とかラブコメだとかスカッと悪を倒してくれるということもなくて、ただ観終わった後、なんとも言えない微妙な味が広がった。
でも、物語自体は面白い設定で面白かったと思う。
観終わった後、この作品をどう考えるのかが肝だと思う。
観といて損はないかな?哲学でしょ?という作品だった。

自分は「夏野、医者、大川さんカッコいいよ!恵ちゃんはブレないでgood。律子ちゃんは本当に天使だね…。
というか!室井!!テメーは何で生き延びて幼女(仮)とうふふ生活してんだコラ!なんだその格好。都会デビューか?!!
結末どうにかしてくれ!!!」

という感じだった。
まさか「絶望したから」という理由で村落を裏切ったロリコンが完全勝利して、都会デビューを果たし、ロリと生活しているだなんて。
しかも室井はただロリと一緒にいただけでほぼ仕事してない。
室井の仕事といえば、
たまたまロリと出会う→村落のために働くが裏切る→ロリの城に行き、座ってるだけ(他の屍鬼についてや、歴史、沙子の過去も聞かない)→
ロリと一緒に地下室に逃げるだけ→車で逃げる→失敗→途中で絶えて死ぬ→運良く起き上がったよ!!→大川を殺す→やった!小説家になれた!!

つまり、彼の仕事はロリのそばにいて、ただ座ってるだけ。唯一大きな仕事は大川を殺したことですね。
医者や夏野と比べると最悪です。
ただ沙子のそばにいて、変なポエムを読んでいただけなのに最終的に起き上がって大勝利。
そして村は言わずもがな壊滅。そして猟奇殺人として新聞に載る…。(・Д・)

物語は面白かった。どうなるのかヒヤヒヤした。結末は胸糞悪かったです!!

ちょっとした考察もした。

{netabare}
屍鬼は原作があるが、"アニメだけの観点"で言うと、正直、この物語の柱である屍鬼の気持ちに共感できなかった。
きっとこの作品は「生きるために殺すことに罪はあるのか。生きることは罪なのか。人間のルールは人間が勝手に決めたことでしょう?」ということを伝えたいと思う。
最後の方、人間が次々と屍鬼を惨殺していき、屍鬼は内面は人間のままだから、泣きながら逃げたりと可哀想な雰囲気になり「屍鬼に同情してしまう」というのを視聴者に思わせたいのだろうが、自分はそう思わなかったよ!!

理由は屍鬼は決して被害者ではないから。
まず、ナナコさん。彼女は「死にたくないから殺し」、「同じ起き上がりにしたいから家族を殺し」てきた。しかしこれは矛盾がある。
彼女は一度死を経験したのだから死の恐怖が分かっているはず。それを踏まえた上で死にたくないと言う。しかし家族を殺して屍鬼にしようとする。つまり、彼女は「死にたくないと言う死の恐怖を知りつつも、家族に死の恐怖を知らしめていた」ということ。果たして本当に大切な人に死の苦しみを与えられることが出来るだろうか。自分がその痛みを知っていて逃げているのに?
それに起き上がる確率は低いと知っている。
彼女は家族のためといいつつ、自分の行いを正当化しているだけであって、ただ自分が助かりたいだけなのではないのか。


そしてもう1つ。
生きるために殺すというけれど、屍鬼は寿命で死ぬということはないのだから、彼らはずっと生き永らえるつもりなのか。生き永らえることになんの意味があるのか。もしなん100年、何千年と生きたとしてそれは果たして「生きている」ことになるのだろうか。
終わりのない「生」など苦しくならないのだろうか。
もし、自分が屍鬼になって何千年もずーっと生きたいと思うだろうか。自分はそうは思わない。人間は限りあるから時間を大切にしようと思うし、限りあるから毎日が大切に思えるし、人を大切にしようと思える。

つまりこの屍鬼は生きるために殺すといいつつも後先のことを考えずただ今の自分のことしか考えていない。自分が1番大切なのではないか。
特にそれが表れているのは徹。

彼は家族を人質に取られて夏野を殺した。
しかし、外馬村はいずれ屍鬼の村となるとなっていた。つまり徹の家族…武藤家もいずれ屍鬼にやられるということだ。《人質もなにもない》←(後先のことを考えていない結果)
律子に食べろとせがんだのも律子のためだけではないのではない。律子が死ぬから言ったのではなく、屍鬼になってもなお、死の淵に立ってようとも人間としての矜持を忘れない彼女を見て、死より自分の命を選んだ自分が酷く醜く思えたからではないのか。

しかしなん100年、何千年と生きた屍鬼もいる。
例えば沙子。彼女にはどこも共感出来ない。
それもそのはず。彼女は幾年も生きつつ、成長してないからだ。成長と言っても身体的な成長ではなく、心だ。
沙子はロリのようだけど、人間の老婆よりも長生きしてる。普通は世界に対して達観しているはずだ。しかし彼女は室井に対して「生きることは罪なの?!!」と泣きながら訴える。(そうでないという答えを望んでいるかのように)
彼女の生まれは貴族。沙子はまさにエゴイストなのだ。なん100年生きようとも変わらない。過去の回想があったが、考えも性格も全く変わってなかった。普通はなん100年も生きれば、世界を見ていくなかで考えも変わり性格も変わるはずだ。でも沙子の心は幼いままだ。利己的だ。

それがよく表れているのは、沙子が室井を置いて逃げるところ。

「今までずっとそばにいてくれて逃がそうとしてくれた人を置いていくかー?!!」と思った。(やっぱ自分が助かりたいからだよね)

つまり人間は人間のエゴを持っているが、屍鬼は人間を辞めてもなお、醜いエゴを持っている。屍鬼は自分が1番大切なのだ。そうでなければ、人間関係が密着した村落で、その人の人柄を知っててもなおその人を殺さないだろう。
彼らは知らない人間を殺すのではなく、知っている人間も殺すのだから。
生きるために人を殺すことは罪だろうか。それは答えは出ない。
しかし彼らはあてもなく人間を殺し続けるのだろうか。いずれ屍鬼が人間より増えたとしたら、人間を家畜のように飼うつもりなのか?
死の恐怖から他人を陥れることで逃れ、生き永らえるのか。
生き永らえることは果たして「生きている」というのか。成長もしない、料理の楽しさも知らない。太陽の下で駆け回ることもできない。
ただ元は同種であった者を殺すだけ。
つまり屍鬼がしていることははまぎれもない「破壊への道」なのである。

{/netabare}
だから屍鬼には共感出来ない。

投稿 : 2017/08/28
閲覧 : 278
サンキュー:

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