humor さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
同人ゲーム製作を題材にした、王道な熱い展開とラブコメの混合作。
昨今、漫画製作(バクマン)や、アニメ製作(SHIROBAKO)など、製作舞台裏を題材にした作品が目立つようになってきたように思える。冴えない彼女の育て方は、同人ゲーム製作がテーマなのだが、系統としては少年漫画のような熱い展開とラブコメではないだろうか。それは、ヒロインの公私揃った可愛さにつながるという意味で独特である。以下、特筆すべきポイントを列挙。
良点1:原作者がアニメ制作に直接関わっていること
本アニメの特徴の一つは原作であるラノベ著者がアニメのシリーズ構成と脚本を自分で行っているということである。原作の良いところを最も知っているのは、他でもない原作者である。その原作者がアニメ製作にダイレクトに関わっているというのは、作品にとってはこの上ないメリットになるのではないか。例えば、原作は良いのにアニメ化で失敗する例としては、話の量が1クールに合わずうまくまとめられない問題がある。その点では、この作品は1クールの間に展開が大変多いにも関わらず、情報が不足しないようにコンパクトにまとめるのに成功している。
例えば、原作は良いのにアニメ化で失敗する例としては、伝える話の量が多かれ少なかれクール数に合わない場合がある。しかし、この作品に関しては、1クールにうまくまとまっているように思えた。展開としては「詩羽先輩との脚本製作」「えりりの原画製作」--ここで第1作が完成--「次の作品に向けての恵との相談」「詩羽先輩とえりりが高坂朱音に奪われ、サークルは新たなスタートを切る」と、盛りだくさんに詰め込まれている。(第1作が完成して終わりだと予想していた...。)だからとは言って、意味のわからない箇所は、僕にとっては一つもなかった。
良点2:優秀と言えるシナリオ力
ポイント1とも被る要因なのだろうが、脚本がよくできているように感じられた。まず最も小さなスケールで見れば、台詞回しが(良い意味で)小賢しいのである。例えば、1話だとえりりと詩羽が口喧嘩するシーン。皮肉は筋が通っているし、相手の言葉の裏をかくような言い返しが目立ち、聞いていて心地よい。
それは、もう少し大きなスケールでは、展開の美しさにつながる。例えば、1話での口喧嘩のシーンは、全体的に見れば、互いに相手の作品に感動してしまったことへの、尊重を描くシーンであり、後にサイン色紙を3枚追加するという、ライバルが互いを認め合う王道展開へと昇華されている。
よって、それは直接的ではないのだが、全ての演出やフラグは視聴者はアニメを観ながらにして気づけるようになっているのだ。(いわゆるミステリ系のように、気づかない伏線に驚かされることはないだろうけど、)丸戸の脚本は、部分が全体として意味を持てるように丁寧に仕上がっている。そういった丸戸史明のライターとしての信念は、詩羽に投影されている。「一行たりとも無駄な文を書いてはならない。」確かにそれはこの作品において実行されているのだろう。(これを書きながら、僕がこのライターを友達にオススメされたときのことを思い出していた。それは、「最小の文章量で最大の情報量」という僕のリクエストに対する返答だったのである...。)
良点3:ヒロインが可愛い
もう一つ、これは主人公の意見「ギャルゲーの条件はヒロインが可愛いということ」に反映されているのだろうが、本作はそれを忠実に実行できているように感じられる。とにかくヒロインが可愛い。
本作品で特筆すべきなのは、ヒロインの魅力が、仕事と恋愛の両面、すなわち公私の両面において描かれるということである。通常の恋愛漫画と違い、ヒロインは単純に主人公に可愛くアピールするだけではなく、自分の仕事に信念を持っており、しばしば主人公を仕事において叱り、成長させてくれるのである。もうこの作品、主人公が育てられていると言って過言ではないのでは...。だから、ダメ人間な視聴者ほど、ヒロインが魅力的に映るのではないだろうか。その例は少なくともここに一人存在している。(特に、えりりは可愛かったなぁ...胸の小さいキャラとかあまり好きじゃないのにね...。)
まあ、それだけでなくとも、丸戸作品は基本視聴者を甘やかす感じがある。例えば、えりりが、主人公が頼んでも描けない絵を、高坂朱音に罵倒されただけで描けるなんて、これ実質的にはNTRみたいなもんだろ...。けど、その高坂朱音が女性なのは、丸戸の良心の現れなのかなって思ったりした。
良点4:作画や演出も丁寧
作画に関しては、デフォルメとリアルが場面の雰囲気に応じて、コロコロ入れ替わってよかったと思う。輪郭線も含めてパステルカラーで塗って、おしゃれでポップな絵は、本作に特徴的だし、個人的には見飽きなくて好きだ。それから個人的に、えりりのデフォルメ八重歯表現は、すごく可愛いと思う。
OPはともかく、EDは元気が良すぎてあまり作品の雰囲気に合っていないと感じた。しかし、最終話のED曲はよかったのではないかと思う。(最初から一期同様に沢井美空を起用してろや。)それから、同じく最終話のdouble rainbow dreamは演出と合わせてもよかったと思う。曲が2番でインストになることで恵との会話がしっとり際立ち、サビでまた声付きになるのが。
難点1:作品中の作品があまり面白く思えない
製作舞台裏系の作品には、非常にありがちな問題なのだとは思うが、作品中のすごい作品があまり面白そうに見えない、というのはどうしても回避できていないように感じた。特に、高坂朱音のプロットがどうすごいのかとか、どれくらいすごい人物なのかとか、売り上げの数字とか言われてもわからない。えりりの渾身の絵も、ギリギリ綺麗かもなって伝わったくらい。詩羽の小説に関しては、(メトロノームなど)ストーリーに詳しく触れない分だけ、他作品に比べてボロが出てないように感じた。(バクマンとか漫画のストーリーに言及していたから、もう最悪でした。)だから、原稿用紙が舞う演出などには、少々距離が感じられた。やはり、舞台裏系で王道を描くのは難しい。
総評:
物語は、原作者によるまとまりのよい脚本、同人ゲームの製作という、原作者の知識が生かされるに相応しい題材に、少年漫画的王道展開と、ラブコメの織り交ぜ。よくできており、飽きずに見られたので☆4.5である。
声優は、特筆すべきことはないので☆3.0である。
キャラは、ヒロインが公私の両面で魅力的に映ることから、☆4.0である。
作画は、本作独特なおしゃれでポップな画風から、作品製作における距離を感じる過剰演出を差し引きして☆3.5である。
音楽は、最終話の演出が特筆されるが、全体的に不可はあまりなく☆4.0である。