どらむろ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
新房監督の幻想的なラブロマンス怪奇譚。分かり難いのではなく、「奥ゆかしい」雰囲気アニメかも。
新房昭之監督によるOVA、尺は30数分×全3話、劇場版1本くらい。
監督自身が「魔法少女まどか☆マギカ」の原点だと言う演出や作風から、幻想的なゴシックホラー要素の強いラブロマンスが描かれる。
独特過ぎる過剰演出や説明不足なストーリーで賛否割れる感じ、内容自体は単純なお話なので、評価は「雰囲気を気に入るか否か」に尽きそうです。
怪奇ホラー故、流血表現多い点にご注意。
手放しで絶賛するには難の多い作品なのですが、私は雰囲気が気に入ってます。
魅惑的で美しいアニメ、時折観返したくなる(最近はGYAO!で視聴)
あと、井上麻里奈さんのデビュー作でもあり。
{netabare}『物語』
美術学生の主人公・倉橋永莉(くらはし・えいり)が骨董店でバイト中に、グラスに宿る幽霊?な金髪ロリ美少女・コゼットにとり憑かれ、もとい惹かれ、幻想的な交流をしていく…
ゴシックホラー、闇、死、廃墟、神秘的、異端的、退廃的、色で言えば「黒」といったイメージ(ウィキペディアによる「ゴシック」の説明より)な雰囲気が色濃く、不気味だけど幻想的で美しい雰囲気の中で、ふたりの関係(というよりは永莉がコゼットにハマっていく)が深まっていく。
愛に説明や理屈は要らない。グラスの中のあの娘が気になるんだからしょうがない!
永莉がコゼットに「耽溺」していく、それ自体は理屈では無いのでしょう。
微笑ましいラブコメの波動…よりも、不吉さとヤバさが先に立つホラー感も堪りません。
話自体は難しくはなく、テーマも結構分かり易いです。(と言いつつ、何度か視聴しているのに未だに戸惑いまくっている…)
…本作は、割と分かり易い話を、ひたすら演出で煽っている。
これを過剰演出で無駄に尺使っていると見る人は低評価、よく分からんがスゲー雰囲気だ!とワクワクする人は多分好意的評価に…。
コゼットちゃんは何者!?いったい何が起きてるんだ…?
全般的に説明不足というか不親切な構成と演出で、とりとめの無いやりとりよりも、ゴシックホラーな雰囲気で考えるな感じろ!な感じの作風でした。
何が起きてるかは分からんが…永莉がコゼットに耽溺していくのが肌で感じられる雰囲気が良いです。
新房監督の実験的な手法が濫用気味に使われている、これもまたアニメ。
病んでる悪霊っぽいコゼットちゃんの秘密が少しずつ明かされる。
コゼットの婚約者マルチェロの狂気…は(創作中だと)結構よく見るタイプで分かり易い。(パッと思い付く辺り、無限の住人にそんなタイプいたような)
後半~終盤はゴシックホラー路線が加速、よくわからんが永莉が悪霊もといコゼットちゃんに責め苛まれる演出が圧巻!
ここからラブロマンスとしては、マルチェロととコゼット(悪霊版)の妄執・狂気に対し、永莉が出した答えが見所でした。
永莉はただ漫然と恋していたワケではなかった!?
陳腐な「永遠否定」…とは微妙に違うといいますか、そう見てしまうと説明不足過ぎるのですが、多分さにあらず。
血で自ら絵を描く永莉の想いは多分「永遠の美よりも、今のありのままの君が好き」?
恋に理屈はいらない。別に永遠のロリが良い悪いとか永莉は考えてもいまい。
…といいますか。マルチェロが異常なんです。永莉の方が断然、平凡な恋する男子ですよ(当たり前だけど)。
過剰な新房演出でゴシックホラーの凄味に煙に巻かれてますが、精神世界?の流血で絵を描くのは狂気にも見えますが、何のことは無い、健全で一途な想いの尊さを感じる良シーンと見ました。
ラブコメとしての萌え所のピークは、良い子コゼット(便宜上そう呼称)ちゃんの健気さが判明するシーン…なんて健気な子なんだ!
悪い子コゼットの精神攻撃中に間接的に判明するのでラブコメの波動を感じられないのは、作風故仕方が無いとはいえ、とても奥ゆかしい愛を察せられる。
コゼットが序盤から支離滅裂に見えたのは、最初から良い子と悪い子がいたからなんですな?
…よく分からんけど多分?
総じて?(全然総じてない)
散文的な構成とゴシックホラーで煙に巻いてますが、本質は単純かつ尊い物語でした(多分?)
ラブロマンスとしては「分かり難いのではない、奥ゆかしい」です。演出の奥ゆかしくなさで一見そうは見えないかもだけど。
ラブコメアニメの王道お約束が通じないけれど、最後まで観れば、ちゃんとラブストーリーしていた。
ドラマの完成度は結構高い、推測とはいえ(多分こうなんだろうな?)とちゃんと分かる構成になっていた。
全部の謎は分からんでもよろしい。幻想なのだから。
一見無駄尺に見える友人先輩との会話シーンも、幻想を際立たせる為の俗っぽさなんでしょう。
…ただ、サブキャラとの絡みは中途半端でドラマにあまり活かせてないような?
それと、作風上やむを得ないとはいえ、ベタでも分かり易い交流シーンあれば一段評価上がってたです。
良い子コゼットちゃんの魅力が分かった頃には既に退場していて、ラスト余韻はあれど盛り上がらないのが残念。
まあ、そこに期待する作風ではあるまいし、仕方が無い。
それでも、諸々の良し悪しを度外視しても、魅力的なアニメです。
『作画』
まどマギの原点?な新房演出のゴシックホラーが圧巻。
流血多いけれど、生々しさよりも幻想的な耽美さがある。
コゼットちゃんの美しさと怖さも印象的。
作画と演出だけで(よく分からんがすごいアニメだ)と思わせてくれます。
『声優』
コゼットは井上麻里奈さんのデビュー役です。
技術的にはともかく(良し悪しには疎いけれど)はまり役だったのは確かでした。
可憐さと病んでる怖さはヒシヒシと伝わってくる好演。
永莉の斎賀みつきさんの青年役は流石、耽溺していく凄味を感じる。
他にも能登麻美子さんなど何気に豪華でした。
『音楽』
梶浦由記さんが担当の楽曲面も非常に魅力的、ゴシックホラーをこれでもか!と煽っていた。
井上麻里奈さん歌う主題歌も良いです。
『キャラ』
倉橋永莉は一見イカれてますが、普通の美術青年でしょう。
恋に恋する純粋さが極まって狂気に見えますが、純情男子。
悪い子コゼットちゃんを見破ったシーンはかっこいいです。
コゼットちゃんは謎多き悲劇の悪霊ロリ美少女。
可愛さよりも幻想的な美しさと、病んでる怖さが同居している…支離滅裂?
と思いきや。
実は悪い子コゼットちゃんもいたのだ!?
いや、よく分からんのですが…
マルチェロに殺された悲劇の少女の亡霊と、マルチェロの狂気で狂った絵の中の悪霊、どっちも亡霊に違いない?
永莉の為を想い、ひっそりと消えようとした奥ゆかしく尊い愛、良い子コゼットちゃん愛おしい!
マルチェロ…このロリコンめ!いや確かにロリは美しいですが(犯罪)
その他キャラは、どうでも良い感じ。
一応、俗世パートで幻想的ゴシックラブロマンスの引き立て役ですかね?{/netabare}